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被害者を主体者に変える方法

被害者を主体者に変える方法 | Hello, Coaching!
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先日、ある企業の常務のエグゼクティブ・コーチングをしていたときのことです。電話をかけてきた常務の声が、明らかに苛立っているのがわかりました。

「鈴木さん、もうやってられませんよ」

聞けば、とにかく部長たちに主体性がない。
言われたことしかやらない。
常に待ちの姿勢。
何かあるといちいち自分に決裁を求めにくる。
決めていいと言っているのに決められない。
部下に方向性を示せない。

もうそれこそ立て板に水のごとく、部長がいかにひどいかを常務は一気にまくし立てました。

この常務とは昨日、今日の関係でもないので、思わず、「常務の器に合わせた部長がそろっただけじゃないですか」とカウンターパンチを繰り出しそうになりました。
が、最近セッションでカウンターパンチばかり浴びせているなとふと思い、その手は引っ込め、じっくり話を聞くことにしました。

常務はほぼ30分、それこそノンストップで部長の「悪行の限り」を話し続けました。

セッションの終了時間が迫ります。「着地点」が見えず、こちらはちょっと焦りを感じ始めます。が、ちょうどそのあたりから、だんだんと常務の感情のボルテージが下がりだしました。35分ぐらいが経過したでしょうか。だいぶ「抜けた」様子の常務に問いかけてみました。

「どうですか? 話してみて」

「いやあ、すっきりした。でも、あれだね、いつまでもこんなこと言っていても仕方がないね。俺がなんとかしないとだめか。 まっ、ああいう部長にしたのは俺だからな」

若干「自責」にスタンスが変わっています。そこですかさず聞きました。

「もちろん、部長にも責任はあると思いますけど、『部長に責任がある』という見方をこの後もずっと常務が持ち続けていくとどうなりますかね?」
「そりゃまずいよな。こっちの責任果たしてない」
「ですよね。であれば、責任感の強い常務はここでどうします?」

「そうきたか(笑)。
まずね、一人ひとりと飲んでみるよ。なんかあるんだろう、決められない理由が。俺が怖いとか(笑)。 ちゃんと向こうの話も聞いてみるよ」

どうも人はたやすく「被害者」になってしまうようです。
周りの「環境」のせいで自分はこんなに苦労している、こんな目に遭っている。環境に働きかけてなんとかしてやるという「主体者」としてのスタンスをあっという間に失ってしまうときがあります。
日々ものすごく仕事に主体的に関わっているように見える役員でさえ、「あいつら本当に主体性がない」と部下についてコメントした瞬間に、その人たちを育てるということに関しては被害者というスタンスに回ったことになるわけです。

だから、どうすれば自分が被害者から主体者に変われるか、どうすれば被害者を主体者にすることができるか。ある程度の方向性を知っておきたいところです。

被害者は被害者の物語の中にいる

まず、被害者は被害者の物語の中にいます。

自分はこれだけ言っているのに、こう動いてくれない、こうしてくれない。この物語が周りの誰かによってしっかりと聞かれないと、 当人はどんどんその物語に固執していくことという傾向があります。

いますよね、そういう人、周りに。 そうするともう被害者の物語から抜け出せなくなってしまう。

ところがこの被害者の物語を「ちゃんと」誰かから聞いてもらうという経験をすると、だんだんその物語を「離れて」見ることができるようになります。

思いっきり物語の中にいて、その妥当性や有効性について判断できなかった人が、これでいいんだろうかと検証をかけるようになります。つまり、客観視できるわけです。

そこまで来たら、被害者の物語をずっと持ち続けると一体どうなってしまうのか、未来へのリスクについて語っていただく。そこでリスクがはっきりすれば、主体者として状況を語るというスタンスに変わることができるようになります。つまり自分はどのような責任を果たしていくのかを語り始めるわけです。

被害者に陥ってしまった人を主体者に引き戻す方法

改めて、被害者に陥ってしまった人を主体者に引き戻すやり方を記すと、

  • 被害者としての物語を徹底的に聞く
  • 被害者としての物語を持ち続けることでどんなリスクが未来にあるかを明らかにする
  • 主体者としての物語を描く

冒頭の常務は、その後日々部長と飲みに出かけています。前回のセッションでおっしゃっていました。

「毎日一緒に仕事していても知らないことってたくさんあるもんだよね。部長に対して何をサポートすべきなのか、ほんのちょっとわかってきた気がするよ」

ちょっと被害者になってしまっている人が周りにいたら、ぜひ1~3、試してみてください。

※ 編集部注: 本原稿の内容につきましては、クライアントの方の了承を得て、ご紹介させていただきました。

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