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表彰制度のリスクと留意点

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多くの企業が、社員のモチベーションを高めるために、年間、半期、月間というように、ある期間における優秀社員を選定し、褒賞する制度や仕組みを導入しています。

このような表彰制度の開催は、変革を加速する上でも有効な手法です。実際に会社としてどのような結果を望んでいるのか、どのような社員を望んでいるのか、社員が一目で理解できるからです。

しかし、表彰制度は、運用次第では「1人の成功者と99人の敗北者を作り出す」ことになる恐れがあります。

また、よく観察していないと間違った行動を承認してしまいかねません。この落とし穴にはまらないためには、いくつかのポイントを押さえなければなりません。

まずひとつは、職場での「承認」が十分に行われていること。

もし仮に、職場で、「承認」が十分に行われていない場合、(例:「挨拶がない」「気遣いがない」「関わりがない」「やったことが褒められるというよりも、やって当たり前の雰囲気」など)社員は限りある承認を獲得するために互いに奪い合うように競争を始めます。勝ち取るためには不正を犯すことさえ起きてきます。さらに、表彰の商品が高額になると、それらを加速させる危険性が出ます。

競争は自社内ではなく、同業他社との競争に向かうべきであり、「承認」はそれを受ける価値のある人すべてに、十分与えられるように留意しなくてはなりません。

ふたつ目としては、プロセスをよく観察をし、「望ましい行動」をともなう「成果」のときに承認をすること。

飲料販売会社でこのようなことがありました。

この会社では、月間MVPを設けています。月の売り上げ数字ランキングで表彰されていました。しかし、実は現場では、ストアに押し込み営業をしていたり、不正のカウントをして売り上げ計上をしていたり、と現場は荒れに荒れていました。にもかかわらず、本部はカウントされた数字だけをみて、表彰をしてしまっていたのです。

実際の現場スタッフは、こうした「望ましくない行動」で「成果」を上げてしまっているのをよく知っているものです。そうした中で、本部から表彰されると「望ましくない行動が承認」される可能性もあるのです。

承認をする場合は、「結果承認」だけでなく、結果を生み出す行動をよく観察し「行為承認」もセットで承認する必要があります。


表彰制度を設計する際には、次のポイントに留意しましょう。

□ 日頃の職場内でのコミュニケーションの中で、「承認」の量が充足しているか?
□ 賞は、本当に最高の業績(もしくはその賞を与えるべき成果)を上げた社員に与えられているか? 持ち回り的な表彰になっていないか?
□ 受賞者は、望ましい行動により業績を上げたか?
 ・不正は行われていないか?
 ・何もしないで、たまたま業績が上がったのではないか?
 ・どんな行動をすれば業績が上げられるかが明確になっているか?
□ 受賞者には、受賞後、さらなる業績向上が見られたか?
□ 与えられた賞品や表彰形式は、受賞者が本当に望んでいたものか?

問いに対する答えがひとつでも「いいえ」の場合、直ちに表彰制度をやめるか、修正を施す必要があります。

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