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リ・クエスト

今年のはじめごろ、
社内でビッグバンドをやろうという話が持ち上がりました。
私も誘われて、テナーサックスを吹くことになりました。
とはいっても、これまでの人生で、
まともに楽器に触ったことはありません。
サックスの先生について、週に1~2回の練習を開始。
最初は音を出すのも一苦労です。
少しずつ曲らしきものが吹けるようになり、
本番では、ソロを吹くことが決定。
そして、ついに先週、大勢の人の前で
人生初めてのビッグバンドの演奏をしたのです。
初めて楽器を手にしてから演奏本番まで、
人生50年目にして、こんなにエキサイティングで
楽しい経験をするとは思いませんでした。
もし、ビッグバンドを一緒にやろう! と誘われなかったら、
もし、ソロの演奏に抜擢されなかったら、
このすばらしい体験をすることはありませんでした。
「桜井君、一緒に働こうよ。君にうちの会社に来て欲しいんだ」
20数年前、当時、中学校の教師をしていた私にとって、
それは、人生を変える強烈なリクエストでした。
思い返せば、私は、リクエストに応えることで、
人生の幅を広げてきたように思います。
「コーチング研修の講師をやって欲しい」
「法人に対する営業をして欲しい」
「マネージャーをやって欲しい」
リクエストされるということは、
自分にその可能性があるということ。
それは、単なる上司からの指示や命令というより、
自分に対する期待を感じる。
もちろん自分の人生は自分で決めるのですが、
私がコーチングを始めたり、
今までまったくやったことのなかった法人営業や
マネジメントを行うようになっていった背景には、
リクエストによる後押しがあったように思います。
リクエスト(request)の語源は、
クエスチョンの語源と同じ、「クエスト」です。
「クエスト」の意味は、求める、真実を探求する。
「リ(re-)」の意味は、再び、元に戻る。
つまり、リクエストには、
「相手の中にある真実を何回も求め続ける」という意味があるのです。
リクエストすることの目的は、
単に自分の都合でやってほしいことを相手にやらせることではありません。
リクエストは、相手の成長に向けて、相手の可能性を開くための、
強力なアプローチなのです。
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