Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
ちょっとお時間いただけますか?

「ちょっとお時間いただけますか?」
スタッフ数名のチームを任され、仕事をし始めた頃、
このセリフを聞きました。
今思い出しても冷や水を浴びせられた気分になります。
この言葉の中には、
「今まで我慢していましたが、言う決心がつきましたので、
伝えさせてください」
というニュアンスが込められており、
結局のところ、延々と話すことになりました。
そして、結論として、
「もう続けることは難しい」というとても残念なことになりました。
もう少し早く気づいていれば、
もう少し声をかけていれば、
もう少し注意を払っていれば、
もう少し明確に指示していれば、
と、後になって思うことは無限にあります。
でも、よく振り返ってみれば、チャンスはたくさんあったのに、
気づかないふりをしていた、というところに突き当たります。
コーチングは、1対1でじっくりと膝を突き合わせてするものでしょうか。
この答えは、イエスでもあり、ノーでもあります。
コーチングのセッションは、1対1で行うことが多いですが、
マネジメントの現場におけるコーチングは、ちょっとした会話、
それも一瞬の会話が機能します。
「その後、どう?」
「まず何から始める?」
「それで、どうするの?」
ときにはすれ違いざまに、ときには机にちょっと寄って。
あるいはミーティングの場で、このような会話が自然に行われ、
それによって、相手のパフォーマンスが上がることや
達成のスピードが上がること。
それが、職場におけるコーチング型マネージャーの目指す姿です。
今トレーニングを積んでいるマネージャーたちは、それでも、
「いきなり声かけることはできない」
「話す人は限られている」
「何から話したらいいかわからない」
と言います。
それは、何を話したらいいのかわからないのではなく、
話すための情報が足りないということなのです。
つまり、その人に関心を向けていないということです。
□ この人は、物事を言葉で理解するタイプか、体感的に知るタイプか?
□ 朝の通勤電車の中では、どんな本を読んでいるのか?
□ 仕事に取り組むときは、人と関わるほうが得意か、自分で考える方が得意か?
□ 休日は何をやっているのか?
□ だんごとシュークリームを目の前に並べたらどちらを選ぶか?
相手に関心を持つと、きりがありません。
コーチのコア・コンピテンシーには、
「クライアントと親密な信頼関係を築いている」という項目があります。
相手に関心を持って関わることは、
信頼関係を築くための前提となります。
このことにフォーカスされれば、
おのずと相手の日常の態度に意識は向けられますし、
会話もそこから生まれます。
「ちょっとお時間いただけますか?」
と言われる前に、十分に共有している時間がある。
それは、何もまとまった時間ということである必要はなく、
短いショットの連続で十分なのです。
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。