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リーダーを育てる
2008年11月12日
今リーダー不足が問題になりつつあります。リーダーそのものの物理的な人数が減少しているのです。
同時に、そのリーダーを育成する方法はこれまでのリーダーシップ・コンピテンシーの枠を超えることができていません。
たとえば、
◆2006年以降、ベビーブーマーの定年退職は、7秒に1人のペースで起こっている。そしてこれは、今後15年は続くだろう。(Engstrom, 2005)
IBM 2005 Global Human Capital Studyによれば、
◆今後5年間(2005~2010年)に、アメリカのエグゼクティブやマネジメント層の19%が定年退職する。(Rogers, 2005, p.3)
CCL(Center for Creative Leadership)が、世界中のエグゼクティブに対して行った調査によれば、
◆およそ90%が「リーダーシップ」を、会社のグローバル成長のために最も重要なファクターだと答えた。
◆50%の企業が、自分の会社にはリーダーとして使える人材が不足している、と答えた。(Gandossy and Kao, 2004)
CCLによれば、リーダー層は、年々層が薄くなっており、そのため、この層のリクルート戦争はますます熾烈になっているといいます。にもかかわらず、企業はリーダーの創出を望みながらも、本来の育成システムに時間をかけなくなっている、というのです。
私たちは、経験や時間を積めば、やがて新しいリーダーが出てくると漠然と考えている傾向があります。確かにリーダーの役割、役職につくことはありますが、だからといってリーダーシップを発揮できるかどうかは別の問題です。
また、リーダーはリーダーによって育成されるという思い込みがあります。しかし、組織のリーダーシップに秀でたエグゼクティブでも、その後に続くリーダーを育てられないことはあり得ます。
このパラドックスを理解するために、100名のエグゼクティブと、900名の周囲の関係者(オブザーバー)に対して調査が実施され、以下のようなデータが取得されました。
◆シニア・リーダーたちは、社員に対して、あまり個人的に近くなろうとはしない、という特徴がある。その結果、孤立し、次世代リーダーにふさわしい人間を直接見つけることを妨げている。
◆一般的に、エグゼクティブは、自分のキャリア昇進しか興味がなく、他の社員が上へ上がって行くのを手助けすることには興味がない、という偏見がある。
◆タレントマネジメントの方法が確立されていない職場では、エグゼクティブは、自分に似た人間を昇進させる傾向がある。もっと悪いケースでは、政治的な理由や、えこひいきで昇進が決まっていく。
リーダーシップの開発は「公共の利益」につながります。しかし、漠然とやがて現れるかも知れないリーダーの登場を待っているのでは、この不確実な状況を乗り切ることはできないでしょう。
また、従来のリーダーシップ・コンピテンシーに、次期リーダーをマッチさせるというやり方もあまり機能しないでしょう。そもそも、無理矢理コンピテンシーに次期リーダーをマッチさせたからといって成果が約束されるわけではありません。
リーダーシップの開発は、行動と行動に対するフィードバックを通して学び続けるものであり、同時に個々の能力や強みに合わせて、開発されるものなのです。
リーダー、リーダシップの開発の基本は、リーダー、リーダーシップとは何かについて、その候補者に常に考えさせること、また、自分が場に対してどのような影響を与え、また影響を受けているかについて、フィードバックを受け、自律的に行動を修正する能力を身につけることです。
当然、リーダーの育成は「テーラーメイド」である必要があります。
【参考資料】
"The paradox of gifted leadership :developing the generation of leaders "
Pete Hammett
VOL. 40 NO. 1 2008, pp. 3-9
Copyright Emerald Group Publishing Limited
ISSN 0019-7858
INDUSTRIAL AND COMMERCIAL TRAINING
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