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コーチングの六角形
コピーしました コピーに失敗しました私は最近、マネージャーの仕事の一環として、社内のスタッフに対して業績向上のためのコーチをしています。
対象スタッフは、合計で5人。入社して間もない若手、年齢が私とそれほど変わらないベテラン、中堅どころのキーパーソン、勢いで突進するムードメーカーなど、職種も経験もスキルもタイプもそれぞれ異なります。
全員が社内業務におけるゴールを持っていますから、コーチの私の役割は、そのゴールを達成させることにあります。ただ、対象スタッフの仕事のラインは、私と直接関係ないため、いわゆる「職務上の上司・部下」の関係にないところがユニークなところです。
コーチングをスタートするステップは、30分のセッションの時間をとって、話を聞くことから始まります。毎日社内で会っていても、相手のことを知っているようで知らないことが多いものです。ですから、ゴールを達成させるために、何もないキャンバスに一緒に絵を描くような作業から始まります。
「最近はどんな調子?」
「今、どういうことが課題となっているの?」
「お客様のところに行くときは、誰と行くの? ひとり?」
「スキルアップが必要な領域は?」
「今この瞬間、どんなことを思っているの?」
いろいろな質問を投げかけ、相手の話に耳を傾けながら、その人について次のことを同時に把握しています。
1.コミュニケーション能力は?
人との関わり方は柔軟なほうか、硬直的なほうか。
2.人間関係は?
協力体制を築くほうか、ひとりで取り組むほうか。
3.気分転換は?
仕事以外のときは遊ぶほうか、静かに過ごすほうか。
4.マネジメント能力は?
時間や目標は管理するほうか、成り行きまかせか。
5.健康管理は?
身体の調子はどうか、気になっているところはあるか。
6.仕事のスキルは?
困っていることはあるか、やりたくてまだできないことはないか。
大事なのは、質問攻めにして相手に答えさせるのではなく、気軽な会話を交わしながら、これらのことについてアンテナを立てることです。 特に、相手について知る最初の段階では、このプロセスはとても楽しく、両者にとって有効なインプット、アウトプットの機会となります。
これを私は「コーチングの六角形」と呼んでいます。
以上の6つの領域を書いた六角形の紙を目の前に置きながら話をすると、相手のことについて、いろいろな角度から自由に知ることができ、その後のコーチングのフォローアップの貴重な手がかりとなります。
先日、このコーチングの時間を予定をはるかに超えて行ってしまい、他のスタッフとのミーティングの約束を忘れてしまいました。
コーチングを行っていた会議室はガラス張りで、中で誰と誰が話しているかがよく見えます。そのスタッフにいたずらっぽく聞かれてしまいました。
「平野さん、私との約束を反故にして、一体どんなことを話していたんですか?」
面談やインタビューというと、お互いに気が重くなったり緊張したりするものですが、この六角形をもつと、目的を失わずに、 同時に自由に話を展開させることができます。
今後も「コーチングの六角形」をもちながら、5人のフォローアップをしていこうと思います。
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