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リーダーシップを目覚めさせる

リーダーシップを目覚めさせる | Hello, Coaching!
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ある外資系IT企業の社長からコーチングを依頼されました。対象となるのは、シニアセールスマネージャーのIさん。コーチングのゴールは、Iさんが今の会社でリーダーシップを発揮すること。

Iさんは、3ヶ月前にヘッドハンティングにより、別の外資系IT企業から引き抜かれたバリバリのセールスマネージャー。ところが、最近の様子を社長に聞いてみると、その力を十分には発揮できていないというのです。

Iさんが前職として勤めていた企業は、米国資本で従業員数は約3千人。その社風は、強力なトップマネジメント。実績、数字がすべてで、能力の無いもの、やる気の無いものは去れという、完全な業績主義の会社だったそうです。Iさんはその厳しい競争の中で常にトップに立ち、会社を牽引してきた実力者でした。

私は、リーダーシップに関するアセスメントの中から、Iさんにいくつかの質問をしました。

1.秀でた実績や能力、知識を持っている。
「Iさんはこの質問について自己採点で100点満点中何点だと思いますか?」
「桜井さん、自分で100点とは言いにくいのですが、前職での営業成績はほとんどトップでした。この業界では人脈もあるし、セールスに関する実績、実力はあると思います」

2.正直、公平である。
「この項目への自己評価はどうですか?」
「営業は数字がすべてですから、これも100点でいいと思います」

3.アカウンタビリティ(責任感)がある。
「これについてはどうでしょう?」
「ときどき、部下に責任を負わせるような上司もいるようですが、そんなのは言語道断だと思います。最終的には、いつも私が全責任をとる覚悟でいます」

4.部下に自分のビジョンや、考え、期待等を伝えている。
「これはどうですか?」
「たぶんやれていると思います。なるべく時間をとって話すように心がけています」

5.一人ひとりの部下のことを理解し、それぞれの能力を開発している。
「これについてはどうですか?」

Iさんは、5の質問を聞いて、はたと動きが止まりました。

「桜井さん、これは自信がないですね。私は、競争は自分の力で勝つもの、実力は自分で発揮するもの、ついて来られない部下については自分の責任、できる人間だけを集めて強いチームをつくる、という考え方でやってきましたから、意識したことすらないかもしれない。正直に言うと、ほとんど0点かもしれません」

私は尋ねました。
「Iさんの『リーダーシップ』に対するイメージはどのようなものですか?」
「自分が先頭に立って、ぐいぐい牽引していくようなイメージかな。アメリカンヒーローのような感じ」
「なるほど。そのイメージのもとで前職ではうまく行っていたわけですよね? 今とどこが違うのですか?」
「会社の雰囲気かな。そういう意味で前と比べれば、今のこの会社は甘いと思うんです。社長はそれを引き締めるために、私を呼んだんだと思うんです」
「その意図を確かめたことはありますか?」
「営業力をさらに強化したい、強い営業チームを作ってほしい、と一任されてはいますけど、その部分について確認したことはないですね」

その場で社長を呼んで、私を含めて3人で話すことになりました。

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以下は、社長の話の要約です。

会社は英国資本。従業員数は150人。会社にとって一番大切なことは業績を上げること。

同じように一人ひとりの社員も大切。社員は家族と同じだと考えている。だから一度入社したからには、たとえできの悪い社員だったとしても、最大限の教育をする。できないなら会社にいなくていいとは考えない。できればこの会社で人生をまっとうしてもらいたい。今日も会社に行きたいと思うような、アットホームな雰囲気を大切にしたいと思っている。

Iさんのこの業界での実績と実力は十分評価している。

Iさんには、今いる営業スタッフ一人ひとりが自立自走していけるように育ててほしい。イメージは、スタッフ全員が自分の強みを発揮して、それぞれがリーダーシップを発揮している、強い営業チーム。

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社長が部屋を出た後、Iさんはおもむろに言いました。

「私はこれまで、リーダーシップを発揮する人間は組織にひとりだけいればいいと思っていました。それが当たり前だと思っていた。ですから、当然この会社では私がリーダーシップを発揮して、営業チームを引っ張っていくつもりでいたわけです。いま話をしてみて、自分がこれまで持っていたリーダーシップのイメージと、社長が求めているそれとはずいぶん違っていることが初めてわかりました。桜井さん、部下のリーダーシップを引き出すことができるように、私にコーチングを教えてください」

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「リーダーシップ」という言葉は、さまざまに定義することができます。

そのひとつは、「リーダーシップを発揮することとは、相手がもともと持っているリーダーシップを目覚めさせること」だと言えるでしょう。

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