Coach's VIEW

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命綱

先日、あるメーカーの営業部長、十数人が集まった合宿に
オブザーバーとして参加しました。

この合宿は、「強い営業をつくる」ために、
あるべき像や現状の課題を語り合い、共有化し、
そしてどのようにしていくかアイディアを出し合う、
ブレーンストーミングの場でした。

合宿の中で一番盛り上がったのは、
「あなたの大事にしてきた営業としての心構え」
という部分です。

「受注に対するこだわりかな。
 今の営業はずいぶんさっぱりしちゃって淡白だけど」

「営業としての自負心だろ、やっぱり。
 昔は、顧客については、隅々のことまで知っていたよ」

「営業は、会社の代表、といった心構えだよな」

・・・など。

やはり、自分の大事にしているスタンスや姿勢を話すときは、
一人ひとりが熱く語っています。そして、今の営業とのギャップに
少々苛立ちを感じているようでもありました。

「昔はよかったんだけど・・・」と、郷愁にも近い雰囲気で
その場の温度が少し下がり始めたときに、
私は部長さんたちに質問をしました。

「みなさんは、今、お話していた大事にしている『心構えや考え』を、
 どのように手にしたのですか?」

すると、こんなエピソードが出てきました。

「お客様との接待ゴルフの後、
 風呂に入っていたときの話なんだけど・・・

 お客様が先に風呂から出たのにもかかわらず、一番若手だった私は
 何も知らずにいい気になって、頭を洗っていたんです。
 すると当時の私の上司がいきなり私の頭をパコーンっと殴るんです。

 はじめは何が起こったのかわからなかったのですが、
 上司は物凄い剣幕で『お客様よりもあとに出る奴がおるかぁー!』と
 怒鳴ったんです。

 今でもそのことは覚えていますね」

「そうそう、昔は本気でガンガンに怒鳴られていたからなぁ。
 人前でもよく怒られたなぁ。

 ・・・でも、フォローは必ずあった。
 飲みによく連れにいってくれたね。
 こっちはもう勘弁してくれ、とはじめは思っていても、
 無理矢理連れて行かれてみると、上司の気持ちが伝わってくる。
 自分のことを思って叱ってくれたんだ、ってね。

 なんか、見放されていない。命綱がある感じだよ。
 もしあれがなかったら、辞めちゃったかも。
 命綱切れて、あれぇー、って感じで」

「そう考えると、最近、そういう深い関わりがないなぁ。
 こっちも恐る恐る部下と関わっている感じ。
 命綱のない状態で、ガツンとやれないし、
 かといって、飲みに誘っても嫌がられるしなぁ・・・」

この議論は、このまま深夜にまで及びました。


最近、こうした「人と人との関わりの希薄化」の話をよく耳にします。
この部長たちの話を聞いていると、かつての上司との間には
普段からの関わりが、今よりももっと濃厚だったようです。

例えば、

「上司に四六時中ついて回ることにより、
 箸の上げ下げまでも徹底的に仕込まれた」

「将来の夢について、お互いが話し合って、知っている」

「会社の行事はもちろん、家族ぐるみの付き合いがある」

「修羅場に遭遇したときなど、ここぞという時には守ってくれた」

・・・など。

部下にとって、こうした「上司から本当の意味で大事にされている」
といった体験一つひとつが、上司と部下の間の「命綱」となります。

そして、この体験が数多く積み重なることにより、
それは次第に太く、そしていっぱい繋がっていきます。

だからこそ、たとえ上司に思いっきり叱られたり、
理不尽な仕打ちをされたとしても、救われたのでしょう。
一本切れても、まだ残っているんですから。

しかし、関わりが薄くなってくると、上司は恐る恐る
気を遣いながら関わることしかできないことになります。
「命綱」が今にも切れそうなときは、なおさらです。


今、間違いなく「飲みニケーション」や「会社のイベント」が
少なくなっています。上記の問題を解決しようと、
昨年あたりに「社員旅行」「社員寮」「会社運動会」などを
復活させる動きがみられ、各企業に伝播する兆しもありました。

しかし、ここにきて、この景気の影響をもろにうけて、
また、コスト削減の項目にされてしまい、後回しにされそうです。

こういうときだからこそ、この命綱を太く、
増やしていくことが重要なのではないでしょうか?
また、こういう時期に築いた信頼関係は、
一生ものの大切な絆になるのだと思います。


あなたの部下との命綱は、しっかりとした太さと本数がありますか?

あなたの部下は、周りの同僚らとの命綱をもっていますか?

あなたと部下との命綱を太くするために、あなたができることは何でしょう?

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