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人に関心をもつ
2009年04月15日
先日、大手メーカーの営業マンに対してコーチングのトレーニングをしているときに、ある受講者の方から、こんな質問を受けました。
「もっと、お客様のキーマンと繋がりたいのですが、どうしたらよいでしょうか?」
おそらく40代前半でしょうか。受講者のAさんは、とても自然な口調で、そして手のあげ方、姿勢のよさから、いかにも誠実そうな方でした。
Aさんに、もう少しお話を聞いてみました。
「実は、先方とは、もう長いお付き合いが代々あります。私の上司が、先方のキーマンのB部長と繋がっていて、上司がいるときは、B部長はいろいろな裏情報や内情を話してくれます。ですが、私だけのときは、そこまで話してくれないのです......」
私は言いました。
「なるほど......で、どうしたいんです?」
少しだけ強く、彼は言いました。
「もっと信頼してほしい。もっと、いろんなことを打ち明けてほしいんです」
「そうですか。もっと、信頼して欲しい、打ち明けて欲しいのですね。仮に、Aさんが、そのB部長だったとしますね。どうすれば営業マンを信頼できます? どうすれば、打ち明けちゃいますか?」
彼は答えました。
「......そうですねぇ。気さくな感じ。あと、裏表がない。うーんと、そうですね。やっぱり、自分のことばっかりじゃなくて、相手のことを大事にしてくれる人を信頼すると思います、B部長は」
「なるほど、重要ですよね。でも、Aさんは、見た感じ、気さくさと、裏表のなさはもう既に手に入れている感じがしますが、いかがですか?」
Aさんは、私の言葉に少し照れた様子で笑みを浮かべました。しかし、すぐにその笑みは消え、真面目な顔でこう言いました。
「相手を大事にする、というのは少し弱いかもしれません。そもそも、関心を持ててないのかも......」
私は、少し間を置いて、こう続けました。
「そうですか。では、Aさん、いくつか質問させてくださいね。連続で質問をしていきますが、答えなくても結構です。ただ、頭の中で答えていただければ」
そう伝えて5分くらい、ありとあらゆる角度で質問をし続けました。
B部長の家族構成はご存知ですか?
お子さんは何歳?
休日はどんな生活?
何にこだわりがあると思う?
食べものは何が好きだと思う?
趣味は?
どんな車に乗っている?
心配事は?
彼の上司との気がかりは?
彼の部下との関係は?
B部長が夜、自宅に帰って風呂に入って、何を思って就寝すると思う?
「......この質問を受けてみて、何か感じましたか?」
最後の質問のときには、既にAさんの顔には少し明るさが戻っていました。
「自分がしたいことばかり考えていたように思います。部長のことは何も考えていない。何も知らない自分がいたんです。今はものすごくB部長に興味、関心がわいてきました。そういえば、私の上司は、今の質問、おそらくすべて答えられると思います」
自分のことを認めてほしいときには、まず相手を認める必要があります。相手がそこにいる、ということを認めなければいけません。自分のことばかりに関心をもって、人に関心がなくなると、目の前にいる大事な人を失ってしまいます。
私たちは、
「人に関心を持ったほうがいい」
「部下をもっと観察をしたほうがいい」
ということは頭では分かっています。
しかし、それを実際にやっているか、というと難しいようです。それには、どこから手をつけたらいいのかが分からない、やったとしても忘れてしまう、などの理由があるようです。
私もその一員でしたが、ここ数年は、この方法で脱出しはじめています。これは、お客様にも、そして部下にも、展開が可能です。試してみてはいかがでしょうか。
【ステップ(1) プロファイル(データベース※の)項目をリストアップする】
大事な人(部下や顧客など)との関係を向上させていくために、あなたが知っておくべき内容をリストアップします。
例)部下の得意なこと/強み、夢、ビジョン、キャリアプラン、
これまでの仕事の実績、自分が楽しく仕事ができる条件、
今の気がかり、健康の状態、会社や上司、同僚へのリクエスト、
家族のこと、好きなことや趣味、休みの日は何をしているか
【ステップ(2) 大事な人(部下や顧客など)を日々観察し、この項目を埋めていく】
日常の部下との会話や観察などを通じて、一つひとつ項目を埋めていきます。
はじめは「いかに大事な人(部下や顧客)のことを知らなかったか」に直面し、めまいを起こすかもしれません。しかし、進めていくうちに、埋まらない項目を埋めようと、会話に戦略が出てくるのに気づくはずです。
※ データベースについては、 CTP(コーチ・トレーニングプログラム:現在のコーチ・エィ アカデミア)「信頼関係をともに築く」の中でも扱っています。
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