Coach's VIEW

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知識と行動の間の溝を埋める

コーチをしていると、いつも考えるのが、
どうすれば相手が、こうすればいいとわかっている「知識」を、
実際の「行動」に移すことができるのかということです。

「知識と行動の間の溝を埋める」
それがコーチが取り組むべき大きな課題です。

先日も、クライアントの、ある企業の特許担当の執行役員の方が、
「部下をほめられるようになりたい」と言いました。

特許申請の仕事はすぐに結果が出るような仕事ではない。
ときには何年もかかって結果が出るようなことがある。
結果が「遠い」ので、部下は自分がやっていることに「はり」が持てなくなる。
だから上司である自分が部下をほめて励ますことで、
山登りし続けるモチベーションを与えたいのだと。

が、ほめることの大切さは重々承知しているけれど、
実際にはなかなかほめ言葉を伝えることができない。
知識が行動に転化しない。
どうしたらいいだろうか?というお話でした。

さて、知識が行動に転化しない理由はいろいろあると思うのですが、
極めつけの理由は、おそらくそれをすることを、「忘れてしまう」ことでしょう。

人は毎瞬毎瞬、意識して行動を起こしているように思われるかもしれませんが、
実際には人の行動の大半は無意識に起こります。
つまり、「つい」やってしまう。

特に「コミュニケーション行動」は無意識になりやすい。
いちいち相手の言葉にどう対応しようかなどと意識的に考えていたら
間に合わないですから、条件反射になりやすい。

みなさんも、今日一日、朝起きてから今に至るまでの
自分のコミュニケーションについて振り返ってみてください。
どのくらい、意識的に選択したコミュニケーションを起こしていたでしょうか?
思いのほか少ないことに気づくのではないかと思います。

ですから、どんなに部下をほめることが大事だと思っていても、
部下とのやりとりは、その場になればこれまでの反応パターンを
無意識に繰り返すにとどまる可能性が高くなります。
要するにその瞬間は忘れている。

では、どうすれば、意識的選択を持ち込むことができるか。
もっと簡単に言えば、どうすれば、その場面で鮮明に「知識」を思い出し、
「行動」することができるか。
状況に埋没してしまうのではなく、一瞬、その状況に反応している自分を
しっかりと認識し、必要な対応を持ち込むことができるか。

コーチという立場でできることが、3つぐらい考えられます。
(もちろん上司という立場で部下にできる事柄です)

1つ目は、事前に詳細にシミュレーションを行うことです。
いつ、誰に、どこで、どんなタイミングで、どんな声の大きさで、
どんな声のトーンで、どんな表情で、どんな姿勢で、どんな言葉を伝えるのか、
ものすごく具体的にイメージをしてもらいます。

そうすると、いざそのシチュエーションが訪れたときに、
あたかもスイッチが入って、DVDの映像が映し出されるように、
一気に目の前にイメージが展開します。

つまり思い出すわけです。

2つ目は、原始的ですが、リマインドをかけることです。
無意識にこれまでの行動を繰り返してしまうという習慣を打ち破るには、
なんといってもリマインド。

そして、リマインドの頻度は多いほど効果があります。
毎朝、メールを送り、「今日は誰をほめますか?」、
昼休みにも1本「午前中はほめましたか?」、
夕方にも「午後はいかがでしたか?」

これだけで、思い出す頻度はかなり高くなります。

3つ目は、自分自身で記録をつけてもらうことです。
一度でもできたらそのことを振り返って記録する。
ほめてどうだったのか所感を書き留める。
ほめた回数を書くだけでもいいかもしれません。

何度も思い出したことは記憶に定着します。
実践したことを振り返ると、そのイメージがしっかり脳に刻み込まれます。
だから次に同じようなシーンがやってきたときにまた思い出す可能性が上がります。

この3つの働きかけにより、前出の役員は無事、
ほめることに関する知識と行動の溝を埋めることに成功しました。

コーチングは、知識を行動に移すことを何よりも大事にします。
習慣化された無意識の行動にストップをかけ、
新しい意識的な行動を作り出していきます。

人が新しい行動を獲得し、違う世界を体験することを支援していくのは、
かれこれ12年やっていますが、なかなか刺激的な営みだなと思っています。


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