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3分の会話の威力
コピーしました コピーに失敗しました先日、ラジオ番組の電話インタビューに出演しました。
コーチングスキルについての質問に答えるというもので、事前に番組から想定質問集をいただいていました。内容を見ると、質疑応答という形にはなっているものの、答える時間がかなり長い。
ちょうど2週間前に、小宮一慶さんの電話での講演会で司会進行役を務めたとき、参加者の方から「司会者はもっと技量が必要」と、厳しいご指摘をいただいたところでしたので、緊張が高まります。
想定質問に基づいて話す原稿を用意し、電話インタビューを受ける前に、広報担当のスタッフを相手に練習をしました。
「どう?」
「話すスピードが速いです」
練習。
私たちは、コーチングのスキルアップのために、実際のコーチングの会話を数名に聞いてもらい、チェックリストに添って改善点などを指摘してもらう機会が多くあります。
□ 声のトーン、話すスピードは相手に合っていた
□ 話の間やタイミングは相手に適切だった
□ 質問は効果的だった
□ 自分本位ではなかった
□ 決めつけはなかった
このように具体的な項目について、客観的なフィードバックをもらいます。
今回の場合は、さしづめ、最初の「話すスピードは相手に合っていた」というところに「課題あり」ということになるのでしょう。
さて、ラジオ出演の当日、時間になると電話がかかってきました。
話の相手をしてくださったのは、番組のディレクターの方。事前に資料をお送りしておいたら、さっそく開口一番に電話口の向こうで読んでくださっている様子で、
「うーん、なるほどぉ」
「うーん、そうなんだぁ」
原稿を読みながら関心を寄せて読んでくださっている様子が、電話の向こうから伝わってきます。
資料の内容は、部下とどのように接したらいいか、というものでしたので、「いや、私もこういう経験があるんですよね」としみじみとおっしゃいます。この声のトーンを聞いただけで、私はもう、話す内容はこれでいいんだ、と大いに自信がつきました。
そしていよいよ本番。
一応原稿はあるものの、このディレクターの方は、私の話を聞き、それに合ったひとことのコメントを加えてくださいます。
「つまり平野さんがおっしゃっているのは......」
「......ということは、私はこのように思ったのですが」
そのコメントはあまりにも的確で、聞いているだけで、
「あ、私の話は伝わっている」
「言いたいことはきちんと言えている」
と感じられました。
このディレクターの方はまさに
□ 話の間やタイミングは相手に適切だった
□ 質問は効果的だった
を実践されていました。
その効果は、出演している最中の安心感をもたらしただけではなく、終わってからもずっと満足感として私の中に残りました。
おそらくこのディレクターの方は、今まで数多くの方を相手に話をしてこられたのでしょう。
コーチするときには「聞いているよ」「受け入れているよ」というメッセージを相手に伝えることがとても大事です。その効果は相手に自信をつけさせ、エネルギーを上げます。
ちなみに、私はその日に話した原稿を、その夜の枕元まで持って寝ました。
たった3分のインタビューでこれを引き起こすことができるなら、日常の会話の可能性は無限にあることを実感します。
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