Coach's VIEW

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アドバイスはしない

『インナーテニス』、『インナーゲーム』の著者である
ティム・ガルウェイは、テニスのコーチとして、
70年代に、コーチングのひとつのあり方をすでに見せています。

有名なエピソードとして、次のようなものがあります。

彼がテニスのコーチをしているところに、
たまたまスキーのインストラクターが遊びに来ました。
ティムは、待っている生徒のために、彼にテニスのコーチを依頼します。
依頼したあと、ティムは彼に言います。

「ただし、ラケットは持たずにコーチしてください」

具体的に、どのようにコーチしたかについてはわかりません。
しかし、スキーのインストラクターたちは、ラケットを持たずに、
言葉だけで、効果的なコーチングを行ったとあります。

ラケットを持たずにテニスのコーチをするということは、
実際にはボールを打って見せないということです。

また、彼らはスキーのインストラクターですから、
考えてみれば、テニスは教えたことがないはずです。
しかし、同じスポーツですから、コーチをすることができたのです。


ご存じのように、コーチングでは「アドバイス」しません。
もちろん、「教える」こともしません。

コーチングとは、アドバイスやティーチングをせずに
「人材開発」をする手法なのです。

アドバイスではなく、「質問」をすることで、
相手に考える機会と、選択の可能性を広げる、
また、視点を変えることを目的としています。

コーチングの目指すものは、
一人ひとりの「自律性」、「自発性」、「創造性」の開発、
そして、「自由な表現」を促すことにあります。

もちろんアドバイスは、一瞬は機能するでしょうが、
自分で考えたり、他の人から情報を引き出したりする
能動的な態度を奪ってしまいがちです。

でも、コーチの側に立ってみると、
アドバイスをする方が、実は簡単なことに気がつきます。

「どうしたらいいのか」を教える方が簡単なのです。

確かに、緊急の場合にはそうする必要があることもあります。
しかし、半年、1年というコーチングの期間では、
やはり、「質問」を中心に、セッションは行われます。

いくつかの効果的な質問をコアにしながら、
仕事、人間関係、問題への対処を考え、
それに向けた行動を起こしていきます。

ここで、興味深いのは、
コーチ自身も、アドバイスしない、教えないという前提に立つことで、
必然的に、「創造的」にならざるを得ないという点です。

質問だけで、どのようにコーチング・カンバセーションを
展開するかについて、コーチも考えなければなりません。


コーチングは、先生と生徒、上司と部下など、
既成の関係を超えて行われるものです。
つまり、お互いが答えをもたずに、「問い」だけを共有し、
お互いに考えるプロセスなのです。

何かをさせたり、させなかったりすることが目的なのではなく、
「問い」に対して、可能な限り答えを探し出すプロセスが
コーチングの目的です。

「問い」をもったクライアントは、
そのことについて考え始め、やがて、常に自問を繰り返すようになります。
長期的、継続的、集中的に、そのことを考えるようになるのです。

これが、新しいアイディアや行動を生み出す原動力になります。

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