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覚悟を決めている
2009年10月28日
ある60歳の工場長の話です。
彼は、十数ヶ所の工場を抱える大手メーカーの工場長であり、これまで、行くところ行くところで、業績不振だった工場を復活させてきたことから、「再生屋」の異名を持っています。
厳格な一面もありますが、自分の部下をどんなことがあっても最後まで見捨てず大切にするので、部下からの信頼は厚く、また、部下にとって父親のような存在でもあることから、社内では「オヤジ、オヤジ」と敬われていました。
「どのようにしてそれほどの信頼を得ているのだろう」と興味を抱いた私たちは、この工場長にインタビューをさせていただくことにしました。
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彼は、一つの工場をだいたい一年半くらいで復活させてしまうそうです。そして、二年目が終わるころには、「別の工場へ」と社長から特命辞令が降りる。
「辞令が降りたら、どうするのか」を聞くと、真っ先に総務人事からメンバーのプロファイルを取り寄せるとのこと。ここでのプロファイルとは、顔写真付きの社内での履歴書です。そして、それらと一週間にらめっこして、赴任の日までに全て暗記するのだといいます。
「ええ? 300人もですか?」と私が聞くと、彼は、逆にびっくりした顔つきで、こう返しました。
「中島さん、それはMUSTですよ。実際にはもっと多いのですから」
「?」をつけた私の顔を見て、工場長は「わはは!」と高らかに明るく笑いながら言いました。
「次の工場の社員が100人だろうが、300人だろうが、彼らの顔と名前を覚えるのは当たり前。でもね、実際はその3倍、4倍くらいは覚えなくちゃだめなんですよ、中島さん。だって、彼らの後ろには、家族がいるんですよ。奥さんが、子供たちが、そして、両親が。その人たちのために、がんばらなくっちゃいけないんですよ、社員はね。
中島さん、僕がこの会社で何て呼ばれているのか、知っていますよね? オヤジ、ですよ。オヤジ。やっぱり、オヤジと呼ばれるからには、家長として、家族や親戚のことも把握しておくべきでしょう。そう思いませんか? 僕は当たり前のことをしているまでですよ」
「この人は決めているな」と思う瞬間でした。
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リーダーに対して部下たちが求めていることは、「覚悟」。
行き先を決める覚悟、目標を達成させる覚悟、メンバーを守る覚悟......など、リーダーにはいくつもの覚悟が必要です。
そして、その覚悟を「決めているか、決めていないか」は、部下には全てお見通しだということを忘れてはいけません。
......ここぞというときに、部下を見捨てて、真っ先に逃げてしまうリーダー
......口だけで、自らは全く動こうとしないリーダー
......「決めない」と決めているリーダー
もうこの状態では、リーダーとはいえないかもしれません。
あなたは、どんな覚悟を決めていますか?
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