Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
いくら話しても「伝わらない」わけ
コピーしました コピーに失敗しました「桜井さん、うちはコーチング以前の問題。リーダーが、ビジョンやゴールをしっかり伝えることすらできないんですから」コーチングのトレーニングを勧めると、こんなことを言われる方がいらっしゃいます。では、いったいどうしたらこれらを「伝える」ことができるのでしょうか。
ある大手食品メーカーで、マネージャーに対するコーチングのトレーニングを実施したときのこと。半年間のトレーニング終了後、どのような変化があったのかをみるためのリサーチを行いました。
- トレーニングに参加したマネージャー本人
- マネージャーの部下
- マネージャーの上司
のそれぞれに対して、
- マネージャー自身にどのような変化があったか
- 所属チームにどのような変化があったか
を質問したところ、とても興味深い結果が出ました。
質問「トレーニング以前に比べて、参加者は部下の話を聞くようになった」
→この質問に対しては、本人も部下も上司もすべて「大きく上がった」と回答。
質問「トレーニング以前に比べて、参加者は組織のミッションやゴールを明確に伝えるようになった」
→この質問に対しては、本人の自己評価はそんなに上がってはいないが、上司と部下は「大きく上がった」と回答。
つまり、このふたつの回答から推測されるのは、「マネージャーが部下の話を聞くようになったことで、組織のミッションやゴールが明確に伝わるようになった」ということ。
私たちは、伝えるということを誤解しがちです。伝えるとは、うまく話したり、何回も言ったり、わかりやすく話したりすることだと思っている。もちろんそれらは重要なことに違いはありませんが、さらに大切なのは「話を聞く」こと。
話すことではじめてオートクラインが起こる
ゴールやミッションについて、相手に問いかけ、話を聞く。ゴールやミッションを題材にした会話を増やし、相手の話を聞く。
相手にとってみれば、話すことで初めて、その内容が咀嚼され、理解され、その人のものになる。まさに、オートクライン(※)が起こるのです。
- 話しやすい雰囲気をつくる
- 相手の話を最後まで聞く
- 話す機会を増やす
- 気づきや行動を促すような問いかけをする
etc.
聞く能力は、トレーニング無しで上がることはありません。「伝える」ために、私たちには、良い聞き手になるトレーニングが不可欠なのです。
※オートクライン
自分で発した情報を相手がキャッチするだけでなく、自分自身も脳の中のレセプター(受容器)でキャッチすること。
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。