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Change Capacity

以下は、日常のできごとと、
それが人に与えるストレス強度を表にしたものです。

これは、1968年にアメリカの精神科医 Thomas Holmes 氏と
Richard Rahe 氏によって発表された
「Holmes and Rahe stress scale」に基づいています
<Holmes TH, Rahe RH.J Psychosom Res. 1967 Aug;11(2):213-8>。


   1位 配偶者の死       100
   2位 離婚           73
   3位 夫婦別居         65
   4位 刑務所への収容      63
   5位 近親者の死亡       63
   6位 本人の大きなけがや病気  53
   7位 結婚           50
   8位 失業           47
   9位 夫婦の和解        45
  10位 退職・引退        45
  11位 家族の健康の変化     44
  12位 妊娠           40
  13位 性生活の困難       39
  14位 新しい家族メンバーの加入 39
  15位 仕事上の変化       39
  16位 家族上の変化       38
  17位 親友の死         37
  18位 配置転換・転勤      35
  19位 夫婦ゲンカの回数の変化  35
  20位 一万ドル以上の借金    31
  21位 借金やローンの抵当流れ  30
  22位 仕事上の地位の変化    29
  23位 子女の結婚        29
  24位 親戚関係でのトラブル   29
  25位 個人的な成功       28
  26位 妻の就職・退職      26
  27位 進学・卒業        26
  28位 生活環境の変化      25
  29位 個人的習慣の変更     24
  30位 上司とのトラブル     23
  31位 労働時間や労働条件の変化 20
  32位 転居           20
  33位 転校           20
  34位 レクリエーションの変化  19
  35位 社会活動の変化      19
  36位 宗教活動の変化      18
  37位 一万ドル以下の借金    17
  38位 睡眠習慣の変化      16
  39位 家族の数の変化      15
  40位 食生活の変化       15
  41位 長期休暇         13
  42位 クリスマス        12


この表が作成されるもととなった調査は40年前のものですから、
今日私たちが経験しているイベント(できごと)とは、多少ずれがあります。

ただ、どんなに元気な人でも、
いくつものイベントを同時に経験してしまえば、
ストレスの負荷に負けてしまうというのは、たしかです。

個体差はありますし、イベントの受け止め方も影響しますが、
それでも、イベントのスコアが臨界点を超えれば、
誰でも耐えられなくなります。

実は、限界に近づいているときに、
急激な変化への要求があれば、
それは、心身に対するリスクになります。

これは、個人だけではなく、組織全体にとっても同じです。


数々の調査によれば、
プランニングされた組織変革の70%が失敗に終わっている、
という報告があります。

これらの失敗の主な要因は、
変革に対する組織の適応能力を「査定」し、
「進捗を追う」ための
信頼できる診断ツールがないことが
原因の一つと考えられています。

ライフイベンツにおける許容量の限界があるのと同じく、
組織にも変化できる余裕と可能性が、
どれだけあるかを計測してからでなければ、
組織改革や、組織変革のあらゆる手段は、
機能しないことになります。


William Judge 氏と Thomas Douglas 氏は、
論文の中で、企業が状況・環境を変えるために、
競合他者よりも、より早く、より効果的に変化に適応できるかどうか、
以下のような組織のケーパビリティを測ることの重要性に触れています。


【1】信頼のリーダーシップ

     シニア・エグゼクティブ層の、組織の他のメンバーからの信頼を勝ち取る能力
     組織全体に、集団的ゴールを達成するための道を示す能力

【2】信頼しているフォロワー

     シニア・エグゼクティブ層が掲げた新しい道に対し、
     建設的に異議を唱えるか、あるいは喜んで従う
     エグゼクティブ層以外の社員の能力

【3】有能なリーダー

     チェンジ・リーダーたちの進化と誕生を促すために、
     彼らを惹きつけ、保持し、能力を向上させる組織の能力

【4】中間マネジメント層の関わり

     シニア・エグゼクティブ層と、それ以外の社員を繋げる
     中間マネジメント層の能力

【5】革新的な組織文化

     イノベーションの水準を上げ、革新的な行動を奨励する組織の能力

【6】アカウンタブルな文化
   
     リソースを注意深く管理監督し、事前に取り決められた締切を
     守る組織の能力

【7】効果的なコミュニケーション

     社内を垂直に、水平に、対外的(対顧客)にコミュニケーション
     できる組織の能力

【8】システム思考

     問題の根本原因に焦点をあて、組織の内側と外側の
     境界線の相互依存関係を認識できる組織の能力


また、彼らが提唱する「組織の変化適応能力」アセスメントの質問肢の中には、次のようなものがあります。


 第一線の社員たちは、

   ・変革の提案に自らを開いている
   ・変化に対する彼ら自身の懸念を声に出す機会を持っている
   ・変化がどのように彼らの部門を助けるのかを大体理解している
   ・トップ・マネジメント層は概して信頼できる、と感じている


 情報のフローは効果的か?

   ・エグゼクティブから社員へ
   ・迅速か
   ・組織全体に渡っているか
   ・顧客から組織へ


私たちは、時に「変化」にだけ目が向きがちです。
しかし、それだけの余裕が、
個人と組織にどの程度あるかどうかを見極めずに、
それを実行してしまうことにはリスクがあります。

よって、「組織の変化適応能力」を事前に計測することは、
現代の企業にとって、重要度の増している必須事項であると考えられます。


組織変革の重要な鍵は、
いま、組織にどれだけのキャパシティがあるかを、
常に調査していることだと思います。

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 【参考文献】

 Organizational change capacity: the systematic development of a scale
 William Judge, Thomas Douglas
 Copyright Emerald Group Publishing Limited

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