Coach's VIEW

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行きたくなる病院、行きたくなくなる病院

先日、母の体の具合が思わしくなかったので、病院に連れて行くことにしました。
症状を聞いてみると、どうもおなかの調子が悪いらしい。
高齢なことも考え、ちまたで名病院と噂されている消化器の専門病院を訪れることにしました。

母は耳が遠いので、医師とのコミュニケーションにはいつも時間がかかります。

そこで、今回私は事前に、問診されると思われる項目を母から聞き取り
メモしておき、それを手に病院に向かいました。

「熱、なし。
 食欲、なし。
 便秘がち。
 恐らく腸の具合が悪いんだと思う、
 と母は言っています」

すると、その医師はひと言。
「それは誰が診断したんですか?」

その語調と少し高圧的な表情は、
診断を下すのは自分だと言わんばかりです。

私は絶句し、その私を見た母は不安そうな顔になってしまいました。

確かに腕は良いのでしょうが、
気持ちとしてはこの人ともう話したくない......。

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母だけではなく、
実は私自身も病院通いをしています。

「アレルギー」と「高血圧」。

そんな中、私の住んでいる地域に新しい医療モールができたので、
そこを自分のホームドクターとすることにしました。

行き始めてすぐに気づいたのですが、
その医療モールは、スタッフのコミュニケーションが、
自分が今まで知る限りの病院の中で格段に良いように感じる。

受付の挨拶に始まり、看護師さんの対応、
医師もよく話を聞いてくれる。

症状を説明すると、考えられる理由をわかりやすく説明してくれる。
質問をしても、面倒くさがることなく丁寧に答えてくれる。
治療方針も、頭ごなしに決め付けることなく、
いくつかの選択肢を提示してくれる。

私にとって、今までになく安心感の持てる病院だと感じていたのです。


通い始めてしばらくしたときのこと。

待合室のロビーでソファーに座っていると、
「桜井さん!」と声をかけられました。

顔をあげてみると、
偶然にも弊社のCTP(コーチ・トレーニング・プログラム)の卒業生の姿。

「Yさんじゃないですか! 僕は患者として来ているんだけど、
 Yさんはどうしたの? 何でここにいるの?」

「実は、この医療モールのアドバイザーで、
 コーチングの指導をしているんです」

聞けば、このモールでは、設立当初から、
Yさんのアドバイスの元に、コーチングを導入しているとのこと。

医療スタッフや事務スタッフに継続的なコーチング研修を行うことで、
チーム医療の充実、ホスピタリティの向上を目指した取り組みを
しているのだそうです。

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後日、この二つの出来事を、ある知り合いの医師に話してみたところ、
次のようなコメントが返ってきました。

「私たちにとって、とても大切な示唆ですね。
 患者さんとのコミュニケーションはもちろんですが、
 それ以上にコーチングが機能するのは、
 医療スタッフ同士のコミュニケーションだと思います。

 コミュニケーションを通じて、
 チーム医療の質を向上させる。医療事故を減らす。

 そのためには、医師がコーチングを学ぶことが
 かつてないほど求められる時代に入っているのだと思います。

 医療スタッフのコミュニケーション能力が高まることで、
 最終的にはすべての患者さんの安心につながるはずですからね」


すでに、これまでにも、
「研修指導医のためのコーチング」「難病治療のためのコーチング」など、
コーチングは医療業界において数多く導入されています。

また、介護、社会福祉の分野では、
横浜市の地域包括支援センターの取り組みに代表されるような、
本格的なコーチングの導入が始まっています。

こうしたさまざまな取り組みが、最終的には
医療機関や社会福祉施設を必要とする、
多くの患者、利用者の方々への貢献であることを考えると、
コーチングの普及に、より強い社会的意義を感じます。


日本中に、母のような患者さんの誰もが、
気持ちよく通える医療機関が増えていく。

そんな取り組みに、
私たちも一役買えれば、
これほどうれしいことはありません。

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