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誰の何をコーチするのか

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「コーチング」という言葉は、ややひとり歩きをしているところがあります。

例えば、部下育成のためのティーチングや、トレーニング、メンタリングに取って代わるものとして伝えられていたり、指示命令をしてはいけないというように伝わっていたりもします。

少なくとも部下の開発や育成においては、ティーチングも、トレーニングも当然用いられます。それぞれに用途があります。コーチングもあくまでそのひとつなのです。

そのような中で、コーチングは、特に、リーダーやマネージャーの開発を行う経営者やエグゼクティブに対して、大変機能することが分かっています。彼らは部下のタレントを開発し育成するために、自分自身がそれ相応の能力を身につけなければなりません。そのように、はっきりとした目標や目的があり、期限が決められている時こそコーチングは機能します。

エグゼクティブや、経営者は、アスリートとまったく同じですから、目標に向けて、必要な能力や知識を身につけるために、コーチングは有効です。彼らのリーダーシップ、マネジメント能力、技術的なコンピテンシー、そして、関係構築能力、自己認識などを上げることが、コーチングのテーマとなるでしょう。


さて、時代の変化とともに、とりわけリーダーに求められる能力も変化してきています。単に彼らの技術的なコンピテンシーを評価するだけでは、もはや不十分なのです。そのことを示している文献(※)より、一部をご紹介します。


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組織コンサルティング会社のGreen Peak Partners社が、コーネル大学と連携し実施したリサーチ「エグゼクティブの成功を予測させるものは何か?」で興味深い結果が発表された。

これによって、役員会、投資家、ヘッドハンティングのエグゼクティブは、今後、未来のリーダーをスクリーニングする際に、これまでの条件を改めなければいけないであろう。

リサーチ結果から、「『どんな犠牲を払ってでも結果を出す』タイプのエグゼクティブが、実は、組織の利益を減少させている」ということが判明したのだ。

その一方で、「対人能力が高く、自己認識の高いリーダーの方が、経済的により高い成果を出している」ということも分かった。

このリサーチ結果は、従来の「『結果を出すためにどんな犠牲を払ってでも推し進めること』こそが正しいアプローチだ」という考え方に異議を唱えるものである。

Green Peak Partners社のパートナーであるJ.P.Flaum氏は、「利益をもたらすエグゼクティブというのは、実は、際立って、人そしてチームとうまく働ける自己認識の高いリーダーなのである」と言い、また、Green Peak社の社長Dr. Beckey Winkler氏は、「今回のリサーチ結果から、我々が持ち帰れるものは、ソフト面における価値こそが固い業績を生み出すということです。企業や投資家たちは、リーダー候補たちの対人関係の強みを評価することにもっと重きを置く必要があります。彼らの技術的なコンピテンシーを評価するだけでは不十分なのです」と言っている。

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この文献で述べられていることが全てを決定づけているとは思いませんが、確かにほとんどのエグゼクティブ職において、「低い対人能力」は、期待を下回るパフォーマンスへとつながっているように思えます。私の経験的にも、対人能力のスコアの低いエグゼクティブは、一つひとつの成果を取ってみても、思わしくない結果につながっています。

特に、「自己認識」のレベルは軽く扱われがちですが、本当はこれこそ、基準のトップに上げなければならないものです。実際に、自己認識のスコアの高さは、総合的な成功を測る最も効果的な指標と言えるかもしれません。

リーダーやマネージャーに対してコーチは、自己認識のレベルを測り、それを高めるためのコーチングを提案できなければなりません。また、それを支えるツールの準備も必要になるでしょう。

とはいえ、気をつけなければならないのは、自己認識が上がらなければ、何も始まらないというわけでは無いということです。ひとたび、自己認識のレベルを上げるプロセスに入れば、あとは普段の仕事と平行して高めていくことができるでしょう。

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※参考文献
"New Study Finds Nice Guys Finish First When It Comes to Performance"
Copyright MediaTec Publishing Inc.
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