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「はやぶさ」と「日本代表」
コピーしました コピーに失敗しました先月、はやぶさが数々の困難を乗り越えて、7年ぶりに帰還しました。回収されたカプセルの中には小惑星「イトカワ」の砂が入っているかもしれません。
地球から3億キロ離れた直径わずか540mの「イトカワ」に行って着陸し、サンプル採取をして地球に戻ってくる。イオンエンジンによる惑星間飛行。自律航法。学生時代に、アイザック・アシモフやアーサー・C・クラークの宇宙SFものにどっぷりつかった私としては、とても惹かれる話題です。
また、数々の困難を乗り切ってこのプロジェクトを成功に導いた関係者の方々の喜びは計り知れないものだったと思います。
地球からの指令には、往復40分の差が起こってしまうため、自分で判断して行動を決める、自律航法というプログラムが搭載されていた「はやぶさ」。現場で自ら情報を集め、判断し、軌道修正していた「はやぶさ」。
「はやぶさ」は、まさに自分自身のリーダーシップを発揮してこのミッションを成功に導いたのです。
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先般幕を閉じたワールドカップで、日本代表が迎えた予選リーグ第3戦。引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる大事な一戦です。
序盤、日本代表はデンマーク代表の猛攻にさらされました。
このとき岡田監督は、守りを固めるために、中盤の選手を下げるようフォーメーション変更の指示を大声で出していたそうです。ところが、あのブブゼラの大音響にかき消されてしまい、声は選手に届かない。
「どうすればいいのか......」
そんな岡田監督の気持ちに反して、選手たちは、自らの判断で守備的なフォーメーションに変えたのだそうです。そして、それはまさに岡田監督の思ったとおりのフォーメーションでした。
試合後、岡田監督が、「試合に勝ったことはもちろん嬉しいが、ここまで選手たちが自分で考えて動けるようになったことが、それ以上に嬉しい」と、喜んでいる談話を聞きました。
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私たちのコミュニケーションに関しても、同じように見ることができます。
私たちはほぼ自動的に、それがいいと思ってコミュニケーションをとっている。今話している会話も、自分ではそれがいいと無意識的に思っているからその言葉を使っているし、その声、その表情で話している。
今こうやって書いているこの文章も、私自身がいいと思っているから書いている。しかし、いくら自分で「私の文章は分かりやすいはずだ!」「私は分かりやすく説明している!」と言い張っても、それは思い込みにしか過ぎません。会話の相手や読み手がどう受け取っているか、相手にどう影響しているかは、実際のところ、その本人に直接聞かなければ分からない。フィードバックがなければ分からないのです。
フィードバックを自ら受け取りにいく姿勢がなければ、私たちはいつの間にか裸の王様になってしまうでしょう。コーチングスキルのトレーニングにおいても、フィードバックを自ら受け取れるかどうかが、成果の鍵を握っています。
司令室からずっとコントロールされ続けるならともかく、私たちは一旦現場に出てしまえば、多かれ少なかれ自分で判断して行動する必要があります。
目標にいち早くたどり着くためには、自らフィードバックを取りにいき、それを元に軌道修正していく、「はやぶさ」や「日本代表」のような自律性の発揮が必要不可欠なのではないでしょうか。
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