Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


行動を少しだけ変える

行動を少しだけ変える | Hello, Coaching!
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

コーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)には、数多くの管理職の方が参加されています。私が担当するのは、その中の「コーチング型リーダーシップ」のクラス。

1クラスには最大20人の受講者の方が入られるのですが、毎週の電話会議の中で、「あなたは今、どんなリーダーシップを発揮しているのですか?」といった問いかけをします。

大抵の方は、「リーダーシップ」と「リーダー」を同義語で捉えているので、「リーダーとしてぐいぐいひっぱらなければならない」とか「バンバン指示命令して、部下を動かさなければならない」と思っています。

しかし同時に、「部下にはどのようにパフォーマンスを発揮してほしいですか?」と聞くと、彼らの多くは「私から何も言わなくても自発的に動いてほしい」と願っているのです。

実はここが重要なポイントで、今の管理職に必要な能力は、部下をぐいぐい引っ張る力ではなく、「部下が自発的に動けるように関わること」であり、「部下がリーダーシップを発揮できるように関わる力」、すなわち、他者影響力や関係構築能力が求められています。

実際に、「職場でどのような行動にリーダーシップを感じていますか?」と調査したところ、

・メンバーに組織のビジョンや価値を強く伝えている
・メンバーを前進させたり、成長させたりするコミュニケーションをしている
・メンバーとの共通の目標に向かうと同時に、人それぞれの特性を活かしている

というのがトップ3に挙がっています。(コーチング研究所調べ2008年)

もはや役職や年功序列制によって、影響力が約束されるような状況ではありません。その代わり、自分にはない部下の能力を引き出したり、相手の力を発揮させたりするような関わりが求められているのです。このことをお伝えすると、多くのマネージャーたちは、リーダーシップについての認識が少し変わるようです。

では、部下にリーダーシップを発揮させるには、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

******************************

CTPでは、「あなたは、部下の自発性を促す関わり方をしているかどうか」を棚卸しするチェックリストを使い、自己診断をします。同時に、同じリストを使って、日ごろ一緒に仕事をしている部下にも診断してもらいます。

たとえば、

□ 相手の話を途中でさえぎったり否定したりすることなく、最後まで聞いている
□ 相手をやる気にさせる提案をしている
□ 話しやすく相談しやすい雰囲気をつくっている
□ 相手に挨拶をしたり、頻繁に話しかけたりしている
□ 相手の強みや得意分野を引き出し、伸ばしている

これらをはじめ、リストには21のチェック項目があります。

多くのマネージャーの方は、こうした項目にチェックがつきません。また、部下からも「そういう行動はとっていない」と診断され、自分が思っている認識と、実際に周りに及ぼしている影響との差を知り愕然とします。

ただし、ギャップが明確になることで、最初こそショックを受けるものの、その後、チェックがつかなかった行動を意識して行うようになります。

******************************

先日、トレーニングに参加している管理職の方は、こうおっしゃっていました。

「今まで、自分自身が指示命令の上司の元でしか仕えたことがなかったので、基本的に部下に伝えることは、一方的な指示命令でしかしたことがありませんでした。

でも、『話を聞いていない』という指摘を受けたので、最近、部下に仕事を指示した後に、ちょっと間をおいて、『何か聞いておきたいことはないですか』と言うようにしてみたんです。すると、今までは口にしなかったような、他の仕事の話をしてくるようになりました。結果として、その場で話ができるので、仕事が速く進むようになりましたね。今まで本当に相手にものを言わせていなかったんだ、ということがよくわかりましたよ」。


また、以前は、「挨拶をしたり、頻繁に話しかけたりする」というところにチェックがつかなかった方が、自分から進んで、朝と帰りの挨拶を声に出してするようにした、ということもありました。

その方は上級管理職の方で、「こちらから挨拶なんかしたら、相手が気を遣うだろう」と思っていたそうです。

半年後、その方の部下数名にトレーニングの成果をインタビューしたところ、「他の管理職と違って挨拶をしてくれるので話しやすい。仕事の相談をしやすくなった」という感想がでてきました。

******************************

部下の仕事のスピードを速め、コミュニケーションが活発になり、部下がリーダーシップを発揮するための職場作りには、マネジメントをする立場からの働きかけが欠かせませんが、何も大規模な改善や取り組みをしなければならないというわけではありません。

行動を少し変えるだけで、実は部下に大きな影響を及ぼすものだ、ということを私はクラスを運営しながら、ひしひしと実感しています。

ポイントは、「毎日の行動をどのように変えるか」ということ。

「私たちは毎朝、その日に来ていく服を選びますが、毎日取る行動を選ぶことができる、ということになぜ今まで気づかなかったんでしょう」

このようにおっしゃった方もいらっしゃいます。

部下のパフォーマンスを上げ、自発性を促すために、私たちは毎日どんな行動ができるでしょうか? 今の行動を少しだけ変えることができるとしたら何ですか?

この記事を周りの方へシェアしませんか?


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事