Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
コーチの達人たちが持っている共通点とは
コピーしました コピーに失敗しました1997年、日本初のコーチングプログラムであるコーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)をスタートした当初より、私たちは実に多くの海外コーチたちからお力添えをいただきました。その中でも、私のパートナーとして特に大切な3名をご紹介します。
一人は、13年前、身一つで来日してきてくれたデービッド・ゴールドスミス氏。彼は、コーチについてまだほとんど分からなかった私たちからの、「what is coaching?」といった初歩的な質問にも丁寧に答えてくれました。また、こちらからの依頼にもすぐに応じてくれ、「力になろう」という心意気を感じさせてくれました。
そのおかげもあって、ファーストコンタクトから7ヶ月というハイスピードで、日本における初のコーチングプログラムを立ち上げることができたのです。
次の2人は、企業向けのコーチング・スキル・トレーニングの構成や、テキストの執筆を担当してくれたマーガレット・クリグバウム氏とトレーシー・スティーブンス氏です。
2人はアメリカのコーチ業界で多くの尊敬を集める人物であり、コーチとしてはもちろんのこと、コーチ認定試験運営の立役者として、コーチのトレーナーという立場でも活躍されています。
マーガレットは元弁護士、トレーシーは大手企業でマネージャーを務めてきたという異色コンビですが、共に、人を前進させる影響力と驚くべき執筆能力を持っています。
2年ほど前に、2人と一緒に仕事をしたときのことです。
そのときの仕事は、コーチのトレーニングプログラムの教材を制作するプロジェクトでした。彼女たちには主にプログラムのテキストの執筆をお願いしました。
結果、彼女たちはこちらの要望をうまく引き出しながら、わずか3ヶ月足らずで、350ページにわたるトレーニングテキストの原稿を、着実に期日に間に合うよう提出してくれました。「第一線で活躍するコーチは、コミュニケーションスキルだけでなく、卓越したライティングスキルも持ち合わせているのだ」ということを実感し、大変刺激を受けたのを覚えています。
この2人とデービッド・ゴールドスミス氏に共通しているのは、「関わる相手の目的達成のスピードを上げる達人である」ということ。こちらがやりたいことを伝えると、いち早くそのために必要な情報を提供してくれ、「さらによくするには、どうしたらいいか」という問いかけを繰り返してくれることで、期待以上のものを期日どおりに確実に仕上げてくれます。
このたび、トレーシー、そしてマーガレットと新たなプロジェクトに取り組むことになり、彼女たちと会話をする機会が増えています。打ち合わせでは、こちらのやりたいことを伝えるだけで、正確にそれを捉えてくれる。「できる限り力になりたい」という情熱がこちらにひしひしと伝わってきます。
先日マーガレットと話しているとき、「コーチの達人といわれる人は、人の話をどのようにして聞いているか」ということが話題になり、マーガレットは自身の経験から、こう教えてくれました。
「コーチの認定試験などで、多くの人のコーチングの仕方を耳にする機会があったけれども、達人と呼ばれるようなコーチは聞く能力が突出しているのよ。
人の話を聞くとき、
・『普通の人は、解決のゴールを探す。一方達人は、相手の思考構造を聞いている』
・『普通の人は、自分の考え方を基に聞く。一方達人は、相手の考え方を使って聞く』
・『普通の人は、相手の情報収集するために聞く。一方達人は、相手のあり方、価値観、思考の傾向を聞いている』
普通の人は問題解決の方法を探しながら聞いているけど、達人はパートナーシップを組めるポイントを探しながら聞いているのよね。相手が最大の成果を上げるために、『相手の学習方法やスタイルを学び、それを活用する』。それがコーチの達人。
つまり、『学ぶ達人は、聞く達人(Masterful Learner is a Masterful Listener)』ということね」
なるほど。スピードが速いのは、私の学習方法やスタイルを取り入れながら会話をしているからなのか......。
では、一体、マーガレットは私のどんな学習方法やスタイルに注目したのでしょうか。それをどう活用したのでしょうか。
次のミーティングで、ぜひその事実を確かめてみたいと思っています。
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。