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付き合う人を変えてみる
コピーしました コピーに失敗しました私が30代前半のころのことです。大前研一さんの本を読んでいたら、「人は3つのことでしか変わらない」と書いてありました。
「住む場所を変えるか」
「時間の使い方を変えるか」
「付き合う人を変えるか」
当時、私は、自分の「内側を高める」にはどうするといいのかを、懸命に考えていました。コーチとしてやっていくためには一目置かれる「器」でなければならない、そう考えていたのです。本を読んで新たな視点を手に入れたり、内省したり。時に座禅を組んだりもしました。
ところが、自分を変えようと、自分の内側にてこ入れをしていくよりも、外側の環境を変えてしまった方が早いよ、と大前さんは喝破されたわけです。
本当にこの3つしか方法がないかどうかは別にして、大前さん独特の言い切り口調に後押しされて、ちょっと試してみることにしました。
住む場所はいきなり変えられなかったので、時間と、付き合う人を変えることにしたのです。
まず、当時の自分のコーチに宣言をしました。変わるときには人に約束するのが一番です。
「時間の使い方と付き合う人を変えます。進捗を報告しますから、続けられるようにリマインドをしてください」と。
そして、私は、それまで7時ちょっと前だった起床時間を、5時半に変えました。古典的な方法ですが、起きて歩かなければ手が届かないところに、けたたましく鳴る目覚ましを置いて......。
早起きに関してはいろいろな方がいろいろなことをコメントされていますが、早く起きると、1日が「やってくる」のではなく、1日にこっちから「乗り出していく」ような感覚を持つことができます。受身でいられなくなる。時間の使い方を変えることは、多少なりとも自分を変えることにつながりました。
次に、付き合う人。
役員も含め、経営者と呼ばれる方たちとたくさんお付き合いすることに決めました。それが自分の成長に寄与すると考えたからです。
当時はまだ30代前半。友人は圧倒的に同年代のサラリーマンが多かったですし、お客さまでもお付き合いがあるのは、グループリーダーさん、課長さん、せいぜい部長さん。それを一気に経営者に引き上げようと。
どこに出向いて、どのように自分を紹介し、どのように話をすれば経営者とお付き合いができるか。コーチとプランを練り、それを実行しました。
最初は、経営者がたくさん集まる会に行っても、ただ名刺を配るだけ。話の輪に入ることができませんでした。会の開催場所に着いても、会場に入るのが怖くなり、適当な言い訳を自分の中で作っては、その場を立ち去るようなことさえありました。
それでも、「自分を変えたい」その一心で、自分より20歳も30歳も年上の経営者になんとか食らいついていきました。コーチもそんな私を応援してくれました。
付き合う人が変わることによって起こるのは、自分の中に起こる『問い』が変わる
経営者にたくさん会うようになってからしばらくして、自分の中に変化が起こっていることに気がつきました。経営者ならどう考えるか、どう振る舞うかという視点を、知らず知らずのうちに自分の中に大きく取り込んでいたのです。
飲食店に入ったら、「このお店の回転率はどのくらいだろう」「自分ならどう経営するだろう」と考える。日経新聞を読んでいても、「なぜ社長は、こういう経営判断をしたのだろう」「どういう戦略的意図がそこにはあるのだろう」と思いを巡らす。
「付き合う人が変わることによって起こるのは、自分の中に起こる『問い』が変わることだ」ということが分かりました。
今、エグゼクティブコーチングにおいて、クライアントの方に対して、「どういう人とのコミュニケーションを深めることがさらなる自分の成長につながりますか?」という質問をよく投げかけています。
「付き合う人を変えてください」とは言いませんが、普段あまり話さない人とコミュニケーションを交わしてみましょう、と。例えば、自分と違う部門の人、自分と違う業界の人、自分と全く世代の違う人......。その結果、そのエグゼクティブは、違う視点を取り込むようになり、違う問いが自分の中に生まれてくることで、違う行動がスタートします。
私のクライアントだった製薬会社に勤務されている営業部門の管理職の方は、あるとき、研究開発部門の管理職との飲み会を企画しました。全く自分の知らなかった会社の中の世界がそこにはあったそうです。
彼は言います。
「あの飲み会以来、薬がただの化合物ではなく、職人が額に汗して作り上げたアートのように思えるんですよ。ドクターに対する薬の紹介の仕方が変わりましたね」
大前さんがおっしゃっていたように、「付き合う人を変える」、つまりは「新しい人」とコミュニケーションを交わすことで、人は確かに変わるようです。
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