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そのひと言が、影響を与える

そのひと言が、影響を与える | Hello, Coaching!
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大手サービス業の社長、Aさんから聞いた話です。

その会社は業界ナンバー1であることから、地方の同業者がよく視察に訪れます。

あるとき、中堅規模の会社から社長と社員数名が視察に訪れました。ところが、一通り社内の視察が終わった後の懇談の最中に、なんとその社長が社員を怒り出してしまった。

「どうして、こんないい機会なのに君たちは質問しないんだ! せっかくA社長がお時間をとってくださっているのに失礼じゃないか!」

そこから、Aさんの目の前で、その社長の説教が始まってしまったのだそうです。

最後にその社長は、

「何でお前たちは黙ってばかりで何も言わないんだ!!」

と社員を叱りつけました。しばらくの沈黙の後、一人の社員が意を決して口を開きました。

「社長のそういう態度のせいで、私たちは何も言えないんです」

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私の母は今年で87歳。

その母が今年の暑さにやられたのか、8月の末に緊急入院しました。

集中治療室での処置が終わると、高齢であることを考慮の上、精神的な安定を優先し、家族が24時間付き添うという条件で個室に入ることになりました。

私たち付き添いの役目は、何かあったときにナースコールを押すこと。夜中に、母が体を動かしたり、寝返りを打ったりすると、点滴のチューブが体に押されて止まってしまったり、引っ張られてはずれそうになったりするので、それに気づいたら、看護師さんを呼んで処置をしてもらうのです。

看護師さんは、こんがらがったチューブを整理し、点滴の機械の調整、確認をして5分もかからず処置をしてくれます。しかし、いくらそれが仕事だとはいえ、深夜にそれも何度も何度も呼び出すのは、こちらとしては少し気兼ねしてしまうものです。


付き添いを始めて、3日目の夜のことでした。

その夜は、母の寝返りが激しく、私もなるべく気をつけてはいたのですが、結果的には立て続けに何度も看護師さんを呼ぶことになりました。

明け方の4時ごろのこと。先ほど呼び出してからまだ10分も立たないうちにまた点滴が止まってしまい、私は申し訳なく思いつつも、ナースコールを押しました。

当直の看護師さんはすぐに部屋に来てくれ、先ほどと同様に、てきぱきと処置をしてくれます。

私が、「何度も呼び出してすみません」と言うと、常夜灯だけのほの暗い病室の中で、その看護師さんは私の目を見ながらこう答えたのです。

「大丈夫ですよ。これが私の仕事ですから。少しでも変だと思ったら遠慮せずにいつでも呼んでくださいね」

3日間の付き添いで、看護師さんにそのように言われたのは初めてでした。気疲れしていた私は、その一瞬の会話でぐっと気持ちが楽になりました。


「ほんのひと言、ほんのひとつの表情や態度が、相手の行動に大きく影響している」

コーチングのトレーニングで毎日のように話していることですが、それを、自分自身が身をもって感じる夜になりました。

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私たちは、自分が人の行動に影響を与えていることを時々忘れてしまいます。

もし、冒頭の社長が、社員が黙っているのは自分がそのように影響を与えているからだということに気づけば、状況は変わるに違いありません。

私たちは、自分が思っている以上に相手に影響を与えています。

会っている瞬間はもちろんのこと、別れた後の相手の行動にもその影響は続いているのです。

あなたと会話をした相手が、別れたあとに、エネルギーが上がるのか、それとも下がるのか。のびのびと自由に行動するのか、それとも萎縮してしまうのか。

あなたは、今日会う人たちにどのような影響を与えたいと思っていますか?

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