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正しい答えを教えない

正しい答えを教えない | Hello, Coaching!
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先月、アメリカのハーバード大学メディカルスクールの生涯学習学科が開催した、2日間のコーチングプログラムに参加してきました。

このプログラムは、「コーチング」を能力開発、モチベーションの向上、目標達成などの側面から研究する方たちによって運営されています。

今回のテーマは、「医療とリーダーシップにおけるコーチング」。医療とうたっていることからもお分かりのように、医師、看護師などの医療従事者、セラピストなどメンタルヘルスの専門医や、医学関係者、コーチングの専門家など、約600名が参加していました。

能力の開発に働きかける手法としてコーチングがアメリカで注目され始めたのは今から約25年前。それから、多くのコーチングの教育・トレーニング機関が生まれてきましたが、25年経った今、コーチングがなぜ機能するのかを理論づけ、モデルを確定し、調査や研究の対象として取り上げ、その働きを解明するという次の段階に突入していることを実感しました。

その中で、特に印象的だったのがジョン・ウィットモア博士による基調講演でした。博士は、パフォーマンスを上げるためのコーチングが専門領域であり、スポーツやリーダーシップにおけるコーチングの著作を多く出しています。

講演の中で特に印象的だったのは次の言葉。

「今組織がフラットになってきているのは、上司に権威がなくなったからではなく、一人ひとりに自ら選択する力や自己責任が求められているからだ。

しかし、ヒエラルキーに慣れている私たちは、自ら選択し、自ら責任をとる方法を知らない。そこでコーチングが機能する。

なぜなら、コーチは相手に答えを教えるのではなく、相手が自ら学習し、行動することを助ける存在だからだ」。

そして博士は、「今私たちは、『ヒエラルキーから自己責任』という人間的な進化を遂げている最中なのだ」とまで言い切りました。

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コーチ・トゥエンティワンでは、コーチングのトレーニングプログラムを毎日運営しています。参加者の多くは、企業においてマネジメントの立場にいらっしゃる方々。このトレーニングは、参加者の方々が「自ら学習し、自ら行動を起こすこと」をベースに作られています。

しかし、トレーニングを始めて間もない参加者の方の大半は、「教えてもらう」というスタンスを前提に受講しています。したがって、トレーナーである私たちに数多くの質問をしてきます。

「部下のやる気がどうしても出ない場合、どうやって関わればいいんでしょうか?」
「周りからフィードバックをもらう際は、関係が良い人と関係が良くない人と両方入れたほうがいいのでしょうか?」

これらの質問からは、「正しい解答」を教えてもらおうとする姿勢が伝わってきます。こうした場合、私たちはすぐに答えを教えるのではなく、次のようにお伝えするようにしています。

「あなたは今どんな関わり方のレパートリーを持っているんですか?」
「関係が良い人と良くない人では、どちらからのフィードバックが役に立ちますか?」

このように問いかけると、答えをもらうことに慣れている方は、最初のうちこそ戸惑います。しかし、次第に、自ら考えながら周りにいる人たちとの関係性に目を向け、取り組み始めるようになるのです。

そこで手にいれた経験や体験は、本人が自ら考え、手にしたものですから、当然そこにオーナーシップが生まれます。

トレーニングが進むにしたがって、参加者からの質問は次第に減り、反比例するように、自ら起こした行動についての報告が増えてくるのが、このプログラムの大変興味深いところです。

「質問によって、正しい答えを得た上での行動から、問いかけられることによって自ら発見し、生み出す行動へ」。こうした行動を促進するのがコーチの役割です。


「相手から受ける質問が多いか、こちらからの問いかけのほうが多いか」。

これは、マネジメントを行う上でも、相手が持つ自ら選択する力や、自己責任についての意識を測るバロメーターになるといえるでしょう。

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