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コーチングのグローバル化が教えてくれた3つのこと

コーチングのグローバル化が教えてくれた3つのこと | Hello, Coaching!
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毎年、世界各国のコーチたちが楽しみにしている大きなイベントといえば、国際コーチング連盟(本社アメリカ)が開催する「コーチ年次大会(ICF Annual Conference)。今年は、11月にダラスで行われ、私も5名の仲間とともに参加してきました。

今年の参加者数は約800名。以前は、全米中のプロフェッショナルコーチたちが大集合するソーシャルイベント的要素が強かった今大会ですが、今年は、コーチングの有用性について学術的に研究することが目的だったり、組織開発への取り組みに関心があったりする世界各国の組織、および人材開発の専門家による情報収集の場に移行してきた、という印象を持ちました。

実際、1999年に日本コーチ協会における最初の年次大会にスピーカーとして来日されたマーシャ・レイノルズ氏も、その当時はプロのコーチでしたが、今では、組織心理学博士としての研究も行っています。

これらの事実は、それまでどちらかというと体験的、実践的な領域と言われていたコーチングが、その有用性を認められ、研究開発の分野でも注目され始めている、ということの証ではないでしょうか。


コーチ年次大会では、コーチングの有用性がグローバルに注目されており、世界各国のコーチたちが、「それぞれの国では、コーチングの何が有益なのか」ということについて熱っぽく語る場がいくつも見られました。かつて参加したときは、アメリカ人ばかりだった参加者も、今では、アジア、ヨーロッパ、中近東、ロシアと、まさに人種のるつぼ......。

中でも印象に残ったのは、中国でコーチとして活躍しているという女性。彼女は、朝食をとっていた私たちのテーブルに近づくや否や、次のように話し始めました。

「すみません。日本ではコーチをするとき、どうやって契約を交わしているのですか? 中国では、コーチするときに契約を交わすことは相手に失礼なことだと言われています。なので、日本では、どのように交わしているのかと思って......」

「『決めたことにコミットする』という表現を伝えたいとき、どのように伝えていますか? 中国では『コミットする』という言葉にふさわしい言葉がないので難しいんです」

彼女の口から出てくる、我々の常識を超える質問の数々に、「それぞれの国の事情やビジネス習慣の違いで、通用する言葉や概念はまったく異なる」ということを改めて考えさせられました。私たちが当たり前のように行っていることが、別の国では決してそうではない。

「自分たちと相手とは、基本的に違うものなんだ」というところから始める重要性を、コーチングのグローバル化から、身をもって学ばせていただきました。

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グローバルな発展を遂げているコーチング業界。実は弊社でも最近、英語で部下を育成したり、部下を英語でコーチしたりするという、海外駐在員のニーズが高まっているのを受け、英語によるコーチングのトレーニングをスタートしました。

今回のトレーニングは、計12週間。アメリカで長い間、コーチのトレーニングに携わってきたベテランコーチのもと、「コーチング・カンバセーション」(コーチングの会話)を身に付ける練習を行っています。電話会議という環境により、日本をはじめ、アメリカ、オーストラリアなどさまざまな国から参加されています。


各トレーニングはまず、ベテランコーチによるコーチングのデモンストレーションを行った後、受講生同士で「コーチング・カンバセーション」を繰り返し練習していきます。驚くべきことは、スタートして間もないのにもかかわらず、多くの受講者が、プロ顔負けの会話を展開していることです。

じっくり耳を傾けていると、そこからひとつの傾向が見えてきました。それは、どの受講者の方も、「相手の言うことを注意深く聞くためのヒアリング力が非常に高い」ということです。

相手が話していることを文字通りに理解するだけでなく、相手の背景や、言語以外で伝わってくることを、大変集中して捉えていることに気づかされます。これは恐らく、外国語でコミュニケーションを交わすという環境の中に身を置くことで、相手の伝えたいことを読み取る力が強化された結果なのでしょう。

皆さん、母国語が通じない環境でさまざまな努力をされ、その経験が、高いヒアリング力につながっている、と私は確信しました。これが、グローバル化による2つ目の学びです。

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3つ目の学びは、英語でコーチング・カンバセーションを展開していく中で気づいた、興味深い事実です。それは、次のような会話に顕著に表れます。

「『あなたが』やりたいと言っていることはこれですか?」
"Is that what YOU want to do?

「『あなたは』私にどのように関わってほしいですか?」
"How would YOU like me to support you?"


英語の場合は、日本語以上に、「『あなたは』●●●?」といった言葉遣いで、コミットを求める傾向が多く、必然的に「自責で物事を捉える」という意識が芽生えやすくなります。

「どうすればいいと思いますか?」

といった日本語の曖昧さに、私自身改めて目を向ける機会となりました。それ以来、日本語での会話においても、相手を自責にさせる言葉遣いをすることを意識するようになりました。

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コーチ年次大会や英語による新しいトレーニングを通じて学んだのは、「相手は自分と同じ」ではなく、「基本的に相手は自分と違う」という前提に立つことではじめて、開発される能力、そして、身に付くスキルがあるということ。

こうした能力やスキルを持つグローバルリーダーたちが秘める、コーチとしての高い能力に、私たちは今、とても高い期待感を抱いています。

言葉、価値観、習慣の違う人たちのパフォーマンスをさらに高めるうえで、コーチとして何ができるだろうか。

2011年、コーチとしての私のテーマになりそうです。

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