Coach's VIEW

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「停滞」に揺さぶりをかける

「拠点(支店、営業所、店舗、工場、研究所など)を活性化させるために協力してほしい」
仕事柄、クライアント企業様から、こうした依頼を数多くいただきます。

その際、担当者の方は、よくこうおっしゃいます。
「これまで、職場の活性化や業績改善のために、その拠点の長を集めて単発の階層別研修などを実施してきたのですが、なかなか変化が見られないんですよね」と。

その理由としては大きく二つ。一つは、「人は、1~2日の知識研修などでは、そう簡単には変わらない」ということ。もう一つが、「たとえその長が変わって、職場の習慣を変えようとしても、なかなか一人では変えられない」ということです。

そういう背景もあり、最近では、クライアント企業様から、「職場まるごとコーチング」を依頼される場面が多くなってきました。職場のリーダーだけでなく、メンバーも含めての数ヶ月間の活動です。

当然、単発の研修に比べて、継続的に組織変革に関わることができるため、私たちも成果に対して、さらにコミットすることができます。

とはいえ、こうした継続的な活動に付き物なのが、中盤で必ず発生する社内の「停滞」。

「最初はみんなで盛り上がっていたが、最近は、自分ばかり押し付けられているように感じる」と被害者的になったり、「こういう活動は、リーダーに率先して取り組んでほしいのに、まったくやってくれない」と他責にしたり、「結局、本業が忙しいんですよね」「いつまでやるんですかね、この活動?」などと評論家的になってしまったり......。


あるクライアント企業様に対する「職場まるごとコーチング」でも同様のことが起こりました。

明らかに停滞期のシグナルが出ていた職場内。活動の事務局担当者様からも、こうした事態をお聞きしていました。そこで私は、「そろそろ、あの取り組みを行う時期だな」と舵を切るのです。

その取り組みとは......、「『停滞』に揺さぶりをかける会話」です。

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このクライアント企業様による「職場まるごとコーチング」は、職場にお邪魔し、業務終了後の時間に開催しています。

各回同様、この日も、はじめは、「前回から意識したこと、試したこと、手ごたえ」について、職場のメンバーにお互いコーチしてもらいました。

「これをやった」「あれをやった」と語り始める皆さん。しかし、観察していると、どこか表面的で、心の底から言っている人は少ないように見えます。

そこで、私は、意図的に、この相互コーチングの時間を延ばしてみました。

お互いにだんだんと話すこともなくなり、トーンが落ち込み、次第にたまりかねて少しネガティブなことに触れる人が出てきます。

「この活動。最近、ちょっとトーンダウンしているよね...」
「忙しさにかまけて後回しにしてしまっているね...」

などなど。私が各チームを回っていると、そういう意見が耳に入ってきます。

ある程度落ち着いたところで、皆さんにシェアを求めました。「今、話していたことを、皆さんの前で披露してください」と。すると、驚くべきことに、皆さん一様に、この時間の前半に語っていた内容ばかり話し出すではないですか!

「......を試してみたんです」
「......という手ごたえを感じました」

皆さん、発言の内容がポジティブなものばかり。つまり、隠しているのです。本当は、相互コーチングの後半の時間には、ネガティブな意見も出ていたことを。しかし、そこにあるのは、この場では出さないぞ、と決めている顔、顔、顔...。

そこで、私は言いました。
「なるほど、皆さんから出てきた意見、これだけでいいですか?

......しばらく沈黙......。

「おかしいですね。私が各チームを回っていて聞こえてきた意見は、今のようなポジティブなものだけでなく、幾分、ネガティブなものもあったように感じました。ぜひ、それもシェアしていただけませんか?」

......また、沈黙......。

「あの...、私たちは、イキイキワクワクとした職場を追い続けているんですよね? そうしたとき、『本当はこういうことを思っていたけど、まあ、いいか』」というスタンスって、イキワクですかね? 私たちは、イキワクのプロですよね? 確かに、これまでは、思った以上にうまくいってきたことで満足できたし、期待以上だったので、感動もあったかもしれません。

ところが、こうやってうまくいってきたことで、恐らく皆さんの期待のレベルも上がっているんです。だからこそ、『その期待を今下回っている』ということに対して、不満に思い始めている。

でもね、皆さん。『期待のレベルが上がっている』というのは、プロの証拠ですよ。プロなんですから、その先を目指しませんか? 今をきちんと見つめ、つつみ隠さず話してみましょうよ。不平、不満だっていいんですから。

でも、一つルールがあります。これを暗い顔してやってしまうと、本当に暗くなってしまう。なので、せっかくだったら完全に他責にして、カラっとぶちまけてみましょう」

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こうして始まった「停滞」を揺さぶる時間。この後の20分間は、この組織の成長においてターニングポイントとなった瞬間です。今まで鬱積した感情があふれだし、皆さんが本音をぶちまけていました。

そして20分が経過したころ、私はこうお伝えしました。
「皆さんがここでぶちまけた不平不満は、実は、心の中で、『自分はこうしたい、みんなにはああしてほしい』といった欲求から生まれています。これからはそれを、不平不満という形で伝えるのではなく、リクエストとして発言してみませんか。誰に対して、具体的にどのようにしてほしいのか。『してほしいこと』『やめてほしいこと』を明確にするんです」


「思いっきり他責に。そして、言い切ったら思いっきり自責に」。
そうすることで、お互いにリクエストし、お互いにフィードバックし、そして、一緒に成長を喜ぶことができる組織へと変わり始めたのです。

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変革活動の中盤に必ず現れる壁。それを乗り越えることができないと、「停滞」「頓挫」がいつまでも続いていくことになります。

今回のような「イキイキワクワク」活動は、企業でよく見られる活動です。しかし、そこに足りないものがあるとすれば、それは「ドキドキ」。

「こんなことを言ったら、相手がショックを受けるから言わないでおこう」
「あえて、そんなところまで突っ込まなくてもいいか」

多くの変革活動が、陥っている「偽りのイキイキワクワク」。皆さんは、それを乗り越えるレパートリーを、いくつお持ちですか?


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