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リーダーシップ開発と企業業績をリンクさせる

リーダーシップ開発と企業業績をリンクさせる | Hello, Coaching!
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コーチングは、1対1で行われるリーダーシップ開発です。ゆえに、ともすると、ひとりの能力や才能を引き出すことが目的だととらえられがちです。

しかし、たとえ1対1で行われるものであったとしても、企業がコーチングに求めているのは、個人の属する組織全体に影響を与えることです。

また、企業は、たとえリーダーが変わっても、継続して組織がうまくいく、成長していくためのソリューションとしてのコーチングを求めています。そのためにはまず、「リーダーは何を基準に動く必要があるのか」について考える必要があります。


ここ数年、企業のリーダーシップ開発は、「アカウンタビリティ」にかなりの重きが置かれつつ、ますます「成果重視」 の方向へと向かっています(単なる成果主義ではなく)。

リーダー候補は少なくなってきているにもかかわらず、リーダーシップ開発によって、より大きな成果を得なければいけない、という現状が企業にはあります。とはいえ、「長期的な収益」が犠牲になるような、「短期的な効果」への集中が許されるわけではありません。

ある種のリーダーたちは、短期的に収益を上げるものの、その後、メンバーが疲弊してしまい、長期的に収益を上げることができなくなってしまっています。

また、人材育成に対する投資意識の薄い企業は、人的資源の枯渇により、長期的収益を犠牲にしてしまっています。

今日のリーダーには、短期的な効果だけではなく、長期的に、時には自分が抜けた後も組織が成長し、ハイパフォーマンスを維持できる状態をつくりあげる能力が求められているのです。

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Work Foundation 社が2年にわたって実施した、リーダーシップ開発に関するリサーチを見ると、主に次の3つのことが発見できます。

●全てのリーダーは、これまでのような、目先の数字と目標に執着し続けることからのパラダイムシフトが必要である

●「傑出したリーダー(outstanding leaders)」とは、「人(people)」と「態度(attitude)」と「エンゲージメント(engagement)」に焦点を置き、ビジョンと戦略を、社員と「共同で創り出し(co-create)」ているリーダーである

●「人を中心に置いたリーダーシップ」は、企業に優れた業績をもたらしている。この発見は、リーダーシップ開発における幅広いニーズを示唆している

また、英人材開発協会(CIPD)が、2010年に実施したリサーチ(2010 Learning and Development Survey)からは、主に次の2つのことが分かりました。

●企業にとって、会社の未来の経営目標を達成するのに最も優先順位が高いのは、「社員のリーダーシップ・スキルを開発する」こと

●グローバル企業にとっても、「リーダーシップ開発」は、トップ・プライオリティであること

そして、最終的にこれらのリサーチから見えてくることは、「『リーダーシップ開発は、会社の未来の変革を実現させる触媒である』と、多くの企業が考えている」ということです。
 
リーダーシップ開発は、単に新しいリーダーをつくるだけではなく、そのプロセスが、企業文化を創り、経営戦略を実現する行為そのものであることを意味しています。

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また、英人材開発協会(CIPD)のリサーチ結果からは「企業の『学習と開発』は、その会社の『経営戦略』とますます統一されてきている」ということも分かります。

そのため、「社員開発への介入(intervention)で、実際にどのような効果があったのか」を評価・測定することを、企業はかつてよりも重視するようになってきているのです。

現在では、リーダーシップ分野における多くの専門家たちが、こう警告しています。

「プログラムの価値を証明できなければ、『リーダーシップ開発』の未来は、不安定な状態に陥る結果となるだろう」と。


アカデミックの世界で著名な、英ランカスター大学ビジネススクールのJohn Burgoyne 教授たちが行った調査によれば、

「グローバル企業は、毎年、リーダーシップ開発に、340億ポンド(約4兆4千億円)も費やしているが、その多くが、成果を証明できずに終わっている」

と報告しています。にもかかわらず、彼らは従来のプログラムをそのまま繰り返している。現場から隔離して、リーダーシップや帝王学を教えるというやり方です。しかし、リーダーシップのなんたるかを教えたとしても、当然そのまま使えるわけではありません。

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コーチ・エィが提唱している、コーチによるリーダーシップ開発では、リーダーやリーダー候補が、現場で、実際にミッションや仕事のアサイン、目標などをスタッフに伝え、行動を起こさせ、組織をドライブさせていきます。

同時に、アセスメントを用いて現場からのフィードバックを受け、青写真の見直し、リーダーとしての態度、行動を修正し、社員の行動に働きかけていくことで、さらに組織をドライブさせていく。
 
そして、またフィードバックを受け、個人や組織の現状や成長を可視化する。これを繰り返す。


リーダーの多くは、フィードバックを評価や批判だと誤解していたり、理解が足りなかったりするために、効果的に活用できていないのが現状です。しかし、一方的に部下にコミュニケートするのではなく、彼らからのフィードバックに常に注意を払い続けることで、リーダーやリーダー候補は、フィードバックを経営戦略に効果的に取り入れていくことができるようになります。


今やリーダーシップは、2日間や、1週間の研修で手に入るものでないことは周知の事実です。

リーダーシップは部下と組織に影響し続けること、そして、そこからのフィードバックのサイクルの中で、開発されていくものなのです。


【参考文献】
Connecting leadership development to bottom line benefits by Simon Hayward
Strategic HR Review, Vol. 10 No. 1 2011, pp. 28-34
Copyright Emerald Group Publishing Limited

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