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セキュア・ベースとしてのリーダー

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現在は変化の時代です。
明日も明後日も企業として存続していくためには、
リーダーは大きな変化を部下や組織に求める必要があります。
 
しかし、その変化を部下や組織が受け入れないこともままあります。

「リーダーが新たな施策を唱えるものの、部下や組織において実行されない」、
あるいは、
「ビジネスモデルを変化させようとするが、
既存の慣れ親しんだモデルからなかなか脱却しない」。

部下や組織の中で、大きな変化への抵抗が起こるのです。


では、なぜ、部下や組織は変化のための行動をとらないのでしょうか。
その答えの一つとして、脳生理学的に見てみると次のようなことがいえます。

大きな変化というものは、
脳内の大脳辺縁系の扁桃体という恐怖を感じる部位を刺激してしまい、
結果、理性的・創造的思考をつかさどる大脳新皮質の機能を
停止させてしまう可能性がある。
 
つまり、大きな変化が恐怖を引き出し、
部下や組織を「思考停止状態」にしてしまうということです。


それでは、どうしたら部下から、変化という恐怖を越えて、
新しい行動を引き出すことができるのでしょうか。

イギリスの医師ジョン・ボウルビィは、
幼児は母親がそばにいると安心感を示し、
母親を「心理的な安全基地」として利用しながら新たな探索行動を行っている、
という観察から、「セキュア・ベース(安全基地)」という学説を提唱しました。
 
つまり、人が不安や恐怖を越えてリスクを背負って、新しい可能性に挑戦するには、
何かしらの「セキュア・ベース」が重要になるというのです。

脳科学者の茂木健一郎氏も、
人間の脳は「確かなこと」「不確かなこと」のバランスをとっていて、
10個確かなことがある人は、
同様に10個の不確かなことにもチャレンジできると言っています。


それでは、もしビジネスの現場で、
リーダーが良き「セキュア・ベース」になれたらどうでしょうか。
 
リーダーが良き「セキュア・ベース」になれれば、
部下はその基地を土台にして、新たな変革の行動をとることが容易になります。
 
反対にリーダーが良き「セキュア・ベース」になりきれない場合、
部下はその不安を背負ったまま、途方に暮れてしまうかもしれません。
リーダーが「セキュア・ベース」となりうるためには、
深い「信頼関係」が重要な要素になります。
尊敬し、信頼するリーダーの存在そのものが、
変化に向かう私たちの新しい一歩を引き出すのです。


もちろん、リーダーの存在だけでなく、
彼らが説く魅力的なビジョンや言葉も「セキュア・ベース」になり得ます。

私が携わらせていただいているある企業の社員の方は、
「『21世紀の代表的な企業になる』と説くリーダーのビジョンが、
自分を奮い立たせ、新たな挑戦にいざなってくれる」と言っていました。

また、これは私がコーチングしている執行役員の方のお話です。
その方は、まだその会社で赴任者がいなく、
さらには英語も使えないある国へ一人で駐在に行った際、多く困難に出会い、
その挑戦をあきらめそうになったことが度々あったそうです。

そんな時、その執行役員の方は、
新入社員時代から尊敬していた上司に言われた次のような言葉をかみしめていたといいます。

「君がもし、今後、たくさんの困難に出会って自分を信じられなくなったときは、
 君の可能性を信じた私のことを信じてほしい」。

その言葉を頼りに、新たなチャレンジを成功させて、無事赴任を終えたそうです。


部下に、そして組織に何か変化を求めるときには、
リーダーとして自分が「セキュア・ベース」になれているのかどうかを、
時に考えてみるのもいいかもしれません。


【参考文献】『プロフェッショナルたちの脳活用法』(茂木健一郎著 NHK出版刊)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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