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「育成」か「一人前」か
コピーしました コピーに失敗しました私たちの行動は、言葉の影響を強く受けています。人から何かを言われて行動を起こすこともあるし、自分の内側の言葉に従って行動するときもある。
この自分の内側の言葉を「セルフトーク」といいます。
人との会話の影響を受けて、セルフトークが変化し、行動が起こる。そう考えれば、私たちの行動は最終的にはセルフトークによって起こっていると言えるでしょう。
つまり、セルフトークが変わらない限り、行動は変わらない。
ああしろ、こうしろと言われると、その瞬間は圧力に負けて行動するかもしれません。しかし、内側のセルフトークが変わっていなければ、いずれもとに戻ってしまうのです。
言葉はイメージのシンボルです。同じ言葉を聞いても、人によってイメージすることは違ってきます。
たとえば「営業」という言葉から、皆さんは何をイメージしますか?
・お客様の役に立つ
・お客様にうまくいってもらう
・金額以上の価値を提供する
・対等な関係
・楽しい
・お客様にとってなくてはならないものを提供する
・買ってもらう
・お客様にお願いする
・売りつける
・安いものを高く売る
・つらくて大変
・難しい
・お客様の方が上 ......。
「営業」という言葉で何を思い浮かべるのか、「営業」という言葉からどのようなセルフトークを発展させているのか、それによって起こる行動はまったく違ったものになるでしょう。
行動的な人は、行動が起こるようなセルフトークをしている。行動が起こらない人は、起こらないようなセルフトークをしている。
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私は長い間、周囲の方々に「もっと桜井さん自ら部下を育ててほしい、育成してほしい」と言われ続けてきました。言われるとその瞬間は、面談したり、勉強会を開いたりするわけですが、なかなか長続きしない。
昨年末に、2011年の抱負についてコーチと話しているときのこと。案の定、部下育成の話題になりました。そこで、コーチが私に質問しました。
「育成とか、育てるということに対して、どう思っているのですか?」
そこからはじまったやり取りの中ではっきりしたことは、私にとって「育成」という言葉は、聞くと気が重くなる言葉だということ。
もちろん、部下には一人前になってほしいと思っています。でも、もしかしたら、部下はそれを望んでいないかもしれない。そういう部下を相手に、自分から手をかけて育てると思うと
気が重くなるわけです。
次のコーチの質問は、
「一人前というのはどういうことですか?」
私は部下に一人前になってほしい。一人前同士、対等な関係で楽しく仕事をしたいと思っている。
と同時に、一人前というのは、自分でなっていくものだとも思っている。一人前になりたいと思う部下が、自分で一人前になる。私としても、一人前になりたいと思っている部下に対して、サポートするのはぜんぜん苦にならないし、それはとても楽しいこと......。
この間、5分間ほどだったと思います。「育成」から「一人前」へ。
私の中のセルフトークは確実に変化しました。
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年が明けて、早くもひと月が経ちました。この一ヶ月で私が部下に対して行ったトレーニングは、すでに昨年一年間の量を超えています。
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