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「ポジティブ言葉」で組織のパフォーマンスを高める
2011年02月09日
最近読んだ、関西大学の安田雪教授の『「つながり」を突き止めろ』(※1)の中に、興味深い話がありました。
安田教授は、業績が高い人(上位15%)と、それ以外の人達とでは、電子メールの中で使っている言葉が違うことを発見しました。
業績が高い人(上位15%)が電子メールでよく使う言葉は、
・率直だ
・スムーズだ
・前向きだ
・有意義だ
・なんとか
・特別だ など。
それ以外の人が電子メールでよく使う言葉は、
・厳しい
・面倒だ
・大変だ
・細かい
・悪い
・同じだ など。
安田教授によると、業績が高い人は「ポジティブな言葉が多く、意欲が伝わってくる」が、そうではない人は「比較的ネガティブな言葉が多い」そうです。
業績が良いからポジティブな言葉を使うのか、ポジティブな言葉を使うから業績が良くなるのか、因果関係は分かりません。しかし、もしあなたが組織のリーダーなら、電子メールに限らず、ポジティブな言葉を使うほうが部下のパフォーマンスを高めることができます。
以下は、ハーバード・メディカルスクールのジェレミー・ウルフ教授らの実験です。
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空港で使われる銃刀類の検査装置を研究室内に持ち込み、被験者たちにはあらかじめ危険物が発見される頻度を伝えたうえで、鞄の中身を調べさせました。
「1%の確率で見つかる」と伝えたとき、誤答率は30%。しかし「50%の確率で見つかる」と伝えたら、誤答率は7%でした。(※2)
見つかる可能性が高いと伝えることで、パフォーマンスを高めることができたのです。
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私は企業の経営層を対象としたエグゼクティブ・コーチングを行っていますが、業績があまり良くない組織のトップのほうが、「そうは言っても難しいよ」「あまりうまくいきそうにないね」などと、将来の業績に対してネガティブな言葉を多く使う傾向があります。
うまくいっていないときにポジティブな言葉を使うには、少し勇気が必要です。しかし、組織のメンバーに、可能性を信じて行動し、パフォーマンスを上げてほしいと願うのなら、まずはリーダー自身が勇気を持って、その可能性を示さなくてはなりません。
なぜなら、リーダーが使う言葉は、組織全体のマインドに大きな影響を与えているからです。
※1 『「つながり」を突き止めろ 入門! ネットワーク・サイエンス』(安田雪著 光文社刊)
※2 『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』【2006年4月号】
特集「決断」の科学 ~「意識の壁」が状況判断を曇らせる~
(ダイヤモンド社刊)
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