Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
祈るのではなく、意図的に創る

2011年02月16日

いま、多くの企業は、組織のダイナミズムをドライブさせていきたいと思っています。
私がエグゼクティブ・コーチングを担当させていただいている経営者の方々は、
理想の組織像として、主に次のような組織を挙げていらっしゃいます。
「いままでの枠をぶち壊して、
新たなイノベーションをバンバン起こせるような組織にしたい」
「言われたことを受身で行動するのではなく、
自律した主体的な社員の集まった組織にしたい」
「自分のことで精一杯で他人に興味を持たない組織ではなく、
お互いに関心を持ち、指摘をしあう刺激的な組織にしたい」
ところが、そうした理想のダイナミズムへとドライブさせていくリーダーは足りているのか、
と彼らにうかがうと、ほとんど方が「全く足りていない」と、おっしゃいます。
皆さんの会社や職場ではいかがでしょうか?
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ある大手通信システム企業の経営者の方はこう嘆いています。
「先日、本部長をはじめ部長、課長、幹部を集めて合宿を行いました。
そこで、ある課題について部門ごとに検討させたのですが、
そのときは、各本部長がきちんと仕切って、議論を交わしていたんです。
しかし、その後、本部長クラス、部長クラス、と階層別に分けて議論したとき、
驚くべき現象が起きました。
仕切ろうとする者が一人も出てこなかったんですよ。たったの一人も...。
下を向いたり、譲り合ったり、挙句の果てには『お前がやれ』と新任に押し付けたり...。
呆れたというより、この先の危機感を感じましたね」
また、ある大手金融企業の経営者は、こんな場面に遭遇したそうです。
次世代幹部候補対象のリーダーシップ強化トレーニングの開会に先立ち、
挨拶をしたときのこと。
「君たちの中で、リーダーになりたい人は手を挙げて!」と聞いたところ、
参加者が20名いたにもかかわらず、一人も手を挙げなかったそうです。
このような状態で、組織は理想のダイナミズムにたどり着くのでしょうか?
このような状態で、組織は世界と互角に戦うことができるのでしょうか?
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私のクライアントだけでなく、
日頃、お話をさせていただく経営者の方々は、口々におっしゃいます。
「そもそも、いままでは、そういうリーダーが育つ環境があった。
たとえば、昔は、いまよりも牧歌的。多少の失敗があっても許される環境だった。
それに、しっかりと階層化されていて、
少し上の人たちのやることをモデルにすることができた。
でも、最近は、フラットな組織ゆえに『メンバー』としての時期が長く、
ある日を境に、いきなり大人数の部下をもつようになる。
また、かつては社内旅行、飲み会、運動会、部活動、寮生活などの中で、
仕事以外にもリーダーシップを鍛えられる場面があった。
でも、いまは、それもない。横のリーダーシップを鍛える場面がほとんどない。
それなのに、いきなり仕事の場面でリーダーシップの発揮を求められるわけだから、
尻込みするよね。
当然、課長を集めて、
『部門横断型のプロジェクトをやるから、リーダーになりたい奴いるか?』
と聞いても手が挙がるようなことはない。
いま、昔のように『自然発生的にリーダーが生まれる』なんて、
期待してはいけなくなっているんだよな...」
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多くの経営者が危機感を持っていることの一つは、
「現在、日本にはリーダーシップを自然に鍛えてくれる環境が激減している」ということ。
自然発生的にリーダーが生まれることを祈るのではなく、
意図的にリーダーシップを鍛えるストラクチャーを開発していくことが急務になっています。
コーチング研究所LLPがかつて行ったリサーチ(対象:WEEKLY COACH読者)によると、
「あなたの会社に、次期リーダー候補のリーダーシップを育成する構造はありますか?」
の問いに対して、「Yes」と答えた方は26%にとどまっています。
皆さんの会社は、そういうリーダーを育成、開発するストラクチャーをお持ちですか?
そして、その仕掛け、仕組みで、真のリーダーは、意図通りに生まれていますか?
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