Coach's VIEW

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垣根を越えるリーダーシップの開発

先日、ある国内大手メーカーの人材開発部長とお話をする中で、
次のような問題意識を伺いました。

「拠点長として豪腕を振るっていたリーダーが、役員になった後、
 そのポジションのリーダーとして期待通りに務まっている割合は、
 厳し目に見て、およそ10人中1人程度、と弊社では評価されています」

ポジションの変化に伴って、
求められるリーダーシップスタイルが変化していることに対し、
リーダーたちが十分に順応しきれていない、とのことでした。


順応しきれていない要因として、
より詳しくお聞きする中で明らかになってきたことは、
リーダーが直面する下記のような「変化」でした。

1・自組織の利害追求ではなく、各組織の「垣根」を越え、
  利害を統合する役割へと変化すること

2・その結果、リーダーシップを発揮する対象が、
  垂直方向の関係から水平方向の関係へと変化すること

3・そして、必要なリーダーシップのスタイルが、
  指示・率先垂範型から理解・協調型へと変化すること

これらは、リーダーシップの発揮対象が、縦から横へと拡がりを持ち始め、
それに伴い、要求されるリーダーシップの発揮スタイルが変わることを
示唆しています。

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リーダーシップ研究と教育を目的に設立され、
米国を中心とするビジネス界で常に高い評価を受け続けている
Center for Creative Leadershipは、
2年間にわたる128名のシニアエグゼクティブ達に対するリサーチに基づき、
次のような指摘をしています。

「世界は、ますます複雑に、相互依存になってきており、
 リーダーシップにおいても、
 従来の『管理し、境界を守るリーダーシップ』から、
 『垣根を越えた(boundary spanning)リーダーシップ』
 への移行が求められている」


また、調査対象のシニアエグゼクティブ達の97%は、
直面している今日的な経営課題に対するソリューションは、
以下の「5つの垣根の交差点」にあると認識していました。

 ・「縦(vertical)」の境界
 ・「横(horizontal)」の境界
 ・「ステークホルダー(stakeholder)」の境界
 ・「人口動態的な(demographic)」の境界
 ・「地理的(geographic)」の境界


さらに、この調査では、

「組織の課題の多くは、中間管理職が
 『グループ内部的思考(within-group mindset)』から、
 『境界を越えた(boundary spanning)』、
 『グループ間思考(cross-group mindset)』
 への移行に失敗したときに起こっている」
 
ということを指摘しています。

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では、こうした「垣根を越えるリーダー」には、
どのような能力が必要となるのでしょうか?

この点について、前述のCenter for Creative Leadershipは、

『より高いビジョンあるいはゴールのために、
 方向性を創り出し、連携を創り出し、
 垣根を越えてコミットメントを創り出す能力』

との定義を提案しています。


この定義を参考にするならば、
「垣根を越えるリーダー」は、「自部門の成功による功績」よりも
「他部門とのシナジーによる功績」によって評価される必要がある、
と考えることができそうです。

また、他部門とのシナジーを生み出すための関係能力、対話力として、
「他人を会話に引き入れ、注意深く聞き、
 聞いたことを新たなビジョンに反映させる力」
も要求されている、と考えることができます。

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1992年に米国にて出版され、その後世界17カ国にて翻訳されたベストセラー、
『Leadership and the New Science』の中で、
著者のMargaret J.Wheatley氏は、下記のような興味深い指摘をしています。

「従来の組織図は、境界のはっきりした四角い枠を結ぶ線で埋め尽くされている。
 その線を、反応チャネル、
 つまりエネルギーが他のエネルギーに遭遇して新しい可能性を
 創出する場所、として考えることは大進歩かもしれない」

つまり、リーダーは、垣根を越えるからこそ、
創造のチャンスにめぐり合うことができるのです。

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そこで、私共は、「垣根を越えるリーダーシップ」を開発するため、
提供するソリューションのプロセスの中に、下記の要件を整えています。

●同じ目的に向かって、
 異なる利害を持ったステークホルダー達と関係を構築する構造を組み込むこと

●それらのステークホルダーから、
 定期的にフィードバックを受け取る仕組みが存在すること

●リーダー達が、国境、企業の境界を越え、
 ボーダーレスに意見交換できる場が用意されていること


発揮すべきリーダーシップが、ボーダーレスに垣根を越えていく以上、
リーダーシップ開発のストラクチャーにも、ボーダーレスな要素が必要です。

「リーダー間に『垣根を越えた関係』が構築され、
 リーダーが常に『垣根を越えた情報に触れる機会』があること」

それこそが、これからのリーダーシップ開発において、重要視されるポイントだと、
我々は考えています。

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 【参考文献】
 ・『Boundary Spanning Leadership』
  Mission Critical Perspective from the Executive Suite
  Organizational Leadership White Paper Series
  Copyright 2009 Center for Creative Leadership
 ・『Leadership and the New Science』
  (リーダーシップとニューサイエンス 著マーガレット・J・ウィートリー)
 ・『The Leadership Pipeline』
  (リーダーを育てる会社 つぶす会社 
   著ラム・チャラン、ステファン・ドロッター、ジェームス・ノエル)

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