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海外駐在員のリーダーシップ

海外駐在員のリーダーシップ | Hello, Coaching!
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企業のグローバル化に伴って、海外現地法人の業績向上、そしてそれを牽引する駐在員のリーダーシップの向上は、各企業にとって最重要課題のひとつになりつつあります。

一方、グローバル人材の不足は深刻で、海外赴任経験が浅い、または、全くない方が赴任するケースは年々増えています。

また、海外に駐在する際に職級が1~2段階上がる、いわゆる「ポジションインフレ」、つまり課長や部長職の方が現地法人では組織のトップになるなどのケースも、相変わらず多く見られます。突然、今まで経験したことのないレベルのマネジメントをアサインされるのです。

現在、私は主に中国関連の仕事をしていますが、数が加速度的に増えている中国の駐在員の方々のパフォーマンスやリーダーシップの向上の要請は、さらに高まってきていると感じます。

『Halfpats: the New Expatriates, 2006』(Hahn,2006)によると、中国における駐在の失敗率(※)は、33~80%。

駐在が最も成功している企業でも、1/3は失敗、あるグローバル企業では「駐在員の20%しかアサインメントを完了できていない」という報告もあり、中国での駐在の失敗率は、他の地域に比べておよそ2倍と言われています。

※「駐在の失敗率」...予定された任期を全うできないというケースのみならず、生産計画の遅れ、拠点立ち上げの遅れ、現地スタッフや現地の外部組織との関係構築の失敗、企業イメージの低下、機会損失、次期リーダー育成失敗、帰任後のパフォーマンス低下、帰任後の離職などの事業上の失敗を含む。


コーチ・エィでは、昨年、上海・シンガポール・ニューヨークに拠点を立ち上げ、日本企業の海外現地法人のリーダー(日本人駐在員・現地社員含む)に対して、コーチングを基軸としたリーダーシップ開発を行っています。

その中でも今回は、中国での我々の取り組みについていくつかご紹介したいと思います。

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先月、ある工場の総経理(社長)として、中国人ばかりの組織に日本人ただひとりで赴任され、1年ほど経過されたというAさんと上海でお会いしました。

その語り口はとても穏やかで、赴任は順調かのように思えました。

しかし、具体的にお話を伺っていくにつれ、Aさんの口が徐々に重くなっていくのが明らかに見て取れます。

・実は、中国人の部下たちとの信頼関係が十分構築できていない
・信頼できると思っていたラインから事故の報告が上がらず、後で発覚して驚いた
・中国人の部下になかなか権限が委譲できず、結果、悪循環になっている
・本来やるべき中長期的な取り組みについて、考える時間がない

など、様々な課題をお持ちのようです。

その課題について、誰にも相談できず、日々悶々とされ、総経理という立場にもかかわらず、モチベーションの維持にさえ苦労している、とのことでした。

この日、私はAさんから、日ごろ駐在員仲間とも話せないようなご自身のお仕事の話を1時間ほどお伺いしました。

その後のAさんの晴れやかな顔を見ただけでも、普段、どのような思いを抱えて業務に取り組んでおられるのかがうかがい知れます。こうしたお話は、何もAさんに限ったことではなく、多くの駐在員の方々からお聞きすることです。

しかし、たとえこのような状況の中でも、事業の成果を上げている方々は確実にいらっしゃいます。そうした方々の中には、コーチをつけることによって成果を手にする方が少なくありません。

近年の我々の取り組みから、二つほど事例をご紹介します。

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日々の業務に忙殺され、
ビジョンに向けた具体的なプロセスを描けていなかった総経理Bさんのケース
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あるメーカー販社は、業績好調で、特に大きな問題もなく展開していました。

一方、中国現地法人では、営業基盤を磐石にし、さらに拡大するため、営業機能の現地化推進(中国人を営業の要職に登用していくこと)を重要な課題に挙げていました。

しかし、日々、緊急な課題に対処することに忙殺されていた総経理Bさんは「3年かけて現地化を推進していく」という、漠然としたビジョンしか描けていませんでした。

そこで、弊社のコーチは、Bさんの現地化推進の計画、つまり「誰をいつどのポジションにつけるのか」、また「それをどのように統括会社に認めさせるか」などを具体化し、さらにそれらを実行するプロセスをコーチしていきました。

現在、現地化の計画は順調に進んでおり、それに伴い、受注も想定以上に伸びているようです。


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権限を委譲できずに、
週末も休みなく仕事をしていた工場長Cさんのケース
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中国人ばかりの工場に工場長として日本人ひとりで赴任されたCさんは、もともと技術の専門家でマネジメント経験はほとんどありませんでした。

中国人の部下たちになかなか権限を委譲できず、多くの仕事を自分でやり、週末も休みなく仕事することでなんとか業務を回していました。

そこでコーチは、Cさんが「自分でやるべきこと」「任せるべきこと」「自分が得意なこと」「放置しがちなこと」などを整理し、実際に誰に何を任せるかをコーチしていきました。

徐々に権限を委譲していくことで、高かったストレスも軽減され、今ではコーチングのテーマも、多方面からの情報収集やそれに基づいた中期計画の策定となるなど、次のフェーズに入っているそうです。

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彼らが抱えている課題は、決して海外駐在員特有のものではなく、国内でも十分ありうることです。ただ、海外という異なった環境の中で、新しいマネジメント領域に取り組まなければいけない駐在員の方々にとっては、「必要なことを明確にして実行すること」に意識を向けることは、特に重要だと言えるでしょう。

そして、その取り組みは、日々の緊急課題に忙殺されずに、リーダーシップを発揮し、事業の成果を出すことにつながっていくのです。

「33~80%」という中国における駐在の失敗率。

この数字を悲観するのではなく、成果を出して帰任される駐在員リーダーをひとりでも多く増やしていく。

それによって、私たちは、これからも、日本企業の海外での活躍に貢献したいと思っています。

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