Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


「始める」前に、まず「終わらせ」ていますか?

4月から新年度を迎える企業では、
今年も新任リーダーが誕生することと思います。

そのような「職位や役割の移行」=「トランジション」は、
私たちのビジネススタイルに、意識や行動のシフトを強く求めてきます。


かつて、私がコーチをした、ある会社の経営企画室長は、
自身が企画したM&Aを実現させた後、
思いがけず、その海外子会社のトップに就任することになりました。
 
就任後、こう語っていたことを覚えています。

「今までは、なじみのある会社の中で、
 戦略を練って、経営層に案を提示していたが、
 今はまったく違うカルチャーの中で、
 違う能力やスタイルが求められているのが分かる。
  
 でもそれが何なのか分からず模索している、
 というのが正直な想いです」

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米国Corporate Executive Board社 Recruiting Roundtable
が行ったリサーチによると、回答した新任リーダーの89%が、

「新しく就いたリーダーとしての職務を遂行するための知識や必要なツールを、
 今現在、十分に備えていない」
  
と答えています。

また、別のリサーチでは、143名の人事担当者のうち、87%の人が、
 
「トランジションは、
 マネジャーとしてのプロフェッショナルキャリアの中でも
 最もチャレンジングなとき」
  
と答え、同時に70%の人が、
 
「トランジション期の成否が、その後すべての成否に関係してくる」
 
とも回答しています。

 
こうした流れから、
本来持つリソースを最大化させ、
より早くその職務を全うするため、
トランジションの際、コーチをつけるエグゼクティブが、
今、国内外問わず増えてきているのです。

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コーチは、新任リーダーが
リーダーへの移行過程で出会っていく困難や挑戦を
自らの力で乗り越えていけるようサポートします。


では、トランジションを成功に導くため、
最も大切なポイントは何でしょうか?

 
それは、「何を終わらせ、何を始めるか」という
意識・行動のシフトです。
 
 
トランジションとは本来、
ある状態が終わり、別のある状態がスタートすることを意味します。

しかし、新しい環境におかれたとき、
私たちは、ついつい「始める」ことに目が向いてしまうものです。
 
実際、トランジションの研究家である
ウィリアム・ブリッジも次のように指摘しています。

「多くの人が、スタートのことばかりに意識がいき、
 一体何を終わらせるかへの意識が乏しい」

例えば、
 
「昇進したにもかかわらず、それまで同様、
 現場のプレイヤーとしての視点や活動を繰り返してしまうケース」
  
などがこれにあたります。

また、そのトランジションが大きいものであればあるほど、
人は「終わらせる」から「始める」へとスムーズに向かうことができず、
途方にくれたり、空虚感に襲われたりもします。


そこで、まずは、その「宙ぶらりんな」状態を
いち早く脱却しなくてはなりません。

それには、新任リーダーが組織を前進させるうえで
すでに有しているリソースを明確にすると同時に、
「終わらせること」を明確にしていくコーチング、
すなわちトランジション・コーチングが機能します。


以下は、私が担当したトランジション・コーチングの一例です。

自身がトップセールスの記録を持つ、ある事業部長が、
事業全体の統括役員に昇進することになりました。
 
その際、私たちが明確にした「終わらせること」は、次の3つ。

「何でも自分でやってしまうこと」を終わらせる
「部下の仕事の細部にまで口出しすること」を終わらせる
「自部門の業績のみ考えること」を終わらせる


一方、新しく「始めること」は、次のことでした。

「部下に任せること」を始める
「部下を次期リーダーとして育てること」を始める
「他事業や他人の成功を喜ぶこと」を始める


あえて、「終わらせること」を明確に言語化したことで、
その役員の方は、「宙ぶらりん」状態をスムーズに通過。

「始めること」に意識を集中できるようになった結果、
役員として求められているミッションにまい進していったのです。

明後日から新年度が始まります。
 
もし、あなたが、新任リーダーならば、
リーダーとしてまず何を終わらせますか?

〔参考資料〕
1)"New Leaders Should Start New Year with Transition Coaching"
   CareerSmart Advisor, January 24, 2005, www.execunet.com

2)William Bridges Transitions:Making Sense of Life's Changes

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