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人の行動は、『問い』の方向に流れていく
2011年04月20日
東日本大震災から1ヶ月。
私は、この1ヶ月間にお会いした経営者やリーダーをはじめとした様々な方に、次のような問いかけをしてきました。
「地震が起きた瞬間から、現在に至るまで、自分自身の頭の中に流れた『問い』には、どのようなものがありましたか?」
地震が起こった瞬間に一番多かったのは、
「えっ、大丈夫か?」
「ここは、安全か?」
といった問いでした。まずは、自らの安全を確保しようとするための「問い」が流れるようです。
その直後から、首都圏を中心に、交通機能が完全に麻痺しました。お会いした経営者やリーダーの方は、首都圏にお住まいの方が多いことから、
「電車はいつ動くのか?」
「今日は、家に帰れるのか?」
こうした「自分」を中心とした「問い」が、しばらくは頭の中を占拠したとのことです。
ここまでは、皆さん、比較的同じような回答をいただきました。
この後からです、大きな違いが生まれてくるのは。
様々な方からお話を伺った結果、この後の「問い」の内容が人によって全く異なっていたのです。
また、その違いが、その後の、その方や組織の行動に、大きく影響していくことも分かりました。
たとえば、ある企業のリーダーは、東京にある高層ビルの会議室にて被災しました。
ホワイトボードが壁から落ち、窓際にあった電話は地面にたたきつけられました。窓から見える近隣の高層ビルは、自分のいるビルとぶつかりそうになるほど、大きくしなっていたそうです。
これまでに体験したことのない揺れに、身の危険を感じるリーダー。
よって、はじめに生まれた「問い」は、やはり、
「大丈夫か?」
「ここは安全か?」
だったそうです。
しかし、揺れがだんだんと落ち着いていく中で、頭を流れる「問い」が瞬時に変わっていきました。
「家族は大丈夫か?」
「社員や社員の家族は大丈夫か?」
「交通が麻痺するのではないか?」
「社員は無事に帰れるのか?」
「ここでこれだけだから、現地は相当な被害なのではないか?」
「現地の工場は大丈夫か? 支社は?」
「社長、会長はいまどこにいる?」
「関連子会社は?」
「取引先は?」
「週明けの月曜日は営業できそうか?」
「会社が傾くほど最悪な状態を脱するためには?」
etc......。
こうした問いが、一瞬のうちに頭の中を流れたそうです。
実際、このリーダーの会社では、数分後には対策本部が設置され、1時間後には全社員の安否確認がほぼ完了。上記の問いに関連したその他のアクションも、すぐさま取られ始めました。
問いの主語が「自分」だけでとどまるリーダーと、「会社の資産」「ステークホルダー」、さらには、「日本全体」「グローバル」にまで展開するリーダーとでは、その後の行動に大きな差が生まれます。
残念ながら、私がお会いした方々の中には、問いの内容が「自分」にとどまっていた方もいらっしゃいました。「未来」に対する問いではなく、「現状」にとどまっているリーダーもいらっしゃいました。最悪のケースを想定することなく、「まあ、大丈夫でしょ?」と「楽観視点」にとどまるリーダーもいらっしゃいました。
もちろん、その方々の経験値や抱えている責任の範囲、役割によって、生まれる「問い」に差が出てくる可能性はあります。
しかし、本当にそれだけでしょうか。
経験や役割に関係なく、私たちは今回の震災で、「普段からどのような視点を持って、『経営』や『マネジメント』をしているのか」を突き付けられたのではないでしょうか。
「もし、あの後、すぐに『未来』の視点を持てていたのなら、また、『悲観視点』に触れることができていたのなら、きっと、これまで取ってきた行動とは異なった展開になっただろうに......」と彼らも振り返っていました。
皆さんも体感したのではないでしょうか。
自分自身の問いの傾向を。そして、職場のメンバーの問いの傾向を。
人の行動は、問いの方向に流れます。
もし、リーダーもメンバーも、主語が「自分」だけにとどまってしまっていたらどうでしょうか?
「現状」しか、「楽観」しか問いが流れなかった組織は、それなりの動きだったことでしょう。もしかしたら、日に日に悪化する状況に右往左往し、後手に回った1ヶ月だったかもしれません。
しかし、リーダーもメンバーも、普段から、現状に慣れるのではなく、「もっといい状態はないのか」と質の高い「問い」を共有しあっていた組織だったとしたら、どうでしょうか?
きっと、有事の際にも決して思考停止することなく、「今、自分にできることは何か?」という問いが生まれ、また、アクションに移せたのではないでしょうか。
皆さんは、この1ヶ月を振り返ってみて、どんな問いが流れましたか? そして、あなたの組織には今、どのような問いが流れていますか?
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