Coach's VIEW

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新任リーダーの成長にドライブをかける

この時期、新たな組織体制の発表と共に、
多くの新任リーダー達のチャレンジが始まっています。

新任リーダー達の活躍は、「現場の底力」を創り出します。
そんな彼らのいち早い成長と戦力化を期待せずにはいられません。


しかし、ある調査では、

「中間管理職層の新任リーダーが
 "breakeven point"(採算)に至るまでには、
 平均で約6.2ヶ月かかる」(※1)

との指摘があるように、いち早い成長と戦力化は、
一筋縄ではいかないようです。


では、「早期に」新任リーダーのパフォーマンスを採算ラインに乗せるため、
私たちマネジャーにはどのような関わりが求められているのでしょうか?

今回は、新任リーダー達が直面する困難の実態と、
いち早い役割発揮の可能性について、
Development Dimensions International社のリサーチ結果(※2)をもとに、
下記の論点から検討していきたいと思います。

【1.新任リーダーは、そもそも、役割を認識できているだろうか?】
【2.新任リーダーは、適切に動機づけられているだろうか?】
【3.新任リーダーは、一人で抱え込んでいないだろうか?】


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【1.新任リーダーは、そもそも、役割を認識できているだろうか?】


「リーダーとして、何に、どれだけ時間を割く必要があるのか?」

それは、新任リーダー達が直面する、最初の重要な問いかけの一つです。
下記のリサーチ結果から、何が読み取れるでしょうか?

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Q:あなたが最も多くの時間を割いている職務は、何ですか?

・管理、アドミニストレーション業務 (30%)
・戦略の執行 (20%)
・計画・準備 (18%)
・自身の成長・開発 (17%)
・部下との1対1の関わり (15%)
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私自身、初めてリーダーを務めることになったとき、
「最も大事な仕事は何か?」と、上司から尋ねられた記憶があります。

「アウトプットを明確にすること。
 作業項目を洗い出し、スケジュールを引くこと。
 あとは、適材適所です」
 
私の回答を聞いて、上司はこう提案してくれました。

「間違ってはいないが、君の話には、生身の部下が登場しないね。
 
 例えば、明日から朝一番に来て、
 出社する部下一人ひとりの顔色を見てはどうだろうか?
 昨日まで元気だったのに、今日は落ち込んでいる人もいるだろう。
 
 昨日の部下と今日の部下は違うものだ。
 部下をよく観察し、よく関わるのも、
 リーダーとして大事な仕事じゃないかな」


「部下のために時間を使うこと」
「部下を通して仕事を完成させること」
「部下を成功させること」

リーダーとして当然と考えられるこれら役割を見てみても、
新任リーダーにとっては、一種のカルチャーショックとなりえます。


「プレーヤー」から「リーダー」への、思考や役割認識のシフト。

それは新任リーダーの最初のチャレンジ項目の一つであり、
上司として私たちマネジャーが、
彼らをコーチする焦点の一つになるでしょう。


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【2.新任リーダーは、適切に動機づけられているだろうか】

新任リーダーが、リーダーになることを選んだ理由は何でしょうか?

冒頭のリサーチ結果によると、次のような回答が得られています。

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Q. なぜリーダーとしての職位を引き受けたのですか?

・報酬・補償の条件がよい (50%)
・スキルや自分自身の成長 (39%)
・キャリアアップへの唯一の方法 (33%)
・他者を率いたい (23%)
・権力と影響力 (21%)
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「報酬・補償の条件がよい」ことを理由に挙げた方が、
半数に上りました。

ところが、このリサーチ結果には、
次のような指摘が加えられています。

--報酬・補償のアップを望んでリーダーとなった人たちは、
 現実に直面し、落胆する可能性が高い--

--報酬・補償のアップを望んだリーダーは、
 会社や自分自身への貢献を望んでリーダーになった人に比べ、
 約1.6倍の割合で、リーダーの職位を引き受けたことを
 後悔する傾向がある--


この結果から、私たちマネジャーは、

「リーダーとして、誰に対して、何に対して貢献したいのか?」

について、新任リーダーに問い続け、
「動機形成をコーチ」していく必要があるでしょう。

と同時に、新任リーダーに対して、私たちが、

「リーダーであることの意味を、どう理解しているのか」
「リーダーであることは、自分自身の動機形成において、
 いかに関わっているのか」

などについても、共有しておくことが必要かもしれません。


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【3.新任リーダーは、一人で抱え込んでいないだろうか?】

以下は、Corporate Executive Board社によるリサーチ結果です。

「新任リーダーの89%が、
 新しく就いたリーダーとしての職務を遂行するための
 知識や必要なツールを、今現在、十分に備えていない」


では、新任リーダーは、どのように知識やスキル、ツールを
習得しようとしているのでしょうか。

冒頭にご紹介したリサーチでは、次のような結果が出ています。

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Q.あなたが現在持っているリーダーシップスキルの習得について、
 最も影響を与えているのは次のうちどの項目ですか?(複数回答可)

・実践での試行錯誤 (57%)
・マネジャーもしくは上長からのサポート (51%)
・正規の実地トレーニング (40%)
・メンター(マネジャー除く)からのサポート (26%)
・正規の教育・訓練 (22%)
・他組織に所属する専門スタッフ (12%)
・リーダーシップに関する書籍・記事 (10%)
・専門組織や団体 (9%)
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さらに、リサーチでは次のような指摘もなされています。

--「実践での試行錯誤」を選んだマネジャーは、
 「マネジャーもしくは上長からのサポート」のマネジャーに比べ、
 およそ2倍の割合で、マネジャー1年目の経験を
 「ストレスに満ちている」「当惑・困惑」と答えていた--

--「実践での試行錯誤」を選んだマネジャーは、
 その他のマネジャーに比べ、
 自身のリーダーシップスキルに対する自信が欠落しており、
 リーダーとしての士気が低い傾向があった--

教育業界で活躍されている私のクライアントA氏は、
7年間に及ぶリーダー経験から、
今では、多くの新任リーダー達のロールモデルとなっています。

そんなA氏ですが、自身が新任リーダーだった頃は、
自分なりの試行錯誤を続けていたそうです。

しかし、リーダーとしての成長速度にドライブをかける上では、
「自分なりのやり方」に、物足りなさも感じていました。

「リーダーになった重責は強く感じていた。
 しかし、何から手をつけたらよいか、分からなかった」

さまざまな可能性を模索した結果、
A氏は、コーチをつけることを決意したそうです。

「『コーチからの問いかけを通じて、
 リーダーとしての自らの考えを整理し、アウトプットする』
 『そのアウトプットに対して、コーチからフィードバックを受ける』
 こうした繰り返しがあったからこそ、今の自分がある」

A氏は私に、コーチをつけた理由をそう話してくださいました。


新任リーダー達の多くは、直前のプレーヤー時代、
自分だけの力で考え、行動し、解決してきているかもしれません。

しかし、新任リーダーという新たな役割は、
彼らが一人で抱え込むには、あまりに困難なテーマといえます。

私たちマネジャーが、彼らにコーチとして関わることは、
彼らが早期に戦力化するうえで、大きなサポートとなるはずです。


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このように、新任リーダーの前途は、チャレンジの連続です。
しかし、彼らはそれを乗り越える必要があります。

一方で、新任リーダーのマネジャーである私たちに求められるのは、
「新任リーダーの成長にドライブをかけること」ではないでしょうか。


新任リーダーから、いち早く成長と成果を引き出し、
採算ラインに乗せる力、すなわち「コーチ力」を組織がどれだけ備えているか。

それは、企業競争力の重要な一要素と考えることができるでしょう。


【参考文献】
(※1)
"Beyond Sink or Swim"
The Case for Accelerating Leadership Transitions
by Michael Watkins, Chairman of Genesis Advisers
Doug Soo Hoo, Affiliate of Genesis Advisers

(※2)
"Finding the First Rung"
A study on the challenges facing today's frontline leader
 Development Dimensions International, Inc

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