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コーチングは幅広く人材開発に用いられますが、特に「リーダーシップ開発」に適しています。これまでに、「リーダーシップ理論」は、様々な角度から研究されてきました。

その一部を時系列でご紹介します。


リーダーシップ資質論

まず、最も原始的な研究が、リーダーシップ資質論、つまり「リーダーたる人物には何が必要か」というアプローチです。

リーダー行動論

次に注目されたのは、「資質」ではなく「行動」が重要だという説です。大きく「タスク志向型行動」と「人間関係志向型行動」が特定され、この両方が満たされることで、最も高いリーダーシップが発揮できる、というようなものでした。

コンティンジェンシー(状況適合)理論

しかし上記の研究は、リーダーそのものだけに注目し、メンバーその他の要素を考えていません。

「リーダーはひとりでは成立しないのだから、フォロワーを含めた形でリーダーシップを理解する必要がある」という考えが発展しました。

それがコンティンジェンシー(状況適合)理論につながりました。

LMX 理論 

さらに、リーダーとメンバーとの間のやり取り(社会的交換過程)に注目する考え方も発展しました。

LMX (Leader-Member-Exchange)モデルにおいては、同じチームやグループ内でも、「リーダーに近い人達(イングループ)」と、「リーダーから遠い人達(アウトグループ)」がいることに注目し、それぞれのメンバーがリーダーに対してどのような思いを抱いているか、などで、リーダーシップの巧拙が決まるという点に注目しました。

変化型リーダーシップ

この変化型リーダーシップといわれるタイプは、リーダーはむしろ変化のエージェントとしての役割を担うもので、主役は「メンバーを含めたグループ全体である」ことを示唆しています。

つまり、「リーダーがどうあるべきか」ということと同時に、「メンバーがどうあるべきか」ということも考慮する必要がある、と認識されてきたといえます。

また、経営トップなど、いわゆるカリスマ性を要求されるポジションの研究でも、リーダーの特性はさることながら、フォロワーのどのような要素(たとえば感情的な部分等)に影響を与えているか、という視点で研究されるようになってきています。

パワー理論

こういった、リーダー、メンバー、そしてリーダーシップのプロセスを統合的に理解するために、「パワー」という概念を用いた考えが発展してきました。

リーダーシップは、パワーに関するプロセスだと理解するわけです。パワーは、相対的地位から来る権力、知識、報酬を与えることができる能力、恐怖心を与えることができる力、皆に好かれていること、などを指します。とはいえ、リーダーがすべてのパワーを支配しているわけではありません。リーダーよりメンバーの方がある業務の専門知識が高ければ、その人がパワーを所有していることになります。

このパワーは組織内、グループ内に分布しており、うまくメンバー間に分布されると、いわゆる全員参加型のグループ運営も可能です。こういったプロセスは、パワーを握っている人間がパワーを分け与える「エンパワーメント」という行為によって達成されます。

自律型チーム運営に関する研究

特定のリーダーを設けない、自律型チーム運営に関する研究が発達したのも、こうした歴史的背景が関係しています。

自律型チーム運営を実践している組織として、NYに、オルフェウス室内管弦楽団というオーケストラがあります。「指揮者のいないオーケストラ」ということで有名です。オルフェウス室内管弦楽団には「指揮者はいない、しかしリーダーシップがある」。

この「オルフェウス・プロセス」と呼ばれるその組織運営は、企業・組織の運営、リーダーシップ、コミュニティの問題解決といった、音楽を越えたさまざまな分野で注目されています。


どれが正しいリーダーシップ論なのか

これらの研究のうち、どれが正しいリーダーシップ論であるかは定かではありません。

「このリーダーシップ論が正しい」とか、「リーダーとはこういうものだ」ではなく、その組織やその人自身にとって、また状況に応じて、最適なリーダーシップ・スタイルがあります。

「今、自組織に新しいリーダーシップを取り入れるとしたら、考え方として、これらのうち何を入れたいだろうか?」「自分はリーダーとして、今、どのタイプに近いだろうか?」

こうした問いかけにより、あなたの組織やあなたにとって最適なリーダーシップが見えてくるでしょう。しかし、それが分かったとしても、漠然と待っているだけでは、リーダーシップを手に入れたり、新しいリーダーが出てきたりする可能性は低いといえます。権限や役割、立場を与えられたからと言って、リーダーシップが発揮されるわけではないからです。

実際、企業の多くは、変化を起こすために、新しい制度やシステムを導入しています。しかし、数々の研究から、「プランニングされた組織変革の70%が失敗に終わっている」というデータが導き出されているのもまた事実です。

組織の中で働く人の意識やコミュニケーションが変わらなければ、変革の実現は難しいといえるでしょう。

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「組織風土改革を実現させたい」
「ミドル・マネジメントのマネジメント力を強化したい」
「組織が縦割りになっている」
「工場の生産性をアップさせたい」
「海外駐在員向けのロールマッチを早期に実現させたい」

私たちはこれまで、こうした課題を掲げる1,500社を超える企業の組織変革や組織風土改革に関わってきました。各々事情があり、どの企業のどのリーダーにも使える「最適なリーダーシップ・スタイルの開発手法」があるわけではありません。そこでは、やはり個別対応が必要になります。

個別対応とはつまり「interpersonal」

個別対応とはつまり「interpersonal」、1対1の関係でリーダーシップを高める開発手法です。全員に同じことをやっても、結果が同じとは限らない。一人ひとりに関わる、つまり個別対応によって、人は変わりうる。それこそが、コーチングの特徴であり、原点です。

コーチングは、組織論や枠組みではなく、「人」についての知恵をもたらし、現場で実際に遭遇する様々な出来事をテーマにソリューションを見つけ出してゆく、より実践的で具体的な方法です。

組織内でコーチする構造を導入することができれば、一人ひとりの視点が変わり、行動が変わります。社内の雰囲気が変わります。そして、それが一過性ではなく、習慣化し、定着し始めたとき、組織変革を実現させることができるのです。

「組織」の中には、何百、何千という「interpersonal」な関わりがあり、「変革」はその積み重ねであることを私たちは忘れてはいけません。

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【参考文献】

◆『リーダーシップ理論の潮流』 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4716/leadertrend.htm

◆Organizational change capacity: the systematic development of a scale  Copyright Emerald Group Publishing Limited

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