Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


interpersonal

コーチングは幅広く人材開発に用いられますが、
特に「リーダーシップ開発」に適しています。

これまでに、「リーダーシップ理論」は、
様々な角度から研究されてきました。

その一部を時系列でご紹介します。

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■ リーダーシップ資質論

まず、最も原始的な研究が、リーダーシップ資質論、
つまり「リーダーたる人物には何が必要か」というアプローチです。


■ リーダー行動論

次に注目されたのは、「資質」ではなく「行動」が重要だという説です。

大きく「タスク志向型行動」と「人間関係志向型行動」が特定され、
この両方が満たされることで、最も高いリーダーシップが発揮できる、
というようなものでした。

■ コンティンジェンシー(状況適合)理論

しかし上記の研究は、リーダーそのものだけに注目し、
メンバーその他の要素を考えていません。

「リーダーは1人では成立しないのだから、
フォロワーを含めた形でリーダーシップを理解する必要がある」
という考えが発展しました。

それがコンティンジェンシー(状況適合)理論につながりました。

■ LMX 理論 

さらに、リーダーとメンバーとの間のやり取り(社会的交換過程)
に注目する考え方も発展しました。

LMX (Leader-Member-Exchange)モデルにおいては、
同じチームやグループ内でも、
「リーダーに近い人達(イングループ)」と、
「リーダーから遠い人達(アウトグループ)」がいることに注目し、
それぞれのメンバーがリーダーに対してどのような思いを抱いているか、
などで、リーダーシップの巧拙が決まるという点に注目しました。


■ 変化型リーダーシップ

この変化型リーダーシップといわれるタイプは、
リーダーはむしろ変化のエージェントとしての役割を担うもので、
主役は「メンバーを含めたグループ全体である」ことを示唆しています。

つまり、「リーダーがどうあるべきか」ということと同時に、
「メンバーがどうあるべきか」ということも考慮する必要がある、
と認識されてきたといえます。

また、経営トップなど、
いわゆるカリスマ性を要求されるポジションの研究でも、
リーダーの特性はさることながら、
フォロワーのどのような要素(たとえば感情的な部分等)に影響を与えているか、
という視点で研究されるようになってきています。


■ パワー理論

こういった、リーダー、メンバー、
そしてリーダーシップのプロセスを統合的に理解するために、
「パワー」という概念を用いた考えが発展してきました。

リーダーシップは、パワーに関するプロセスだと理解するわけです。

パワーは、相対的地位から来る権力、知識、報酬を与えることができる能力、
恐怖心を与えることができる力、皆に好かれていること、などを指します。

とはいえ、リーダーがすべてのパワーを支配しているわけではありません。
リーダーよりメンバーの方がある業務の専門知識が高ければ、
その人がパワーを所有していることになります。

このパワーは組織内、グループ内に分布しており、
うまくメンバー間に分布されると、
いわゆる全員参加型のグループ運営も可能です。

こういったプロセスは、パワーを握っている人間がパワーを分け与える
「エンパワーメント」という行為によって達成されます。


■自律型チーム運営に関する研究

特定のリーダーを設けない、
自律型チーム運営に関する研究が発達したのも、
こうした歴史的背景が関係しています。

自律型チーム運営を実践している組織として、
NYに、オルフェウス室内管弦楽団というオーケストラがあります。
「指揮者のいないオーケストラ」ということで有名です。
オルフェウス室内管弦楽団には
「指揮者はいない、しかしリーダーシップがある」。

この「オルフェウス・プロセス」と呼ばれるその組織運営は、
企業・組織の運営、リーダーシップ、コミュニティの問題解決といった、
音楽を越えたさまざまな分野で注目されています。

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これらの研究のうち、
どれが正しいリーダーシップ論であるかは定かではありません。

「このリーダーシップ論が正しい」とか、
「リーダーとはこういうものだ」ではなく、
その組織やその人自身にとって、また状況に応じて、
最適なリーダーシップ・スタイルがあります。

「今、自組織に新しいリーダーシップを取り入れるとしたら、
 考え方として、これらのうち何を入れたいだろうか?」
「自分はリーダーとして、今、どのタイプに近いだろうか?」

こうした問いかけにより、
あなたの組織やあなたにとって
最適なリーダーシップが見えてくるでしょう。

しかし、それが分かったとしても、漠然と待っているだけでは、
リーダーシップを手に入れたり、新しいリーダーが出てきたりする
可能性は低いといえます。

権限や役割、立場を与えられたからと言って、
リーダーシップが発揮されるわけではないからです。


実際、企業の多くは、
変化を起こすために、新しい制度やシステムを導入しています。

しかし、数々の研究から、
「プランニングされた組織変革の70%が失敗に終わっている」
というデータが導き出されているのもまた事実です。

組織の中で働く人の意識やコミュニケーションが変わらなければ、
変革の実現は難しいといえるでしょう。

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「組織風土改革を実現させたい」
「ミドル・マネジメントのマネジメント力を強化したい」
「組織が縦割りになっている」
「工場の生産性をアップさせたい」
「海外駐在員向けのロールマッチを早期に実現させたい」

私たちはこれまで、
こうした課題を掲げる1,500社を超える企業の組織変革や組織風土改革に
関わってきました。

各々事情があり、どの企業のどのリーダーにも使える
「最適なリーダーシップ・スタイルの開発手法」
があるわけではありません。そこでは、やはり個別対応が必要になります。

個別対応とはつまり「interpersonal」、
1対1の関係でリーダーシップを高める開発手法です。

全員に同じことをやっても、結果が同じとは限らない。
一人ひとりに関わる、つまり個別対応によって、人は変わりうる。
それこそが、コーチングの特徴であり、原点です。

コーチングは、組織論や枠組みではなく、
「人」についての知恵をもたらし、
現場で実際に遭遇する様々な出来事をテーマにソリューションを見つけ出してゆく、
より実践的で具体的な方法です。

組織内でコーチする構造を導入することができれば、
一人ひとりの視点が変わり、行動が変わります。社内の雰囲気が変わります。
そして、それが一過性ではなく、習慣化し、定着し始めたとき、
組織変革を実現させることができるのです。


「組織」の中には、何百、何千という「interpersonal」な関わりがあり、
「変革」はその積み重ねであることを私たちは忘れてはいけません。

【参考文献】

◆『リーダーシップ理論の潮流』
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4716/leadertrend.htm

◆Organizational change capacity: the systematic development of a scale
 Copyright Emerald Group Publishing Limited

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