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最高レベルの業績達成とフィードバックループとの関係

最高レベルの業績達成とフィードバックループとの関係 | Hello, Coaching!
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フィードバックなくしては、いかなる学習も円滑に進みません。

話すこと、歩くこと、自転車に乗ること、楽器を演奏すること......、すべてにおいて、学習は進まなくなります。

人が学習し、成長していくためには、「理想の状態と比較して、自分の行動が今、どのような状態なのか」といった具体的な情報が必要です。


たとえば、あなたが、100メートルを何本も走るとします。

そのとき、タイムを測定しない状態では、モチベーションの維持は難しいでしょう。一方、毎回ストップウォッチで測定し、「今回は何秒だった」「さっきより0.05秒縮まった」となれば、モチベーションも当然高まるでしょうし、少しでもタイムを縮めるために、努力や工夫を重ねるはずです。

では、職場においては、どうでしょうか。

私たちは、最高レベルの業績を上げるために必要とされるフィードバックを日々受け取っているでしょうか? また、そのフィードバックはどのくらい機能しているでしょうか?

各種業績指標
顧客満足度
従業員満足度
企業風土診断
リーダーシップ360度アセスメント
など。

上記は、組織において一般的に測定されているフィードバックの一例です。「うちも測定しているし、その重要性も分かっている。しかし、機能しているかといわれると......」ということはないでしょうか。

フィードバックなくして、組織もそこで働く人も成長はない。その事実は、誰しも納得のいくところです。しかし、組織内で、効果的にフィードバックがなされるループが構築されているか、というと、私の知る限りまだまだのようです。

そもそも、効果的なフィードバックには、主に3つのポイントがあります。

1.理想の状態と比較して、現状がどうなっているのかが明確であること
2.次にどういう行動を起こしたらいいのかが、はっきり分かること
3.即座に、頻度高く提供されていること

特に3つ目の「即座に、頻度高く」は重要です。

先ほど挙げた「顧客満足度」「従業員満足度」などの各種フィードバックの材料は、一般的に、測定後、フィードバックを受けるまで、少なくとも1ヶ月はかかります。また、頻度もそれほど高くなく、おおむねどの企業でも、年に1回程度といわれています。

この事実を、先ほどの100メートル走でたとえると次のようになります。

ストップウォッチでタイムを測定する。走り終わった後、「いま、何秒だった?」と聞く。「うーん、今のタイムが何秒だったかは、1ヶ月後に伝えるよ」。

......これでは、お話になりませんよね。

行動とフィードバックとの間にタイムラグがあればあるほど、行動と結果のリンクが弱まり、将来の行動に反映しにくくなります。だからこそ、フィードバックは、行動をとった後、即座にあることが望ましいわけです。

私たちは、スポーツや一般的な学習の中では、毎回、毎回、小刻みに自分の成長に関するフィードバックを受けてきているので、その重要性は十分に実感しています。

にもかかわらず、今、職場で構築されているフィードバックループの多くは、「即座に、頻度高く」とはあまりにもかけ離れた状態になっているのです。

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以下、某金融機関のA支店での「職場活性化活動」で実際に行われた話です。

彼らの職場での「従業員満足度」「顧客満足度」「目標達成度」は、40支店中23位から、8ヶ月における活動を経て、いずれの指標も首位に躍り出ました。

その秘訣は何だったのか。

彼らにそのポイントを聞いていくと、いくつか重要なポイントが見えてきました。

その1つは、「『職場の状態が今、どんな状態であるのか』というフィードバックを、即座に頻度高く、手にできるよう心がけた」こと。

自分たちの職場の理想的な状態を職場全員でイメージし言語化し、それをアンケート化し、全員で自分の職場を自己評価する。自己評価は、期間中、5回も実施されました。

測定したデータはグラフで見える化され、改善された項目が一目で共有化される。まだ改善が必要とされるところに対しては、皆で集中的に取りかかる。

こうした「測定→フィードバック→行動→測定......」のサイクルを高速回転させていったことが勝因の1つだったそうです。

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組織における活動時だけでなく、私たちは、エグゼクティブコーチングの際にも、良質なフィードバックループの構築に努めます。

クライアントである経営者の多くは、実のところ、現場で何が起きているのか、リアルな情報が入りにくくなってしまう現象に遭遇しています。

現場では泥水だったものが、何階層か経ることによって、トップに届くころには、まるで清水のような形で上がってくることなど、日常茶飯事です。

また、先ほどの「従業員満足度」「顧客満足度」「企業風土診断」といった指標などは、通常は年に1回という頻度で、かつ、鮮度を失ったものがほとんど。

その指標を手にする経営者は、「この飛行機の操縦席の各種計器は、1年前に計測してからほとんど動いていない状態です。でも、恐らく機体に問題はないと思いますので、頑張って操縦してくださいね」と言われているようなものです。

皆さんの組織では、最高レベルの業績を上げるために必要とされるフィードバックループを、どのように構築していますか?

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