Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
イノベーション
コピーしました コピーに失敗しましたとある調味料メーカーの話です。
製造・販売している調味料のうちの1つが、売上低下という事態に陥りました。
そこで、マーケティングや営業の優秀な人材を集めて社内会議が行われ、「どうしたら売上を上げられるのか?」を徹底的に話し合ったそうです。
検討されたいくつかのアイデアは、実行に移されました。しかし、売上はなかなか伸びなかった。
その後、ある女性社員がイノベーティブなアイデアを提案しました。そして、そのアイデアを実行した結果、実際に売上が倍増したのです。
いったいこの女性社員は、どのようにこのアイデアを生み出したのでしょうか?
現代は、常に革新的なクリエイティビティやイノベーション(※)が求められています。そして、リーダーは、組織にクリエイティビティやイノベーションをもたらす存在です(※ここでいう「イノベーション」とは、新しいものや捉え方や活用方法を創造することで、新たな価値を生み出して、社会を変化させていくことを意味します)。
ボストン・コンサルティング・グループが2010年に実施したリサーチによると、72%のエグゼクティブが、リーダーに最も必要な能力として、「イノベーション」を挙げました。
そして、「『イノベーション』に注力した組織は、そうでない組織に比べ、最大で6倍の株主利益率をもたらしている」と報告しています。
それでは、組織にクリエイティビティやイノベーションをもたらすため、私たちはどのようなことを意識していけばいいのでしょう。
イノベーター研究で有名な、ブリガム・ヤング大学経営学部のジェフリー・ダイアー教授たちは、イノベーターの要素として、5つの要素を導き出しました。
そのうちの1つとして興味深いのが、「問いかけの力」です。
さらにいえば、「どのように」といった問いよりも、「仮に」や「なぜ」という問いのほうが、イノベーティブな思考を引き起こすのに効果的であるそうです。
「現状を少しだけましにする『どのように』という問いでは、小さな改善に向かってしまう可能性が高い。大きな変化につながるのは『仮に』や『なぜ』が効果的だ」
ダイアー教授たちは、『The Innovator's DNA』という論文の中でそう述べています。
私がコーチさせていただいている、あるメーカーの開発部長は、定期的にさまざまな階層や部署のメンバーを5~6人集め、新商品開発の会議を実施しています。
その会議の名前は「もしも会議」。
「もしも~こんな商品があったら世の中はどうなるだろう?」と、必ず冒頭に「もしも~」をつけて、問いかけを作るというルールです。すると不思議なことに、発想がより自由になり、様々なアイデアが飛び交うようになる。結果、ヒット商品が生まれるのだといいます。
先の調味料メーカーの女性社員も、アイデアを出す際、問いかけの力を利用しました。彼女の問いかけは、「どうしたら売上が上がるか?」に始まり、「なぜ、売上が伸びないのか?」「早く売れるためにできることは何だろう?」と変化していきます。
そして、最後に出てきたのが、次の問いかけでした。
「仮に、調味料の穴が2倍の大きさになったら、どうなるんだろう?」
このアイデアが、売上倍増につながったのです。
「仮に」と「もしも」は、私たちがイノベーションを生むための、魔法の問いかけなのかもしれません。
【参考・引用文献】
1."Global Leadership Forecast 2011"
Development Dimenstions International, Inc., MMXI, Allrights Reserved.
2."The Innovator's DNA"
Jeffrey H.Dyer,Hal Gregersen, and Clayton Christensen.
Harvard Business Review 2009 3.
3.『アイデアのヒント』 ジャック・フォスター著
阪急コミュニケーションズ刊
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。