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あえて立ち止まってみる

あえて立ち止まってみる | Hello, Coaching!
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東日本大震災以降、日本企業は、大きな転換期を迎えています。

事業の選択と集中、M&A、グローバル化など、国内外問わず、市場を広げていく動きが加速度的に高まっています。

たとえば、グローバル化においては、将来のグローバル人材となる若手に、海外経験を積ませるための派遣、海外への統括機能移転、外国人の採用などが、急ピッチで進められています。

とはいえ、加速度の増すグローバル経済の中、各企業は果たして本当に、将来を見据えた戦略をもって取り組んでいるでしょうか? 「他の企業もやっているから」と右に倣えで進めているようなことはないでしょうか?

今回は、中国拠点におけるタレントマネジメント強化を題材に、今後のビジネスを、「本当の意味で」加速させていくためのポイントについて考えていきます。


タレントマネジメント強化が、グローバル企業の業績に大きなインパクトを与えることはすでに周知の事実です。

実際、世界最大規模の人材コンサルティング会社であるDDIが、2009年12月から2010年6月にかけて行った中国の企業542社(外資系54%、国営11%、私企業35%)を対象にした次の調査結果においても、タレントマネジメントへの注力とビジネスインパクトに相関関係があることが示されています。


以下は、タレントマネジメント(HRシステムの統合性、ソフトウェアのケイパビリティ、人材戦略、エグゼクティブのサポートレベル、人材戦略を実践するマネージャーのスキルレベル)の成熟度と組織のパフォーマンスの関係である。

「競合他社との比較で、パフォーマンスが高いとされた企業の割合」

タレントマネジメントの成熟度  高い企業    低い企業
・従業員の質の維持        43%      22%
・従業員のコミットメント     42%      25%
・リーダーシップの質       44%      12%
・従業員満足度          39%      21%

また、ビジネスパフォーマンス(商品サービスの品質、財務パフォーマンス、生産性)が高い企業(120社)のタレントマネジメントの成熟度は、平均で4.4(5段階評価)。

一方で、ビジネスパフォーマンスが低い企業(63社)のタレントマネジメントの習熟度は、平均2.9となっている。


この結果から、ビジネスを加速させていく上では、タレントマネジメントに、より一層力を入れていく必要があること、具体的には、駐在員やローカルマネージャーの育成、現地法人の現地化推進などが必要であることが挙げられます。

とはいえ、こうしたインパクトが明確になっていながら、一方で、なかなか踏み込みきれていない企業が多いのも事実です。

では、これらを妨げる要因はいったい何なのでしょうか?


私たちコーチ・エィのコーチングでは、リーダーや組織の目標達成に向けて、まず環境や状態を明らかにし、そのプロセスにおいて、「すでにできていること」「できていないこと」を整理します。それによって、今、リーダーや組織の目標達成において、本当に必要なものは何かを洗い出していきます。それは、からまった糸を解いていく作業に似ているかもしれません。

そして、そのためのツールの1つが「アセスメント」です。

私たちはこれまで、中国拠点のリーダーや、中国に進出されているグローバル事業のリーダーを数多くコーチさせていただいています。その過程において、「ローカル人材の育成と登用を推進する」というゴールが設定された際、「その実現のために必要なことは何か」を必ず言語化してもらっています。

以下、言語化された項目をもとに、簡単なアセスメントを用意しましたので、自社に当てはまるものをチェックしてみてください(このアセスメントは、中国またはアジアの現地法人を想定しています)。


□ いつまでに、トップをローカル人材にするかというゴールが、現地法人と本社で共有されている
□ ローカル人材を育成、登用することについて、本社が一枚岩である
□ 将来の組織構想のビジョンが現地法人にも伝達されている
□ ローカル人材育成のための仕組みが備わっている
□ 重要な仕事を任せられる優秀な人材を採用している
□ 優秀な人材が、退職することなく社に残っている
□ 現地法人と本社のやり取りが日本語ではなく、英語または現地の言葉で行われている
□ 人事制度は、ローカル社員にとってフィットしたものになっている
□ 現地法人での日本人経営層とローカル社員とのコミュニケーションが円滑である


いかがでしょうか? あなたの企業のタレントマネジメント強化の課題は見つかったでしょうか。

このように、アセスメントは現状を棚卸しするのに有益なツールです。

もし今、「事業や取り組みにスピード感が足りない」と感じられる場合、あえて立ち止まって、自社や自部署のゴール達成のためのアセスメントを作ってみてはいかがでしょうか?

本当に必要なタスクを、客観的な指標に基づいて、メンバー一人ひとりの視点から洗い出すことで、新たな気づきや阻害要因が見つかるかもしれません。

加速度の増すグローバル経済だからこそ、その波に遅れを取らないようについていくだけでは、いつしかそのスピードに振り落とされてしまいます。

今こそ、自社における課題を再度見つめなおし、自組織にとってのグローバル化を進めていくことが、求められているといえるでしょう。

あなたの会社のパフォーマンスを最大化するために、今、本当に必要なものは何ですか?

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