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「企業を存続させるために、今ほどイノベーションが求められている時代はない」。

私がエグゼクティブ・コーチングをさせていただいているクライアントの方の多くは、そう声高に訴えます。

米国DDI社が今年発表したグローバル・リーダーに関する最新のリサーチ(世界74ヵ国、1,897人のHRプロフェッショナルと12,423人のリーダーが対象)によると、「リーダーに今後3年間で最も必要になるであろう能力は何か?」(複数回答可)という問いに対して、35%の方が「クリエイティビティとイノベーションを育てるスキル」を挙げています。

また、「リーダーに最も欠けているスキルは何か?」(複数回答可)という問いに対しては、回答者数トップの50%の方が同様のスキルを挙げています。

これらのリサーチ結果からも、今時代はリーダーに、イノベーションを求めているということがいえるでしょう。

それでは、リーダーがイノベーションを発揮するためには、どのような方法があるのでしょうか。


「メディチ・エフェクト」という言葉があります。

時は中世ヨーロッパ。イタリア・フィレンツェの富豪メディチ家のもとには、様々な分野の文化人、芸術家、経済人など多種多様な人々が集まり、互いに学び合い交流をしていました。

そこでは、異なる文化、領域、学問がぶつかり合い、融合し、その結果、新しく画期的なアイディアがいくつも生み出され、後に世に言うルネッサンスが開花したのです。

『メディチ・インパクト』の著者フランス・ヨハンソンは、「異なる文化・分野が出会う場、つまりは『交差点』こそが、メディチ・エフェクトが起こる最適な場であった」と著書の中で説きました。


この「交差点」、現代では次のような環境で創られ、イノベーションをもたらしています。

たとえば、今日、世界中で遺伝子に関する研究が盛んに行われていますが、その中の学問分野の1つが「バイオインフォマティクス」です。

この学問では、遺伝子予測や遺伝子配列などを研究対象としています。この学問の背景には、応用数学、統計学、応用物理学、コンピューターサイエンス、計算機科学などがあり、携わる研究者の方々が、多くの異なる分野の「交差点」を創り出したことから生まれた学問領域といってもいいでしょう。

また、私が以前お会いした、ある自動車メーカーの製品開発の部長様は、イノベーションについて情報交換をさせていただいたとき、自身の取り組みとして、次のようなことを教えてくださいました。

「あえて、私たちの世界や業界と違う人たちと話すことをよくします。たとえば、アパレルメーカーの方やハウスメーカーの方とか。いろいろな文化や背景をもった方々と出会うことで、インスパイアされるものがあるんです。ですから、会社でも、多くの部署とコミュニケーションをするような『場』を意識的にデザインしています」

実際、「交差点」での交流を通じて閃いたアイディアが、製品づくりに活かされることもたびたびあるそうです。

しかし、「場」が生まれるだけで、アイディアが閃くわけではありません。

そこで、より意味あるイノベーションにつなげていくための大切なポイントが「関連づける力」です。

この部長様の場合は、「この車と、今流行の洋服と、売れている住まいとの共通点は何だろう?」とスタッフに問いかけてみたり、会議で専門紙以外の雑誌を数冊持ち寄り、無造作にページをめくってみたり、と今の自分たちの抱えている課題と結びつかないか、ゲーム感覚で取り組んでいるそうです。

こうした一見無関係なものと今ある課題とを「関連づける」ことは、新たなインスピレーションを生み出すきっかけとなります。

実際、この「関連づける力」は、ハーバード大学の調査において、「イノベーター」と「そうでない人」のポイントとしてあがってきた特性の1つでもあります。調査結果によると、「経験や知識が豊富になればなるほど、脳の関連づける能力が高くなり、新しいものを見たときに、今までにない関係に気づく。その一部が、斬新なアイディアとなる」そうです。

スティーブ・ジョブズ氏(アップル社元CEO)も生前、「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力だ」と言っていました。

とはいえ、「関連づける力」を発揮させるには、やはり、まずリーダーが「交差点」を生み出すことが前提となります。

知を集積させる機会を意図的に創り出し、それを通じて、知を課題と関連づけることによってはじめて、時代が求めるイノベーションは生み出せるのではないでしょうか。

あなたは、リーダーとして、自身と自組織にどのような「交差点」を創りますか。

【参考文献】
1. "Global Leadership Forecast 2011"
  Development Dimensions International, Inc., MMXI, All rights Reserved.


2.『メディチ・インパクト』フランス・ヨハンソン著
 (ランダムハウス講談社刊)

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