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コーチのコア・コンピテンシー
コピーしました コピーに失敗しました企業のグローバル化に伴い、弊社も海外拠点が増え、外国籍のコーチが増えています。また、海外で活動しているコーチからの「コーチ・エィと一緒に仕事をしたい」というオファーも増えてきました。
このような状況になると、コーチとしての能力を測る「グローバルスタンダード」が重要な意味を持ってきます。最近では、欧米ではもとより、アジアでも、企業がコーチを雇う際に「国際コーチング連盟のコーチ資格を持っていること」が問われます。
実際、「コーチ」として活動していながら、コーチングではなく、コンサルティングやカウンセリングのようなアプローチをする"自称"コーチも少なくありません。コーチングの専門的なトレーニングを積んでいない人が「コーチ」と称して活動していることもあります。
従って、コーチとしてのコンピテンシーを備えた資格取得者であるかどうかは、コーチングを導入する際に確認しておくべき重要なポイントとなります。
コーチのコア・コンピテンシー
国際コーチング連盟(本拠地:アメリカ)は、「相手の自発性を引き出し、パフォーマンスを上げる能力が高い人」のコンピテンシーを具体化し、それを「コーチのコア・コンピテンシー」として標準化しました。このコア・コンピテンシーは、「認定コーチ資格取得試験」の審査基準にもなっています。
欧米では、この資格を保持していることがプロのコーチとして仕事をする条件になっているところも多々あります。
コーチの役割
コーチの役割は、コーチを受ける人の「能力の開発」や「パフォーマンスの向上」が前提であるため、コンピテンシーとして最も求められるのは「相手の自発性を引き出し、パフォーマンスを上げる能力」です。
このコンピテンシーがコーチに備わっていない場合、「会話をすること」自体が目的化してしまい、単に「ポジティブな気分になる会話をした」ということだけで終わってしまう危険性をはらんでいます。
このコア・コンピテンシーは、プロのコーチでなくても、マネージャーやリーダーなど、「相手をコーチする」立場にいる人であれば 誰もが知っておくと有益です。
コーチの「コア・コンピテンシー」の4つの領域
そこで、あらためて、ここにご紹介したいと思います。コーチの「コア・コンピテンシー」は大きく4つの領域に分かれており、それぞれがさらに細分化されています。領域別にご紹介しますので、ご自身のコーチ能力と照らし合わせてご覧ください。
1.ファウンデーション(基盤)を確立する
- コーチの倫理規定とプロとしての基準を満たしている
- コーチングについての同意を取り交わしている
ここでは、「コーチをする人」と「コーチを受ける人」の双方が「二人の間でコーチングを行うこと」に同意していることが 重視されています。
これは、コーチを受ける側の「主体性」に大きく影響します。「自分がコーチされていることを知らなかった」という状態ではコーチングが機能することはありえず、「能力の開発」や「パフォーマンスの向上」は成しえません。
2.関係を築いている
- クライアント(コーチを受ける側)と親密な信頼関係を築いている
- コーチとしてのプレゼンスがある
「関係性」とは、コーチの関心が「相手に向けられているか」という点で測ります。
つまり、「コーチが自分の情報収集のために」会話をしているのか、それとも、「相手のために」会話をしているのかが焦点となります。
相手の学習スタイルやコミュニケーションのスタイルに合った関わり方をしているかが問われます。
この前提があってこそ、クライアントはコーチに全幅の信頼を寄せてコミュニケーションを交わすことができます。
3.効果的なコミュニケーションがある
- アクティブ・リスニングをしている
- 効果的な質問をしている
- 率直なコミュニケーションがある
効果的なコミュニケーションとは、「相手が言語化していること」と「言語化していないこと」も合わせ、情報を相手から引き出し、本人さえも気づいていない新たな視点を与えることを指します。
そのためには、「聞く」、「質問する」などの技術が重要視されます。また、必要に応じて、「フィードバック」や「リクエスト(要望)」といった、相手にインパクトを与えるコミュニケーション能力が求められます。
4.学び、成果を得ることを促している
- 「気づき」を促している
- 行動をデザインしている
- 行動計画とゴールセッティングが明確である
- 進行状況を管理し、責任を明確にしている
この領域では、「相手を確実に前進させるスキルを持っているか」を見ています。単に話を聞いたからといって、相手が前進するための行動を起こさなければ、それは単なる「心地いい会話」にすぎません。
コーチの役割は、相手が今までに行ったことがないことに挑戦したり、次のステップに進むための行動を起こさせたりすることです。
そして、継続的にフォローアップしながら、随時、次のステップアップにむけて成長のプロセスを管理するのがコーチの大事な役割となります。
以上、プロフェッショナルコーチのコア・コンピテンシーをご紹介しましたが、このコンピテンシーは、相手の能力を向上させる立場にいる人なら、誰もが身につけておきたいものです。
ここで注目すべきは、このコンピテンシーのすべてが「相手の自主性に基づいて」デザインされていることです。
すなわち、クライアント本人に自主的に「目標を達成しよう」という意思がなければ、これらを実現することはできません。
その意味では、最初の「二人の間でコーチングを行うことに同意していること」が最も大事な項目であるといえるでしょう。
国際コーチング連盟の資格の3つのレベル
また、国際コーチング連盟の資格には3つのレベルがあり、以下がそれぞれのレベルを示しています。これも自分のレベルを測るカギとなります。
1.初心者レベル(アソシエート認定コーチ)
コーチングスキルを知っており意識的に使うことができる。しかし、その会話は多少恣意的でコーチングの方向性は、コーチがリードしがちである。
2.中級者レベル(プロフェッショナル認定コーチ)
コーチングの会話は自然であり、相手の特徴に応じて個別対応ができる。たとえば、相手の学習スタイルやコミュニケーションのスタイルを用いている。
3.上級者レベル(マスター認定コーチ)
コーチングの会話は、普通の会話とシームレスであり、クライアントに学習が起こる。コーチングが終わっても問いかけが残り、クライアントがひとりになってもコーチングが続いている。
コア・コンピテンシーは、自分のコーチとしての能力を振り返るツールとしても有効です。ぜひ自己診断してみてください。そして、周りの人にも、自分がどのくらいできているかについてフィードバックを受けることをお勧めします。
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【参考】 国際コーチング連盟(ICF)「ICFコアコンピテンシー」
ICFジャパン「ICFコアコンピテンシー」<日本語版>
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