Coach's VIEW

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テクニカルスキルよりインターパーソナルスキル

エグゼクティブがパフォーマンスを十分に発揮しきれない
最大の理由が、「インターパーソナルスキルの欠如である」
ということが、最近、広く認識されてきています。

エグゼクティブという、組織全体に対する責任を担う立場になると、
いくら業界の専門性や技術的なスキルが高くても、
「インターパーソナルスキル(関係性の構築、協調性、影響力など)」が
なければパフォーマンスを最大限に発揮することは難しい、ということです。


ある外資系企業の日本法人社長のAさんは、
3年前に全く違う業界から転職して来ました。

転職当初のAさんは、新しい業界の知識や業界動向などを
必死に勉強したそうです。

本社主導のリストラと、Aさんの不断の努力とリーダーシップによって、
下降傾向だった会社の業績は上向き、順調に推移してきました。

しかし、現状のままでは本社から求められているゴールは
到底達成できるレベルのものではない、と思ったAさんは、
「今こそ、何かを変えなければいけない」と感じ、コーチをつけました。

コーチをつけた当初、Aさんは「業界のことをいっそう勉強すること」
さらに、「戦略と戦術を論理的に構築し、それを社内に徹底すること」が
自分に求められている、と熱っぽく語られていました。

コーチングを始めてすぐに行ったアセスメントの結果は、
Aさんにとってショッキングなものでした。

 ・会社のビジョンが伝わってこない
 ・モチベーションが上がるような関わりがない
 ・責任を十分に取っている感じがしない

など、Aさんには納得のいかない、
受け入れがたい結果が突きつけられました。

しかし、社員の声に真摯に向き合ってみると、
社員が自分の予想以上に会社の将来に不安を感じていることや、
だからこそ、社長が何を考えているかに関心が高いことなど、
社内の実情がはっきりと見えてきました。

Aさんは元々、社員個々人のモチベーションは
各人で責任を持つべきもの、という信念を強くお持ちでした。

その信念を変えたくないと思う一方で、
自分のそうした考え方や態度が、社員とのギャップを
生んでいるのかもしれない、とも考えるに至りました。

さらに、ご自身の考えの伝え方や社員との関わり自体に
なんらかの改善点があると考え、
社員と徹底的に関わってみることを決めました。

社員一人ひとりと個別に話す時間を増やし、
会社への提案や要望を聞くと同時に
社長としてのご自身の考えを直接伝えることを心がけました。

また、仕事に直接関係のないことにも興味をもって聞くようになりました。

コーチをつけ始めて半年、組織内のAさんの影響力は、
確実に増しています。

社員からは、

 ・高い頻度で方向性を確認できるようになった
 ・以前より提案や要望を聞いてもらっている
 ・ビジョンがしっかり伝わるようになった

といった声が上がってくるようになりました。

ご本人は、
「ビジョンは、まだまだ伝え足りていない。組織全体のコミュニケーションの
 量と質ももっと高めていかなければいけませんね」
と、今後のさらなる取り組みに意欲を燃やしています。

Aさんの経営は、数年後の中期ゴール達成にむけて
新しいステージに入っています。


エグゼクティブに求められる要素として
「テクニカルスキル」より「インターパーソナルスキル」が
重要であることを端的に示した調査結果があります。

IED(the Institute of Executive Development)、Alexcelグループが
2007年より毎年実施している、エグゼクティブ・トランジションに関する
最新の調査結果(※)の一部をご紹介します。


エグゼクティブが力を発揮できない主な理由


【社外の人材からエグゼクティブを採用した場合】
・ インターパーソナル/リーダーシップスキル
  (協調性、影響力など)が欠如している            34%
・ 組織内に体系的/構造的な問題がある            18%
・ 組織とエグゼクティブとの間で目標に対する合意がとれない  15%
・ エグゼクティブ開発チームからのサポートが欠如している   10%
・ 組織のエグゼクティブ選任が適切でない            7%
・ 技術的スキル/コンピテンシーが欠如している         7%
・ パーソナルスキル(セルフマネジメント、集中力、意欲など)が
  欠如している                        4%

【社内の人材からエグゼクティブを登用した場合】
・ インターパーソナル/リーダーシップスキル
  (協調性、影響力など)が欠如している            33%
・ 組織のエグゼクティブ選任が適切でない            16%
・ 組織内に体系的/構造的な問題がある             10%
・ エグゼクティブ開発チームからのサポートが欠如している     9%
・ 組織とエグゼクティブとの間で目標に対する合意がとれない   8%
・ 技術的スキル/コンピテンシーが欠如している         8%
・ パーソナルスキル(セルフマネジメント、集中力、意欲など)が
  欠如している                        8%

※"Executive Transitions Study 2010"
 320名を超えるエグゼクティブ、
 大手人材関連プロフェッショナルを対象に実施


およそ3分の1(社外:34%、社内:33%)の組織が、
「インターパーソナル/リーダーシップスキルが最重要課題である」と回答しています。

一方、エグゼクティブの素養として重視される傾向の高い
「技術的スキル/コンピテンシーの欠如」は
10%以下 (社外:7%、社内:8%)と、
他項目と比べて低い結果が出ています。

こうした調査からも、エグゼクティブが力を最大限発揮できない主な理由は、
「関係性の構築」「協調性」「影響力」など、
「インターパーソナル/リーダーシップスキル」の欠如であることが分かります。

「インターパーソナル/リーダーシップスキル」は、
リーダーであれば、既に身につけているべき
基本的なスキルだと考えられがちです。

実際、エグゼクティブ自身が、専門性や技術的スキルを高めることを
重視する傾向があります。

そうして今のポジションや影響力を手に入れてきたのですから、
当然とも言えましょう。

しかし、さらに高いレベルで力を発揮するには、
今のままでのインターパーソナルスキルでは十分ではない、
ということを、うすうす感じていらっしゃるエグゼクティブも
多いのではないでしょうか?

インターパーソナルスキルをどのように身につけるか、
その王道はありません。

それは、まさに一人ひとりのコミュニケーションや
その人の置かれた状況などによって刻々と変化するからです。

これが、インターパーソナルスキルの開発には、
インタラクティブで、個別対応、継続的に行うコーチングが機能する所以です。

そして、それが今日のリーダーシップ開発の重要な部分を占めているのです。

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