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企業はなぜ失敗するのか? ~エグゼクティブ・マインドセット~

企業はなぜ失敗するのか? ~エグゼクティブ・マインドセット~ | Hello, Coaching!
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どんなに技術的に高い専門性をもったマネージャーであっても、昇進してエグゼクティブへと移行(transition)するときには、さらに新しいスキルと知識が求められます。

Millsによると、ロンドン大学のビジネス・スクール(London Business School)が2,000名を対象に実施したサーベイ(2011)では、企業のマネージャーの多くが、以下の領域において卓越(excel)していることが分かりました(※1)。


・専門技術に関するコンピテンシーを証明する
・締切を守る
・問題を分析する
・自分に対する自信を見せる
・情報を集める
・新しいアイディアやイノベーションを奨励する

その一方で、このマネージャーたちには、会社のシニア・ポストへ上がるときに必要とされる次の「質(qualities)」が欠如していることが分かった。

・社員の仕事を定期的にモニターし、査定する
・チームメンバーに、経営ゴールと成功するための基本を説明する
・パフォーマンスの低い社員に対し、効果的に対処する
・戦略的に考え、柔軟性をもたらすために、他の選択肢を見極める
・アイディアや戦略のサポートとなるように、多種多様な手法を活用する(たとえば、影響力、説得力、ネットワーク力を含む)
・他者の意見や感情を理解する


「リーダー」は、偶然生まれるものではありません。また、知識を伝達したからといって生まれるわけでもありません。

有能であるはずのエグゼクティブが、なぜ、会社を失敗させているのか? 根本的な原因は何なのでしょうか?

Sydney Finkelstein 氏は、その著書『Why Smart Executives Fail』の中で、次のように書いています(※2)。


今回のリサーチでは、無視できない結論の一つにたどり着いた。

億単位(ドル)の事業損害の原因が、「エグゼクティブ・マインドセットの欠如」、すなわち、エグゼクティブとしての「認識の欠如・誤り」によるものだ、という結果が出たのだ。

多くのエグゼクティブが会社が直面する機会や問題に対して「どのように考えるか」という根本的なところでエラーを起こしており、その結果として社員に間違った方向性を示してしまっている。

急速に事業を失敗へと向かわせる「破滅的な行動パターン」(destructive patterns of behavior)は、次の4つのものである。

1. 会社の現状認識を狂わせるエグゼクティブのマインドセットの欠陥
2. 誤った現状認識に基づいて取られた思い違いの行(delusional behavior)
3. 重要な情報が上がってくるためのコミュニケーション・システムの崩壊
4. エグゼクティブが、必要に応じて軌道修正するのを阻害するリーダーシップの質の低さ

企業はなぜ、このような行動パターンに陥ってしまうのだろうか?

その原因は、たいていの場合、エグゼクティブの周りに誰ひとりとして、現状に挑戦し(challenge the status quo)、厳しい問いを投げかけて(ask the tough questions)くれる人が存在しなかったことである。

その結果、
・エグゼクティブが社内においてとるべき行動
・エグゼクティブと重要な外部の関係者(顧客や業者など)との関わり
を阻害する「間違った認識に基づいたアティチュードや行動」が組織の中で助長していたためである。


リーダーシップは、「問い」による対話を通した学習者の相互作用によって開発されます。

これらのアプローチには、一般的に、特に欧米では、「エグゼクティブ・コーチング」や、コーチングをベースにしたリーダーシップ開発プランが組み合わされています。

それは、リーダーがコーチングによって「学習の仕方を学習する」ようになる効果のあることが理由の一つとして挙げられます。

企業のエグゼクティブが力を発揮できない理由、それは、「インターパーソナルスキルの欠如」によるところが非常に大きいといえます。

この「インターパーソナルスキル」は、訓練されたコーチから「問い」を投げられ、継続的に対話を続けることで圧倒的に上がります。

Bluepoint 社のエグゼクティブコーチであるGreg Thompson 氏は次のように話しています(※3)。

「今のような時代に成功するリーダーとは、『学習する能力』が際立った人たちです。今日、企業で後継者となるリーダーは、なにも『一番情報を持っている』人たちではありません。後継者となるリーダーとは、最も速いスピードで学習し、開発されることへの熱意がある人たちです」と。

リーダーシップは、「問い」による対話を通した学習者の相互作用によって開発されます。

人は、もっと有能になれるのです。

【参考文献】
(※1)John Mills, "Understanding the Executive Development Challenge",
November 28, 2011, MediaTec Publishing Inc.
(※2)Sydney Finkelstein, "Why Smart Executives Fail",
2003, Portfolio Hardcover
(※3)Ladan Nikravan, "How to Keep High-Potential Employees",
November 16, 2011, MediaTec Publishing Inc.

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