Coach's VIEW

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グルーリーダーはリソースハンター

アメリカのスポーツ界では、
チーム内で選手同士を「つなげる」核の役目を果たし、
勝利に導く選手のことを接着剤(=グルー)になぞらえ、
「グル―ガイ」ということがあるそうです。

「グルーガイ」は、様々な方法で人と人、
あるいは人をリソースや目的と「つなぎ」、
チームを勝利に導いていく存在です。

サッカー日本代表のキャプテンとして活躍する
長谷部誠選手も、「グルーガイ」の一人と言えます。

彼は著書の中で

「なるべく全体を客観的に見回してチームに足りないことを探し、
 チームを整える存在であろうと思った。

 声を出す選手がいなかったら、
 どんどん自分が声を出す。」

と、述べています。(※1)

さて、ビジネスの領域に目を向けると、
今日、リーダーが力をうまく発揮できないのは
「関係性の構築」「協調性」「影響力」など、
「つながり」に関するスキル欠如が主な原因だ、
とエグゼクティブ開発のIED(the Institute of Executive Development)は
指摘しています。(※2)

調査機関のギャラップ社は、
リーダーとメンバーとの「つながり」が
うまくいかないことによるコスト損失は、
アメリカ企業だけでも年間3,600億ドルにものぼる、
と推定しています。(※3)

急激な変化を強いられ、多様性を求められる
今日のビジネス環境下では、
リーダーがメンバーとの「つながり」をつくる労力は
確実に以前よりも高度で複雑なものになっています。

それでは、メンバーと「つながり」、
メンバー同士を「つなげ」ながら
組織の目標を達成するためには、
どのような事を意識すればいいのでしょうか。

コーチング研究所LLPが実施した調査結果から、

「メンバー同士が建設的な意見を出し合える組織をつくる」

あるいは、

「部門間を越えた協力体制を築き、課題解決を図る」

ことのできるリーダーは、

「メンバーの強みや得意分野を引き出し、
 それを伸ばす力を持っている」

という特徴のあることが分かりました。(※4)

つまり、
ビジネスの世界における「グルーリーダー」とは、

まずメンバーのリソースである「強み」に「つながり」、
それを軸に組織に「つながり」をもたらし、
課題解決にも向かわせることのできる人、
と言うことができるのではないでしょうか。

私が以前コーチをしていたある小売業のリーダーは、
まさに「グルーリーダー」でした。

彼は、アルバイト社員も含め、300人もの
大所帯を率いる店長でした。

アルバイト社員の離職率が業界内で問題化する中で、
その店舗は、極めて高い定着率を維持しながら売上げ目標を達成し、
系列店舗の中で、常にトップグループに入っていました。

では、この店長は、どのようなことをしていたのでしょうか。

彼は、店舗に所属する300人のメンバーの顔と名前を
完璧に覚えていました。

そして、時間があれば店舗内を歩き回り、
メンバー一人ひとりに名前を呼びながら声をかけることを
心がけていました。

ある時は「君の今日の自慢は何?」と問いかけます。

「自慢話」をさせながら、その人の
小さな成功体験を引き出していくのです。

また、ある時には、
「さっきすごく嬉しそうな顔をしていたけど、何があったの?」
と問いかけます。

こうした日々の問いかけや観察の中から、
一人ひとりのメンバーの
好きな業務や得意技を見つけ出していたのです。

時には将来の夢まで引き出すこともしていました。

こうした毎日の関わりを通して、
メンバーは自分の夢や強みに興味をもってくれるリーダーに
「つながり」を感じ、その「つながり」は
他のメンバー同士との「つながり」をも生み、
結果、定着率や売上げ向上にもつながっているのでしょう。

このリーダーは、自分自身のことを
「僕は、リソースハンターなんです」
と表現していました。

メンバー自身でさえ、自分で気づいていない
強みや能力にいち早く気づき、引き出す。

これを自分の大事な役割として
自覚し、実行していたのです。

さて、組織に「つながり」を構築し、目標達成に向うために、
今日、あなたはどのメンバーの、どのような強みを引き出していきますか?

【参考文献】

1.『心を整える』
  長谷部誠著 (幻冬舎刊)

2."Executive Transitions Study 2010"
  Alxcel、IED (the Institute of Executive Development)

3.『幸福優位の7つの法則』
 ショーン・エイカー著、高橋由紀子訳 (徳間書店刊)

4."「上司の関わり」と「組織の状態」の関係性についての調査" (コーチング研究所LLP,2011)

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