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他の選択肢を捨て切る

他の選択肢を捨て切る | Hello, Coaching!
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あなたの仕事に対するモチベーションは何ですか?

モチベーションは、

「モチベーションが高い」「モチベーションが低い」というように

「意欲」の意味で使われることが多いのですが、

「動機」、すなわち「その行動を決定している原因」が本来の意味です。

ですので、先の質問は、

・あなたはどのような動機でその仕事をしているのですか?

・あなたがその仕事をする目的は何ですか?

・あなたはその仕事を通して何を成し遂げようとしているのですか?

と言い換えることが出来ます。

ピーター・ドラッカーの著書の中に、3人の石切り工の昔話があります。

3人の石切り工が、「何をしているのか」と尋ねられ、

それぞれ次のように答えました。

最初の男は、「これで暮らしを立てているのさ」と。

2番目の男は、「上手な石切りの仕事をしているのさ」と。

3番目の男は、「大寺院をつくっているのさ」と。

それぞれの発言は、

3人の仕事に対するモチベーション(動機)だと言えます。

この3人のように、同じ仕事をしていても、

人によってモチベーションは異なります。

私はこの石切り工の3人を、最初の男から順に、

「モチベーションの3つのレベル」として考えています。

レベル1: モチベーションが仕事にはない

      (処遇が良い、家から近い、など)

レベル2: モチベーションが仕事そのものである

     (自分の能力を生かせる、スキルアップしたい、など)

レベル3: モチベーションがその仕事の先に実現したいものである

     (この仕事を通じて○○を実現したい、など)

レベル1の人は、とても困難な仕事を前にすると、

「ここまでやっても別に給与が増えるわけではないし・・・」

と、途中で諦める可能性が他のレベルに比べて高くなるでしょう。

また、大きな組織の中では、

自分のために仕事をする傾向が強いレベル2の人よりも、

同じ目的を共有しやすいレベル3の人についていきたい、と

感じる人の方が多いはずです。

モチベーションそのものに善し悪しはないのですが、

その人のモチベーションが何であるか、

どのレベルに属しているのかによって、

その人の仕事の仕方や成果だけでなく、

その人が属する組織にも大きく影響するのではないでしょうか。

私はコーチとして、これまで数多くの人の

「モチベーション」に関わってきました。

その中で言えるのは、

「モチベーションは、仕事に対する捉え方次第で、

 いつでもそのレベルを変化させることが出来る」

ということです。

ところで、モチベーションのレベルが「1」にも

満たない人が、意外と多くいらっしゃいます。

「今の仕事は、自分がやりたいと思ってやっているんじゃないんです」

「自分から希望もしていないのに、この仕事に異動になったんだよ」

このような、今の仕事を「自分の仕事として選択していない」状態は

レベル0(ゼロ)と言えるでしょう。

レベル0の状態にある人が、今の仕事に対する

自分のモチベーションについて考え、変化を起こすには、

何よりも先に、「今の仕事は自分の仕事である」という

心の中での「選択」をしなくてはなりません。

コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授は、

「選択」について長年研究してきました。

わかりやすい事例がジャムの販売実験です。

教授は、スーパーマーケットで2つのパターンの

ジャムの試食コーナーをつくりました。

1つは、「6種類のジャムを試食できる」コーナー。

もう1つは、「24種類ものジャムを試食できる」コーナーです。

時間帯ごとにこの2つのパターンの

試食コーナーを入れ替えて実験をしました。

その結果、試食ジャムが24種類のときは

買い物客の60%が立ち寄ったのに対し、

6種類になると、買い物客の40%しか立ち寄りませんでした。

ところが、それぞれの試食者の

ジャムの購入率を調べると、

6種類だった場合の購入者が30%だったのに対し、

24種類だった場合の購入者は、

わずか3%だったのです。

このような研究を重ねた結果、同教授は、

「人は、選択肢が多いことを望ましいと感じているが、

 選択肢が多すぎると、"決める"ことを後回しにしてしまう傾向がある」

と述べています。

年明けに、Fさんという社長に初めてお会いしました。

昨年、大企業の社長として若くして抜擢された方です。

Fさんがこんなことを話してくれました。

「この会社に入社してから長期間、

 体が弱かったせいで会社を休みがちでした。

 本当は営業がやりたかったのだけど、

 あまり外に出られない上に、

 長時間働くことも医者に止められていました。

 だから、『この仕事はやりたくない』とか

 『こういう仕事をやりたい』なんてことを言える立場ではなかったのです。

 ただ、今から思うと、仕事の選択肢がなかったことが

 僕にとっては良かったのだと思います。

 『自分にはこの仕事しかないんだ』と

 決めるしかなかったのですから」

モチベーションがレベル0にあるときは、

心の中で他の選択肢をあえて捨て切り、

「自分にはこの仕事しかない」という

気持ちになってみる価値は多いにあると思います。

モチベーションのレベルは、

レベル1から3へと順に進むわけではありません。

自分の仕事をもう一度心から「選択」してみると、

これまで全く気づかなかった、

レベル3のモチベーションを持っている自分に出会うかもしれません。

【参考文献】

『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

 ダン・アリエリー (著)、熊谷 淳子 (翻訳)

『選択の科学』

 シーナ・アイエンガー (著)、櫻井 祐子 (翻訳)

『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』

 P・F. ドラッカー (著)、上田 惇生 (著)

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