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仕事にも、ゲーミフィケーションを
2012年02月01日
ゲームには「魅力」があります。人をのめり込ませる「力」があります。没頭して、あっという間に時間が過ぎてしまう感覚。それが、ゲームがもっている魅力です。
私の息子もご多分にもれず、ゲームにはまっています。宿題を後回しにすることはあっても、ゲームを後回しにすることはありません。
ゲームに没頭してしまうということは、とどのつまり、リアルの世界よりも、ゲームの世界の方により魅力的な要素があるからでしょう。
では、どうしたら、勉強にも仕事にも、もっともっと夢中になったり、没頭することができるのでしょうか。
このゲームの「魅力的な要素」を勉強や仕事に活用するヒントが、先日のNHKのクローズアップ現代「ゲームが未来を救う!? ~広がるゲーミフィケーション~」で紹介されていました。
番組によると、人々を楽しませ、夢中にさせるゲームの手法やノウハウを"ゲーム以外"の分野に活用していこうという動き「ゲーミフィケーション」が、急速に拡がっているとのことでした。
・若者の車離れにあえぐ自動車業界では、運転技術を採点し、ドライバー同士で競わせる機能を搭載した新型車が登場
・米国では、タンパク質の構造解析をゲーム化することで、科学者が10年以上解けなかったエイズ治療のカギを握る酵素の構造が3週間で解明
また、企業の仕事の場面での事例も紹介されていました。
笑顔が素敵なメンバーには「スマイルバッジ」、情熱的なメンバーには「熱血バッジ」、チームワークを促進した人には「絆バッジ」と、社員が、お互いにひと月に20個を贈ることができます。
仕事の成果だけでなく、その成果を生み出すための努力や行動、貢献などをお互いに認め合い、励まし合う仕組みにより、互いのモチベーションを高めるというもの。
こうした事例がメディアで大きく取り上げられることは、本当に嬉しいことです。
というのも、15年も前から「職場活性化や変革プロジェクトは、"ゲーム感覚"で取り組むとうまくいく」ということを成功事例とともにお話しても、「それは特殊な事例でしょう」とか、「そもそも、ゲーム感覚で仕事をするだなんて、おふざけすぎる」と、ゲームの要素を仕事に持ち込むことに、違和感を覚える企業担当者の方も多かったのです。
しかし、こうしたゲーム感覚を「現実から逃避するもの」とネガティブな側面から片付けてしまうのではなく、ゲームの持つ「やる気を引き出すテクノロジー」を「リアルな世界にうまく組み込み、一人ひとりのやる気を引き出すものにしていく」というポジティブなものとして興味、関心がシフトしはじめたことには感動すら覚えます。
いまや、生まれた時からゲームに囲まれて育った世代がオフィスに占める割合が増えています。お金を貯めるだけや、出世をするためだけではやる気にならない......という世代です。そもそも、そのことにリアリティがない世代と言えます。このような流れは、より一層加速していくのだと感じます。
さて、これから仕事をゲーミフィケーションしていこうと思われた方も多いと思いますので、その際の留意事項を下記に挙げていきます。
【目標や課題が明確である】
まず、「ゲーミフィケーション」されたことを実行する目的が、参加者(職場メンバーやプロジェクトメンバー)にしっかりと共有されていることが必要です。特に、最初からのメンバーよりも、途中から転入してくる異動者には、意図や背景を説明せずにゲームに参加させると違和感を感じたり、ゲームに心から参加できずにいたりと「冷めている」存在になってしまいます。
【ルールは皆で決める】
目標や課題を成し遂げるためには、どんな行動や成果が評価されるのかが明確である必要があります。いわゆるゲームのルールなのですが、そのルール自体が誰かから押し付けられるのではなく、参加者自身が作る方が好ましいでしょう。そうすることによって、他人事ではなく、自らが参画している、という気持ちが高まります。
【「フィードバックループ」が確立されている】
ゲームで一番重要なのは、今自分がとった行動が「効果があったのか、なかったのか」について瞬間的に分かるというところ。つまり、フィードバックを即座に受けることで、学習と成長が加速します。人は、実に自己成長に貪欲な生き物ですからその仕掛けがないと、頓挫していきます。
【人と人との交流がある】
参加者同士でお互いが励まし合う場があったり、時には、参加者同士の健全で適度な競争の仕掛けがあったりすると、さらにゲームは加速します。孤立させるのではなく、かといって過度な刺激をしすぎない。勝負にならないほどの圧倒的優秀者を目の前にすると、意欲が萎えることもありますから。
【常に、バージョンアップを心がける】
「仕掛けて終わり」ではなく、ときにルールを「修正し、バージョンアップし続けていく」ことが重要です。なぜなら、どんなゲームでもあっても、必ず「飽き」がきます。
脳は、同質の刺激がつづくと飽きてしまいます。ですから、同じルールで楽しめるのは数か月で、その後は、何かしらの工夫をしないと続かないことが多いのです。
こうした動きが広まり、根付いてくると、今までの仕事への印象や取組み、態度ががらりと変わりはじめることでしょう。
より多くの職場で、多くの企業で、ゲームの世界で没頭するかのごとく、リアルな仕事で没頭し、心の底から愉しんでいる姿が広がっていくのではないでしょうか。
さあ、あなたは、どの仕事からゲーミフィケーションしてみますか?
【参考文献】
NHK クローズアップ現代 2012年1月25日放映
「ゲームが未来を救う!? ~広がるゲーミフィケーション~」
『ゲーミフィケーション ~<ゲーム>がビジネスを変える~』
井上明人著 (NHK出版)
『変革を定着させる行動原理のマネジメント』
中島克也著 (ダイヤモンド社)
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