Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
会社の目的
2012年03月14日
伸びている会社の経営層の考え方と、そうでない会社の経営層の考え方には、いくつかの点で大きな違いが存在しています。
人材開発の分野でいえば、多くの企業は研修などをしているわけですが、それを「expense(経費)」や「cost(コスト)」と考える会社では、景気が悪くなるとコストダウンのために人材開発はカットの対象となります。
一方で、伸びている会社の特徴は、人材開発を「投資(investment)」と捉え、景気の左右に惑わされることなく、「常に投資していくもの」と考える傾向が高いように思います。
ある欧米企業の経営者は、CEOとしての自分の時間の70%を「育成」に充てていました。それは、「会社を強くしていく」ために必要な投資だと考えていたからです。
周りから、「育成のためにそんなに時間や労力をかけても、社員に辞められてしまう可能性もある。無駄ではないか」と言われても、「それでも、人材開発に投資した方が、長期的には会社にもたらされるリターンが大きい」と、経営者としての確固たる考え方を持っていました。
「コスト感覚」と言うと、日本ではすぐに「無駄を止めましょう」「節約しましょう」という風潮があります。しかし、お金が使われなければ経済は回らない構造になっていますから、「縮小」や「削減」ばかりではなく、企業には「成長戦略」が必要になります。
企業の「成長戦略」を考える際には、コーチングの手法やスキームについての議論ももちろん重要なのですが、「誰を対象にコーチするのか」という、コーチングの的を絞ることがもっとも重要になってきます。
私たちコーチ・エィは、「金メダルを獲りたい」と考えている企業およびリーダーを対象にコーチしたいと考えてきました。
あなたの会社が目指していることは何ですか?
あなたの会社の優先順位は何ですか?
と企業に聞いたときに、「利益よりも顧客満足を重視しています」と経営層が答える企業は、やはり早晩上手くいかなくなっているように思います。
なぜなら、企業とは「収益を上げるための集団」ですから、トップの優先順位が「収益を上げていくこと」でなかったり、会社が収益構造の中に入っていなかったりすると、最終的には、その会社は社員を路頭に迷わせることになるからです。
昨年2011年にESI International社が、企業で「経営分析」に携わる1,600名以上に対して実施したリサーチ(※)に興味深い結果がありました。
「会社の成功に最も重要なプロジェクトの成功の基準(尺度)」として複数項目の中から3つを選択させたところ、トップ3に挙がったのは以下の3つでした。
1位 顧客満足 (81%)
2位 期限内に終わること (62%)
3位 予算内に収まること (52%)
そして、「会社の収益に対するインパクト」を選択したのは、22%にすぎなかったのです。
リサーチを実施したESI International社のマーケティングおよび戦略部門バイス・プレジデントであるMark Bashrum氏は、この結果に「非常に驚いた」と話しています。
そして、「そもそも企業の『経営分析』に携わる人たちの任務は、経営側の要求に応えること。つまり、彼らは、会社の経営目標に常に注力し、会社の経営目標が何なのか、それらがどのように、社内のそれぞれのプロジェクトに翻訳されていったのかを理解している必要がある」とコメントしています。
企業の中に存在する様々なプロジェクトが、「大局(the Big Picture)」を見ないまま進行していることはよくありますが、それは会社にとって危険なことです。
「会社が収益構造に入っているか」ということが、結局は、「顧客から支持されているか」「顧客は満足しているか」ということに繋がるのだと思います。
【参考資料】
CLOs: Help Business Analysis and Outcomes Connect
Copyright 2012 MediaTec Publishing Inc.
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