Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


メッセージ浸透に向けたコミュニケーション戦略

業績を上げるために、ビジョンや戦略を組織に浸透させたい。
全社員が、それらを理解し意識し、行動してほしい。

そう考えるリーダーは多いと思いますが、
その実現は容易ではありません。

しかし、幾名ものリーダーへのコーチングの経験から、
ビジョンや戦略を組織に浸透させるために有効な
「リーダーの行動パターン」というものがあるようにも思います。

下記は、私がエグゼクティブ・コーチングのクライアントの方に
メッセージ浸透のためにしていることをお聞きした内容です。
いずれも、組織内でのメッセージ浸透に長けた方たちです。

「自分がどうしたいのかを、とにかく何度も言うことです。
 経営会議、全社会議、新聞、雑誌、ブログ、
 使えるものは、全部使います。
 社内にも、社外にも、同じことを、何度も言います。
 部下が思い通り動いて、業績が上がれば、
 『私の伝えたビジョンが伝わった』ということです」 (IT会社 CEO)

「やりたいことを伝えて、断らせないことでしょう。
 それには、言い続けるだけのパワーが必要です。
 この人が言ったことはやらないといけないな、と思わせるような。
 しかし、人はすぐに忘れます。だから、しつこく言うんです。
 僕の上司(社長)も、とにかくしつこい。
 顔を見るたびに『あれどうなった?』と聞く。
 そうなると、人ってやりますよね、さすがに」
 (ヘルスケア会社 事業部長)

コーチング研究所(※1)が、約3,000人のビジネスパーソンに
実施したリサーチによると、
部下がリーダーに求めるコミュニケーションとして
最上位に挙げる項目は、
「質」ではなく、むしろ「量」に関するものであることが分かりました。

このリサーチでは、
「リーダーに対して、更に必要だと思うコミュニケーションを選択して下さい」
という質問に対し、上位2項目に入ったのは、次の項目でした。

 ・目標達成のために継続的に関わること 39.9%
 ・フィードバックをすること 33.8%

「相手の話を聞く」、「挨拶したり、感謝を伝える」という
コミュニケーションの「質」に関する項目の順位は、この後に続きます。

また、6社13名のプロジェクトマネージャーの
コミュニケーションパターンを調査した
ハーバードビジネススクール、ノースウェスタン大学の
研究結果(※2)では、

「同じことを何度も複数回にわたって依頼する」
「意図的に、あり余るほどの量のコミュニケーションを取る」

といった行動をとるリーダーたちは、
そうでないリーダーたちと比較して、
「より早く、より円滑に、プロジェクトを進め完了している」
という傾向があることが指摘されています。

さらにこの調査では、
チームメンバーに「役職」という形で権限を持つリーダーと
そうではないリーダーのコミュニケーションの差についても
興味深い指摘をしています。

・メンバーとの「大量のコミュニケーション」の活用は、
 直接の権限を持たないリーダーで21%であるのに対し、
 直接の権限を持つリーダーで12%にとどまった。

・チャットや電話などの「即時性のコミュニケーション」と
 メールのような「遅発性のコミュニケーション」を組み合わせた
 活用については、直接の権限を持たないリーダーが54%であるのに対し、
 直接の権限を持つリーダーは21%にとどまった。

・権限のあるリーダー達もメールを使いはするが、
 彼らのフォローアップには、「緊急性」や「説得」といった
 様子は見えなかった。
 一方、権限を持たないリーダーの場合は、
 うまくいくことを前提にしておらず、
 チームメンバーにプロアクティブに
 何度も繰り返し伝えるコミュニケーションを取っていた。

これらの結果からは、
権限に頼ることなく伝達量を確保し、熱心に伝え続ける態度こそが、
物事を伝え、浸透させる上で重要だと言えそうです。

最後に、メッセージ浸透のために意識していることについて語った、
流通企業で3,000人の社員を束ねるCEOの方の言葉をご紹介します。

「とにかく、コミュニケーションすることですよ。

 社員を一気に変えるのは難しいし、
 私の言うことに対して、色々な人が、色々な立場から批評をする。
 むしろ顧客や社外パートナーの方が、
 社内の人よりも私の言うことを聞いてくれているかもしれない。

 だから、役員・事業部長全員とは、
 月に1度は面談をすることに決めている。

 地域を統括するマネージャーとは、
 現地に行った時に集めて話をすることにしている。

 一般社員の希望者とは、ランチを一緒に取って話をするようにしている。

 伝えたいなら、まずは、接点を多く持つことです。

 一度でも至近距離で話すと、
 単に社長という立場の人の言葉としてではなく、
 ○○さんの言葉、として伝わるようになる。

 そうやって社員の心に届く。それが噂になる。
 こうして浸透していくのでしょう」

この言葉には、
ビジョンや戦略を組織に浸透させたいと思ったときのヒントの数々が
詰め込まれているのではないでしょうか。

【参考資料】

※1
コーチング研究所LLP (Coaching Research Institute)
分析対象データは本人486人に対する周囲2,922人の回答データ
データ集計対象期間は2012年1月5日~2012年3月27日

※2
It's Not Nagging - Why Persistent, Redundant Communication Works Harvard Business School
Copyright 2010 President and Fellows of Harvard College

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