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リーダーシップの現状を棚卸する

リーダーシップの現状を棚卸する | Hello, Coaching!
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香港にオフィスを構えてそろそろ5ヶ月が経とうとしています。

香港の日系企業にコーチングをお勧めしていると、時々、「コーチングは役に立ちそうだが、どう使えばよいかをもう少し考えたい」というお話しを頂くことがあります。

そのような場合は、コーチングのプロセスの一つである「リサーチ」をお勧めしています。

コーチ・エィでは、コーチングを「クライアントが目標を達成するために現状を棚卸し、目標達成のために必要な知識やスキル、ツールを備えさせるプロセス」と定義しています。

リサーチによって、このプロセスの最初の「現状の棚卸」をしてみる、ということです。

では、リサーチでは、何を棚卸するのか。

それは、「組織の中でリーダーシップがどのように発揮されているのか」に関する現状についてです。それは、「組織の中で何が起こっているのか」を知ることにつながります。

こうしたリサーチをこちらの組織のトップの方にお勧めすると、「確かに、ナショナルスタッフがどんなことを考えて仕事をしているのか、あまりわかっているわけではないなあ」ですとか、「彼らのことをわかっているつもりではいますが、もしかしたら、まったく勘違いしている可能性も否定できませんね」などとおっしゃいます。

リーダーシップやチームビルディングに関するソリューションを提供しているDiscovery Learning Inc.のCEO、クリス・マッスルホワイト氏は、組織の中でのリーダーのあり方について次のように語っています。(※)

「Organizations benefit more from leaders who take responsibility for what they don't know than from leaders who pretend to know it all.

(すべてを知っている印象を与えるリーダーよりも、知らないことについて責任を持つリーダーの方が組織に貢献する)」

さらに興味深いのは、
「When you acknowledge what you have yet to learn, you're modeling that in your organization it's okay to admit you don't have all the answers, to make mistakes andmost importantly, to ask for help.

(リーダー自身がまだまだ学ぶべきことがあるということを認めることは、社員たちにそうした姿勢がモデルとなり、彼らに学ぶ機会を提供し、互いに協力する土壌を作る)」
とも言っていることです。

かつて、私のクライアントで組織のトップであるAさんと、リーダーシップに関する360度フィードバックの結果レポートについて、セッションを行ったときのことです。

Aさんは、もともと部下の方たちのリーダーシップについてリサーチしたかったのですが、「まずは、上に立つ自分が周りの人たちからのフィードバックを受けねば」と、先頭を切ってフィードバックを受けたのでした。

その結果は、ご本人にとって想像以上にショッキングなものでした。

それをご覧になられたAさんは、ご自身がリーダーとして十分な信頼を得ていない、リーダーとして認められていない、と感じると同時に、自分がどんな思いでこの会社を経営しているのかが、社員に全く理解されていないことに強い憤りも感じていました。

一方で、これだけストレートにフィードバックしてくれる社員たちは、自分に何らかの期待をしてくれているのだろう、と思い直し、この散々なアセスメントの結果を社員に開示することにしました。

さらに、ご自身がそれまでどんな思いで会社を経営してきたか、また、社員一人ひとりのことをどう思っているのか、今回のこの結果を受けて、今後どうしていきたいのか、などについて、社員に伝えたのでした。

その後、部下の方々とは、かつてない協力関係が生まれたそうです。

Aさんについて多少批判的だった部下も、Aさんがこんなに自分のことを考えてくれていたのか、と感動し、今では、思ったことは建設的な要望や提案の形で伝えるようになりました。

リーダーシップの現状を棚卸するこうしたリサーチは、組織が変化するきっかけをもたらします。

Aさんが、
「そもそも、あのフィードバックがなかったら、と思うと、ぞっとします。組織を率いる私自身が、周りの人たちからのフィードバックを受け入れなかったら、部下が思うように動いてくれるわけがありませんね」とおっしゃっていたのは、とても印象的でした。

ここ、香港で私がお付き合いさせていただいている日系企業の中には、「まず現状を棚卸する」ところから、始めている企業があります。

それは、まぎれもなく、強い組織を作っていくための第一歩なのです。

【参考資料】
※Chris Musselwhite,"Self Awareness and the Effective Leader",October 1, 2007

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