Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


リーダーは『物語』を語り『物語』を生きる

リーダーは『物語』を語り『物語』を生きる
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

「世界を変える」という「物語」を持っていたスティーブ・ジョブズにとっては、仕事も製品も、そして製品を作り出すプロセスさえも、「世界を変える」という「物語」に集約されていました。


スティーブ・ジョブズは、自分が作り出した
その「物語」を生きたのだと思います。
そして、アップルの社員もそのシンプルでゆるぎない「物語」とその姿勢に、大きな影響を受けていたのではないでしょうか。

「物語」を持ち、その「物語」をどう生きるのか

組織のリーダーがどんな「物語」を持ち、その「物語」をどう生きていくのかは、組織の可能性に思いのほか重要な影響を与えていきます。

現在は、グローバル化に伴う事業拡大や生き残り戦略の一環としてのM&Aが増加しています。

多くのグローバルリーダーが、一生のキャリアの中で、PMI(Post Merger Integration: M&A後の統合プロセスとマネジメント)によって生じる難題に向き合う可能性が高まっています。

一方で、数々の実証研究によれば、2件につき1件のPMIが望ましい結果を得られずに終わっているといわれています。(※1)

また、マッキンゼー社の2006年四半期レポートでは、「企業統合においては、リーダーには「やりすぎな位」のコミュニケーションが必要であるのにそれが失敗に終わっている、」としています。

そして、主な理由として、「事前」コミュニケーションの欠如、つまり包括的、長期的な意味で、なぜ統合が必要なのかを説明するシンプルかつゆるぎのない会社としての「物語」が伝えられていないことを指摘しています。 (※2)

そもそも、合併により、それに関わる社員は大きな変化を強いられます。

人の脳は、大きな変化が目の前に生じると「脅威」と感じ、バリアをはります。
その結果、脳の創造的活動は低下し、合併することに対する抵抗感を生み出すことが多々あります。(※3)

実際、合併企業の社員が「親同士(経営層)は良い結婚だと思っているが、 現場の自分達にとって、この合併に、どんな意味があるのか よくわからない」と不安気に発言される場面に出くわすことがあります。

PMIに関わる組織のリーダーが、最初に、どれだけ社員にわかりやすい言葉で魅力的に「組織の物語」を語るかは、PMIの成功の大きな要素となるのではないでしょうか。

「私たちは何を世界に提供し、何故いま、合併が必要なのか」
「私たちはどこからきて、どこに行こうとしてるのか」
「合併によって我々は世界にどんな影響を与えていけるのか」

会社の存在意義や魅力的な未来をイメージできる「物語」があれば、脳は「脅威」へのバリアを低下させる

合併にまつわる大きな変化が「脅威」であっても、
会社の存在意義や魅力的な未来をイメージできる「物語」があれば、
脳は「脅威」へのバリアを低下させていきます。


私がエグゼクティブ・コーチングをしていたあるメーカーの役員は、合併により業界順位が躍進することの他に、お互いの会社の強みを生かして、画期的な新製品が開発される可能性が格段に高まることや、その製品は社会に大きな夢を与え、時代にどんな影響を与えていくのか、また、そのプロセスで社員や会社がどんな経験や成長を遂げていくのかなど、合併にまつわる「会社の物語」を事あるごとに伝えました。

それを聴いた社員たちは、徐々に合併という現実を前向きにとらえるようになり、それぞれの現場で自分達に何ができるのかについて考え、自主的に勉強会が立ち上がっていきました。

また、リーダーには、「組織の物語」を語ると同時に、メンバーの一人ひとりが「個人の物語」をつくるための関わりも大切になってきます。

現場のメンバーにとって、合併は「個人の物語」に大きな修正を求められることを意味します。

「私は一体どうなってしまうんだろうか?」
「今後も給与や処遇は保障されるのか?」
「私は新しい環境になじめるだろうか?」

といった問いかけが頭を占めていきます。

ある会社では、合併の発表後、役員と社員が20名ほどのスモールグループをつくり、合併することの意味・意義についての「組織の物語」を役員が語りました。

そして同時に、「なぜ、その会社に入社したのか」から始まり、自分がその会社や仕事について思っていること、そして、今後、自分はどういうキャリアを歩みたいか、会社にどんな貢献をしたいかという「物語」を役員と社員が一人ずつお互いに語り合うことで、新たな「個人の物語」を描いていきました。

役員が伝える大きな「組織の物語」の上に個々人が描く「個人の物語」が重なり、さらに新たな「物語」を作り出していったのです。

リーダー自身が語る「個人の物語」が魅力的で、かつそのリーダーが魅力的な「個人の物語」を生きる存在であればあるほど、メンバーの脳を刺激し、プロジェクトが終了する頃には、参加していた社員同士の間には、強い連帯感が生まれていました。

「物語づくり」はリーダーにとって、メンバーの意識や行動を変えていく強力な関わりと言えます。

リーダーは組織の「物語」を伝える存在です。そして、その「物語」をまさに生きることで、組織の可能性を開いていく存在になるのではないでしょうか。

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

【参考文献】
※1 Johannes Gerds and Gerhard Schewe, "Post Merger Integration, Deloitte Review", 2010, Deloitte Review

※2 David G. Fubini, Colin Price, and Maurizio Zollo, "The Elusive art of postmerger leadership", 2006, Mckinsey & Company,
※3 『脳が教える!1つの習慣』 ロバート・マウラー (著)、本田 直之 (監修)、中西 真雄美 (翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

M&A/企業買収/企業統合 組織開発

組織へのコーチング導入や組織リサーチ、グローバル人材の開発についてなど、お気軽にご相談ください。

メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

関連記事